50. 空を見上げて
ここまで読んで頂きありがとうございました!
これにて本編完結です。感想、星評価お待ちしています。
それと、これまでと比べ物にならないくらい甘めの続編を、もう書き始めちゃったので載せていこうと思います。
ブックマークも宜しくお願いします。
主上はわたしと雨月さまの結末に、怒るどころか感動されたそうだ。
わたしがずっと、死んだ初恋の人が好きだと言い続けていたことには興味を持っていたが、まさかその男が側近の雨月さまだとは思いもしない。しかも彼自身、記憶喪失で覚えていなかったという衝撃の展開に、度肝を抜かれたと。
しかしただ許すのでは雨月さまも納得がいかず、一か月間はわたしに会わずに山のような仕事を片付けることになった。酒盛りの刑はお兄さまの発案だったらしい。
わたしは改めて主上の皇后になることを断った件を詫びたが、「雨月のことがなくても、他の女がいるのは嫌だと言ったそなたは皇后になれんだろう」と言って、あっけらかんとしていた。
ただ、わたしのことは相当買ってくれていたらしい。しかも四夫人全員から、皇后は周陽花でなければ務まらないと抗議文が届いたそうな。側室たちにここまで愛される皇后はそなたの他にいない、と笑っていた。
さらに驚いたのは、わたしが皇后であったという事実が抹消されたことだ。この件では宇航お兄さまも手伝ってくれたようだが、周陽花は後宮で事件を起こしていた純妃を捕らえるために協力してもらった、偽皇后だと発表した。
誰もが皇后にふさわしいと認める家柄の周陽花を餌に、純妃をおびき出した。純妃が園遊会で皇后に毒を持った事件も公にされ、周陽花はあくまで囮捜査のために呼んだ配役だったと説明された。
約三か月間の仮初皇后で園遊会を除く公の行事に参加していなかったため、丸く収まる予定だそうだ。
……雨月さまは、こうなることを予想してたのね。
主上は、わたしが皇后になることを断れば、わたしの将来を考えて初めからこうするつもりだったのかもしれない。改めて、海よりも深い雲海帝の懐の広さを知った。雨月さまが信頼し、忠誠を誓うのも納得だ。
しばらく談笑したあと、会はお開きとなった。
帰り際に主上から、女たちのことはよくわからないから、また相談に乗って欲しいと頼まれた。
皇后になるのは無理だけど、そのくらいなら喜んで引き受けるわ!
「大丈夫?雨月さま」
「ええ、少し気分も落ち着きました」
「えっとじゃあ、雨月さまのお宅に行きましょうか。しっかり休まないと」
「俺は独身寮に住んでいるんです。基本的に外部の方は出入り禁止で。……もしよければ、あなたの別宅に行ってもかまいませんか?」
「え」
そりゃあ、別宅はわたしたちの思い出の場所だし、休む部屋もあるけれど、ゆっくり休むなら自宅の方が落ち着くかと思ったのだが。
雨月さまに、すっと手を握られ、指を絡ませられた。
「一か月ぶりですから。あなたと一緒にいたい」
「う……」
「それに今の状態で自宅に連れ込むと、あなたが危険で……。別宅のほうがましなんです」
ん?わたしが危険というのはどういうことだろう。もしかして独身寮は安全が十分に確保されていないのだろうか。護衛がいないことを気にしているのか。
なんにせよ、そんな風に言われたら了承するしかない。
馬車が走り出すと、雨月さまはわたしの腰を引き寄せ、そのまま自分の膝の上に乗せてしまった。背中からぎゅうっと抱きかかえられ、わたしは身動きが取れない。
「う、雨月さま!?」
「……別宅じゃなくても、まずいな」
この体勢はちょっと恋人同士すぎる。もうすぐ結婚するとはいえ今は控えませんか、と後ろを振り返って言おうとしたけれど、いつの間にか雨月さまはわたしを抱き抱えたまま寝息を立てていた。
ふふ、疲れてるわよね。一か月の罰、お疲れさまでした。
「ん……陽花、愛してる……」
後ろからそんな寝言が聞こえて、わたしもこれ以上なく満ち足りた気持ちになる。
馬車の窓から空を見ると、今のわたしの気持ちを表すような、澄んだ青空が広がっていた。




