27. 帝の花たち
ここまで読んでいただきありがとうございました。次の話からやっと恋愛メインになります。
できれば一気読みしてもらいたいので、頑張って修正しながら更新します。
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「「陽花さま、今日はお招き頂きありがとうございます」」
今日は四夫人を皇后宮に招き、もはや定例となっている女子会の日である。
わたしが後宮にしてから、もうすぐ三か月が経とうとしていた。
四夫人の仲は安定している。主上も最近は平等に、週に一度ずつそれぞれの夫人のもとに通っているようだ。主上もせっかく後宮の雰囲気が改善された中で、寵愛に差をつけて和を乱したくないのだろう。
一方で、わたしへのお渡りは週に二度に増えていた。
滞りなく笑顔で茶会を進行させながら考える。誰が最も皇后にふさわしいか。
まず雪麗さま。彼女は主上より十も年上だが、知識、教養、美貌、品格どれをとっても素晴らしい。わたしが四夫人の仲を取り持とうとしていたことにも気づき、協力してくれた。
しかし雪麗さまは北国の姫で敗戦による人質扱い。自国の者を差し置いて、今更敗戦した小国の姫を皇后にするのは反発も大きいだろう。年齢的に子が望めるか疑わしいというのもある。
家柄的には春蘭さまが一番だ。父は大臣を務め、母は李家の出身で主上とも血縁関係にある。
彼女は誰よりも素直で真っ直ぐな性格だ。ただ、少々弱気で主上のことも怖がっており、教養面にも不安は残る。皇后になるには努力と心の強さが必要だろう。何より、本人は皇后になることを望んでいない。
夏姫さまは四夫人の中で最も家柄は低いが、独特の人を惹きつける魅力と意思の強さを持っている。ただ、主上や後宮のことを深く考えているというよりは、個人主義の域だ。四夫人とは仲良くしているが、あくまでも私的交友範囲内だろう。
秋明さまは教養高く才能に溢れており、嫉妬深く女らしい心根の持ち主でもあるが、それも高い矜恃ゆえと言える。皇后を目指していたこともあるほど向上心があるが、完璧を求めすぎるその気質は、後宮の女人たちをまとめるには少々危ないところがあるかもしれない。
うーん……悩むわねぇ。みんないい子だし。わたしだってまだまだ未熟なのに、こんなに冷静に人のこと分析してていいのって気もする。
あと条件ばかりで皇后を決めるのも、なんかしっくりこないわねぇ。
「まぁ、主上!」
誰かが挙げたその声ではっとした。見れば、雲海帝がこちらに向かって歩いてきているではないか。
わたしも四夫人も一斉に立ち上がり、頭を下げた。
「急に来てすまんな。今日は皇后が四夫人を招いた茶会をすると聞いていたので、我が美しい花たちを眺めにきたのだ」
鈴玉が慌てて主上の席を用意し、改めて全員席につく。
「それで、茶会は順調か?皇后よ」
「もちろん。順調だったところにやって来られたのが主上ですわ。女ばかりの楽しみを奪うなんて、ひどい人ですわね」
「はっはっは、それはすまんな」
わたしは主上の質問の意図に気づきながらも、にこにこと皮肉で返してやった。
こんにゃろー、わたしはあんたの奥さん選びに絶賛悩み中ですよ!
「ちょうど秋明さまの新作の話をしてましたのよ。ねぇ、秋明さま?」
「は、はい!」
ん?どうしたの秋明さま?
見れば秋明さまの顔は真っ赤に染まっている。春蘭さまと夏姫さまも緊張しているようだ。雪麗さまは微笑ましく弟と妹たちを見るような目をしていたが。
「そうか。秋明妃の小説は後宮で大変な人気だと聞く。今度俺にも読ませてもらいたいものだな」
「そ、そんな……!しゅ、主人に読んで頂けるような内容では……。趣味、みたいなもの、でして」
まあ確かに、秋明さまの小説は完全に女性向きだものね。
それからも主上は妃一人一人に声をかけ、近況を確かめていった。
ん?あらあらあら?
こうして見ると主上に対する対応の仕方も、みんな違うみたいね。主上に来て頂いたのも参考になったかも。
「しかし皇后はこんな楽しい会に一度も俺を誘ったことがないなんて、つれないな」
「殿方抜きの女同士の楽しみというのもありますわ。でも主上、前触れもなく急にいらっしゃるなんてどうしたんです?」
「なに。今日からしばらく雨月が休みを取ったのでな。あいつは優秀だが、俺といるとすぐ仕事を持ってくる。あいつのいない時くらい、昼間に妃たちと戯れるのも良いだろう」
要するにさぼりか。しかし雨月さまが休みを取ると聞いてぎくりとする。もしかしてしばらく休みを取るほど、体調が悪化したのではないだろうか。
「まあ……雨月さまは、ご旅行かなにかを?」
的外れな例えで、それとなく理由を聞いてみる。
「旅行ではないが実家に行くらしい。あいつも久しく帰ってなかったからな。実家は都から少し離れていて、親は亡くなっているが地方官吏の兄家族がいる」
それを聞いてわたしは驚いていた。感情が表に出ないように気をつけ、次はどんな言葉を発すべきかと考える。
「そうですか……お目付役がいないからって、お仕事あんまりさぼらないでくださいね」
「そなたは女雨月のようだな」
はははと爽やかに笑って、主上はようやく仕事に戻っていった。
わたしは、心の動揺を抑えるのに必死だった。




