第21話 それでいい
こくん、エアラリスのノドが鳴った。
「せーの!」
「「――!」」
ヴォワとエアラリス、二人が目をみはる。
なぜか?
見えないからだ。ハイ=ルミナの腕の動きが。
(これは――)
どう考えても常人のそれではない腕の動き。超人の放つ居合いは抜刀と納刀の瞬間が見えないと言うがそれに近い。速く、それでいて繊細。
(色が複数混じっている。多重人格の腕力が重なっているのか)
これは中々に。
(おもしろいね)
ヴォワの唇が楽し気に曲がった。
削り取られた氷塊のカケラが床に落ち、その間もハイ=ルミナの手は動き続け――わずか五分弱。
「はい、出来た」
ふぅ、額から頬へと流れる汗を腕でぬぐう。腕力の合算、それには相当の体力を使うらしい。
「これは……」
「……すごいですね」
彫られて現れたのは、アンドロメダの女性像。髪が長くて、目は優しく閉じられていて、鎖に繋がれしばられている。
「技術にも驚いたが、なんと清らかな氷像だろう」
「ふふふ、ありがとう」
なんとも嬉しそうに微笑むハイ=ルミナ。そんな表情は初めて見せた。
「溶けちゃうんですよねぇ、もったいないです」
「それでいいのよ」
「そうだね、それでいい」
「え? あれ? なんかお二人通じ合ってます? わたしも混ぜて下さいな!」
氷像は今も溶け始めていて、見事な姿を失いつつある。
が、これはこれでいいのだ。二人のために彫られた氷像は二人の目に焼き付き姿を消す。
これでいい。




