24. ねたばらし
ねたばらしですが、みなさんもうお気づきですよね?
「うーん……どーしようかしらねぇ」
わたしはさっきから絶賛悩み中である。四夫人とはそれからも何回か茶会を重ねていた。四人全員で会うこともあれば、それぞれと会うこともある。
わたしの思惑通り、四夫人同士の交流も深まった。最初にその助けとなってくれたのは雪麗さまで、彼女はわたしに一言断った後、他の四夫人を私的な茶会でもてなすようになった。
春蘭さまと秋明さまは頻繁にお互いの部屋を出入りしているそうだ。わたしが皇后に就いたことで、今では同じ四夫人として一緒に頑張りましょう!と励まし合っているらしい。
夏姫さまも園遊会前ほどではないが『胡蝶』の外部稽古に参加しており、自室にも稽古場を作ったという。体を動かすことが良い気分転換になっている。
ここまでくればわたしの企みもほぼ成功したと言えるだろう。
ということでつい昨日、主上と雨月さまに正式な報告を入れたところだった。
***
『さて皇后よ。四夫人の件、ねたばらしをしてもらおうか』
『ねたばらしという程のことではありません。その前に、報告にあたり率直な発言をお許し願えますでしょうか』
主上は面白いものを見るような視線を投げ、許可した。
『ありがとうございます。……ではわたしの企みについて報告申し上げます。わたしはまず、四夫人たちの自立を促しました』
『自立?』
『後宮は女ばかりの閉鎖的な環境です。妃たちは一人の帝を支えるという同じ仕事に就きながら、実質敵対関係にある。部屋に籠ってばかりで自由もなく、はっきり申し上げて、主上の寵愛だけで幸せかと問われればそうではないでしょう。そこで、主上に仕えること以外での楽しみを見つけてもらおうと思いました。何か自分が打ち込めるもの、趣味、生きがい。そんなものがあれば、鬱屈した気分を紛らわせることができ、後宮で事件を起こそうなんて考えなくなります』
『……ほう。俺の寵愛だけでは不服だと』
『寵愛と言っても、普通の夫婦のように毎日会うわけではありません。帝相手では気も遣うでしょうし』
『……続けよ』
『そこでわたしは、四夫人が後宮に入る以前の生活を調べました。彼女たちにまだ自由があった頃の生活に、希望があると思ったからです。そして、どんなきっかけを与えれば彼女たちが生き生きとした生活に戻ることができるのかを考えました。わたしが見出したきっかけは、春蘭妃には刺繍、夏姫妃には舞踊、秋明妃には創作活動、雪麗妃には料理です。皇后の依頼ということで立場も利用させて頂き、それが出来るような環境を整えました』
『ふむ、それで?』
『次に、四夫人には敵対関係ではなく、主上を支える同志になってもらいたいと思いました。その足がかりとして夏姫妃の園遊会での舞台を用意し、春蘭妃と雪麗妃に裏で支援させるように仕向けました。そして秋明妃の書いた小説を、他の妃たちにもばらまいておく。秋明妃の小説は予想以上の出来栄えで、女性の心をぐっと掴む内容でしたので、妃たちからの支持もばっちりでした』
『秋明妃の小説は、今では後宮全体の流行りになっているそうだな。夏姫妃は園遊会の男装の演舞が、他の妃たちから絶大な人気を得ていると聞く。……恋文までもらっているそうだぞ』
『はい。妃同士でも、きっかけさえあれば親しくなることは可能です。それがわたしの狙いでした』
『そして四夫人を引き合わせた茶会で、撒いておいた種がようやく花を咲かせたのですわ。四夫人はお互いの魅力を知り、今では主上を支える同志として交流を深めつつあります。後宮の花が、他人を蹴落とすことでではなく、主上への献身と自らの人生を楽しむことに努める。これこそ妃の鑑、健全な後宮であるとわたしは考えます!』
後宮という特殊な環境で生きることが、彼女たちを苦しめている。わたしは彼女たちに、環境ではなく自分のちからで幸せを見出して欲しかった。主上に寵愛され、これから子供も生まれればまた別の幸せもあるだろうが、そんな風に寵愛や運に左右されるのではなく、自立した一人の人間としての幸せを。
『なるほど、そなたの魂胆はわかった。今の状況を見ればそなたの案は成功したと言えるだろうな。妃たちの顔を見ても、以前とは比べものにならない程穏やかな顔をしている。周陽花よ、よくやった』
『ありがとうございます!』
やったわ!ようやく主上にも良い報告ができた!ここまで長かったわよーお父さま……と、内心浮かれていると。
『だがこの成功には、明らかに必要不可欠な要素があったとは思わんか?』
『必要不可欠な要素、でございますか?』
『四夫人の均衡は、一体誰によって支えられている?』
それは。
『周陽花よ、そなたが皇后であるからこそ、皆がついてきているのだ』




