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幻想神戦 ティアナ  作者: 川端 大夢
第一章 勇者が死んだこの世界で

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客人 (2)

 ドワーフの村にアンデッドが来襲、そこに王国からの親書を携えた冒険者が加わった騒動に、カムラン少将の制止も聞かず、ドワーフの村に自ら出陣したシーザーは、村長であるガムラに一枚噛ませ、カムラン少将に命じて死者の門の処理をさせたあと、早々にシュガトーに戻らせ、自らカムラン少将に扮してカイたちの精査を始めた。


「つまらんことに、なんの裏もなかったことはシュガトーに着く頃には、すでにわかってしまったのだ。」


 そこで今度は、帝都に行きたいというカイたちに付いていくことを思いついた。


「帝都のことも、ずっと気になっていたしな。」


 実はサートン公爵に頼ることを思いついたのは、シーザーが帝都に行くことを当然のように反対したカムラン少将で、承諾する条件として出した苦肉の策だったそうである。

 カイたちを連れて、帝都の様子を自分の目で確かめに行く。それ以上の意図や思惑はまだなかったシーザーとしては、カムラン少将を取り込むためには承諾するしかなかった。その一方で、実際、サートン公爵の意見を聞くことは名案だと思ったらしい。


「そうして、お前たちと旅しているうちにな。帝国とでも手を取り合って、戦争のないこの時代を守ろうとするギネヴィア殿のような御仁が、王国にいるのなら、俺もそちらに手を貸したい……剣を振るって人を相手にするよりは、釣り竿を振って魚を相手にしている方が、俺も好きだしな。」


 言われてみれば、ここまでの旅中、カイたちと一緒にずっと馬車の中にいた。その馬車のまわりは、カムラン少将に命じられた親衛隊が常に固めていたので、随従する末端の兵卒は、一度も顔を現さないこと隊長 カムラン少将のことを疑問に思っても、まさか自分たちが領主の供をしているとは思っていなかったのだろう。


「そう思った時にな。戦争とは己のために戦うことではなく、我欲のために、他人を戦わせることだと言ったサズン殿から、昔、聞かされた言葉を思い出してな。あぁ、こういうことかと、言われたことの意味を初めて理解したよ。」


 この時、アインがサートン公爵の様子を伺うと、初めてずいぶんと満足げな表情を見せていた。


「俺は宮殿でぬくぬくと金勘定しているだけの連中のために戦うのはまっぴらごめんだ。まして、俺を慕ってくれる領民を、そんな戦場に送り込むなどもってのほかだ。」


 そこまで話し終わったシーザーを見て、カイは初めてオーザム領主としてのシーザーの顔を見た気がした。


「帝都に来てみれば、きな臭い匂いのする宮殿に、サズン殿はやはりおられなかった。ならば、王国の親書という武器を携えていけば、サズン殿なら良い知恵を授けてくれるに違いないと思ってな。少なくとも、爵位も持たない俺では開けてもくれない宮殿の門でも、サズン殿なら開けてくださる。」


「さての、素直に開けてくれるかは、向こうの出方次第だの。」


 サートン公爵が口を開いた。


「と言いますと。」


「まず、正面切って、カイ殿が託されてきた親書を理由に皇帝に謁見を申し込めば、あらぬ嫌疑をかけられて陥れられるやもしれん。」


「公爵殿ほどの立場をもってしても……ですか?」


 ずっと成り行きを探っていたアインも、ついに口を開いた。


「この国の爵位などそんな大層なものないがな。肩書きより今ある強さ、それがこの国の国是でもあるからの。それ故に、お主らが持ってきた王国の親書の威力は計り知れん。それを直接、陛下へならまだしも、下手に王国相手に喧嘩を売ろうなどと考えている連中に渡るなど、あってはならん。」


「今、この親書の存在を明らかにして、登城すればその可能性が多分にあると……」


 サートン公爵は、何も言わず一息付いてから、残っていた葡萄酒を飲み干して、給仕に変わりを持ってくるように命じた。

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