表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/58

19. 犯人の正体

 わたしは風邪をひいて体調不良ということになっている。

 後宮に入り、さっそく妃たちとの交流や園遊会の準備で疲れも出たのだろうと言われ、園遊会の閉会の挨拶に顔を出したのが功を奏したのか、毒殺の噂が出ることもなかった。


 わたしの元には四夫人をはじめ、名だたる貴族や妃たちから手紙や見舞いの品が届き、侍女たちはわたしの世話と贈り物の検品に明け暮れている。

 

「翠玉、手紙は出してくれたー?」

「はい。すぐにお返事もあり、皆さん伺うとのことでした。でも陽花さま、もう動かれるのですか?まだ安静にしてたほうが」

「いーえ。もう五日も休んだわ。園遊会はただの足ががりよ、これからもうひと仕事しなくっちゃ」


 わたしは明日、見舞い品の礼を兼ねて四夫人全員を茶会に招くことにした。これまでは各妃と個人的な付き合いはしてきたが、全員と一同に顔を合わせたことはない。


 正直どうなるのか読めないのでどきどきだけど、まあなるよーにしかなんないわよね!


「失礼します、陽花さま。宦官の曹さまがお見えですー」

「わかったわ鈴玉。お通しして」


 雨月さまには園遊会の日以来会っていない。彼は毒殺事件の調査を担当している。


 入室した雨月さまは、少し痩せたように見えた。


「周皇后、お加減はいかがですか」

「もう大丈夫ですわ、雨月さま。あの時はみっともない姿をお見せして申し訳ありませんでした」


 雨月さまには、胃の中の物を吐いて息も絶え絶えの見苦しいところを見られていた。今更だが恥ずかしい。


「みっともないなんてとんでもない。周皇后の立派なお姿に感銘を受けました。……私が至らぬばかりに、あなたを危険な目に合わせてしまい申し訳ありません」


 雨月さまは張りつめた顔をして、懐から小袋を取り出した。


「それは?」

「あなたの食事に毒を入れた者の指が入っています」


 え……ど、どういうこと?


「は、犯人ってことですか?」

「はい。とある妃の侍女です」

「その妃って」

純妃(じゅんひ)です」


 周家の調査部隊の報告にも上がっていた。

 純妃は家柄では四夫人にも劣らず、容姿もかなり美しいと聞く、帝のお通りもある妃だ。一部の貴族たちの間では彼女こそ四夫人、果ては皇后にと推す声もあった。


「純妃の父親が大臣で、主上にも無視できない相手だったのですが、主上の判断で四夫人にはなれませんでした。彼女は春蘭妃や雪麗妃に刺客を送ったり、裏でかなり危険なこともしていましたが、やり口が巧妙で証拠がなかったのです」

「じゃあ、純妃が園遊会でわたしに何かする可能性も、前々から予想していたと?」

「いえ、今回演舞の件で夏姫妃に注目が集まることはわかっていたので、狙われるのは彼女だと思っていました。主上も事前に純妃の部屋を訪れ、わざと夏姫妃が園遊会で舞を踊る話をして、夏姫妃が特に寵を受けているように匂わせていたので」


 要するに夏姫さまを餌に、純妃の悪事を暴こうとしていたのか。


 わたしが羹を食べていた時、わざわざ主上と雨月さまが夏姫さまのところへ行っていたのは、舞の労いとは別の目的だったのだろう。


 皇后であるわたしの警備が甘かったとは思わない。しかし通常の警備では足りなかった。敵は毒味のあとに配膳係の意識をそらし、速やかに毒を仕込んだ。手際の良さから、純妃ははじめからわたしを狙っていたと思われる。


「ちょっと待って下さい」


 鈴玉が口を挟んだ。


「それじゃあ陽花さまは、何も知らずにあなたがたの勝手な企みに巻き込まれて、毒で殺されるところだったというんですか?」

「鈴玉、やめなさい」

「いいえ、納得できません!そもそも陽花さまは後宮入りなんて望んでなかった。それを勝手な理由で皇后にしたいと言い、後宮の妃問題の調査なんかをさせて、挙げ句の果てに殺されろと!?」

「鈴玉!」

 

 鈴玉が珍しく声を荒げていた。隣にいる翠玉が止めないということは、翠玉も怒っている。


「……鈴玉殿のおっしゃる通りです。この園遊会は周皇后のお披露目でもありました。皇后の周囲をもっと警戒すべきだった。我々が夏姫妃に狙いをしぼりすぎたのと、皇后のお立場が圧倒的だったので、純妃も皇后には手を出さないと踏んでいたのです」


 雨月さまが、己の失態だと悔しさを滲ませる。


 もしかしたら夏姫さまへの帝の通いが多かったのも、夏姫さまを純妃を釣る餌にするための作戦のうちだったのかもしれない。そんな時、わたしが園遊会の演舞に夏姫さまを誘ったことで舞台が整った。


 わたしは雨月さまが取り出した黒い小袋を、じっと見つめた。

 純妃に面識はないが、こうまでして皇后になりたかったのか、帝の寵愛が欲しかったのか。わたしは後宮に来て初めて、恐ろしいと思った。

 


 






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ