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花嫁は王冠を抱いて ~ヴォワ=デートによるカラフルデイズ~  作者: 紙木 一覇


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第20話 んじゃ、やるよ

「これらの子にはホコリがたまっていない」

「あ」


 言われてみたら、確かに。


「そう、掃除されているのだよ。キミがしらないなら『ハイ=ルミナ』がやっているに違いない」

「……よく見てるね」

「性分でね」

「ヴォワさまのお眼目はその辺の人さまとは違うのです」

「「なぜにキミ(あんた)がいばる」」


 ハモッた。エアラリスは一瞬「うらやま!」と思いつつも気を取り直し。


「主の功績は弟子の功績なのです」

「ふつう弟子の功績は師の功績だと思うが」

「両方ですよ」

「そうかい」


 やれやれと笑いを零す、ヴォワ。そんな二人を見ながらハイ=ルミナは静かに口を開く。


「ねぇ」

「ん?」

「『ハイ=ルミナ』の功績はハイたちの功績だと思う? ハイたちの功績は『ハイ=ルミナ』の功績だと思う? 言って。言うの。言いなさい」


 それはどこか懇願するような目と口でつづられた。

 この色は――


(不安、か)

「勿論そうだとも」

「……そっか」

「うふふ、そちらはそちらでただならぬ関係のようで。こちらもこちらで――」

「さあ仕事だ」

「ああん!」


 おふざけに走るエアラリスになれたのか、ハイ=ルミナは特に相手もせず階段に置かれている彫像に手をあてる。


「……大切に、してくれているんだ」


 どこか安堵した空気が流れた。


「……あっと、そうそう。ここで時間潰してもなんだよね。行こうか」


 扉はもうすぐそこだ。

 三人並んで階段を降りきってハイ=ルミナは木造りのドアのノブに手をかけ、回す。

 様々な匂いがした。学校の美術室の匂いに似ていたがそれよりもずっと度が濃い。


「鼻がバカになりそうだ」

「なれれば大丈夫。バカになったとも言うけど」


 まあ後悔はないよ、そう言ってハイ=ルミナは腰に下げていた彫刻刀のバッグを手近な小さなテーブルに置いた。


「これなんですか~?」


 エアラリスが触れているのは大きなボックス。白色の家電のように思えるが大きさは三メートルほどもある。


「冷凍庫。特注の」

「冷凍? なにを?」

「開けてみていいよ。今から使うから」

「わくわく」


 しながら冷凍庫を開けると、上から下までぎっしりと一つの氷塊が埋め込まれていた。


「氷像用か」

「そ。上からドバーと水いれて、凍らせてから取り出すの。前に半端な状態で開けて水びたしになったわ……」


 その時を思い出したのか、沈むハイ=ルミナの表情。しかしすぐに元に戻った。


「主にイベントで使うんだけど、今日はこれで見せてあげる。と、その前に――」


 部屋のスミによってなにかを操作。するとアトリエの室温が急速に低下した。


「寒いのです……」

「そうだね……」

「氷をなるべく長持ちさせるためにね。ま、すぐに出来るけれど」


 置いた彫刻刀のバッグから六本取り出して、両の指に挟む。


「エアラリス、氷塊をこっちに」

「ふ、わたしを使えるのはヴォワさまだけなのです」

「持っておいで」

「は~い」


 氷塊の下には板があって、そこには重さに負けないようにか大きめのキャスターがついている。だから氷塊は思いのほか簡単に動いてアトリエの真ん中まで移動させられた。


「よ」


 キャスターを固定するハイ=ルミナ。


「んじゃ、やるよ」

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