表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/58

11. 雨月の変化

「さて皇后よ。四夫人との面会はいかがであったか」


 四夫人との茶会を終えたわたしは、皇后宮ではなく主上の執務室に呼ばれた。

 主上は不敵な笑みを浮かべて頬杖をついてわたしを見ている。

 ったく、誰のためにわたしがわざわざこんなめんどくさいことしてると思ってるんだか!


「種は撒きました。あとはしばらく様子を見てみますわ」

「種か。雨月に色々と頼んでいたあれだな」

 

 主上は、隣にいる雨月さまのほうを見た。あれ、雨月さまなんだか顔色が悪い?


「それで、妃たちの第一印象とやらはどうだった」


 四夫人が後宮入りした背景や趣味趣向については事前に調べておいた。結果を元に各茶会に臨んだが、大方の人物像は予想していたものと逸れてはいなかった。しかし直接話すことでわかったことも多い。


「第一印象では、国を傾けるような悪意ある妃たちではないと思いました。個性豊かで、皆さま魅力があります」

「ほう」

「けれど皆さまそれぞれが悩みや苦しみを抱えている気がします。まずは皇后選びではなく、それらをできる限り取り除いてやる手助けがしたいと思います」


 主上はうっすらと髭のある顎に手を当てて考え込んだ。


「ふむ、まあいい。しばらくはそなたのやり方に任せるとしよう」


 どうやらこれ以上の追求はないようだ。わたしとしても現段階で四夫人を比較することは避けたかったので有難い。ほっと息をつき、目の前に用意された最高級のお茶に手をつける。


「そなたが皇后になってから、うるさいじじい共の後宮に関する進言もなくなった。さすがだな」


 主上は満足そうだ。


「周家の名が効果を発揮しているのであれば幸いですわ」

「周の名だけではない。美しく知性に溢れた、理想的な皇后だと言われている」


 その言葉にはさすがに目を見張った、一体誰がそんなことを。まあわたしも人前に出る時は、相当猫被ってるけど。


「どうせわたしの事を何も知らぬ者たちが適当なことを言ったのでしょう」

「宦官や宮廷に勤める官吏たちからだな。そなた、書庫ではだいぶ知り合いを作ったようだ」


 あらま、そりゃ報告済みよね。書庫では何人か顔見知りもできていた。本の話で盛り上がる官吏もいたため、わたしも会話を楽しませてもらったのだ。


 雨月さまには相変わらず書庫で会い、その度に必要な頼みを聞いてもらっている。彼は勘の鋭い人なのでわたしの企みにも気がついているかもしれないが、今のところ何も言われていない。


「雨月もそなたには感心していたぞ。なあ、雨月」


 急に主上に話を振られた雨月は、少し戸惑っていた。雨月さまは、やっぱり顔色が悪い気がする。


「……はい。書庫での官吏たちとの会話や、選ばれる本を見れば、周皇后が普通の名家のご令嬢以上の知識と教養をお持ちで、何事にも興味を持たれるとても向上心の高い方だとわかりました。四夫人との茶会も大変和やかに進められたと聞いています。主上の皇后にこれほどふさわしい方はいないかと」

「え……」


 やっぱり茶会の様子も報告されていたのだということは置いておいて、彼にそんな風に思われていたとはちょっと驚いた。このところ雨月は初期の頃のような笑顔を見せることがなく、口数が減っていたからだ。


 頼みは聞いてくれて文句も言われないので、わたしの企みに不満があるわけではないと信じたいが、以前はどんな本に興味があるのか、周家の家族とはどんな事を話すのか、など興味を持って色々話しかけてくれたのに、最近は必要最低限の会話しかしてくれない。


 書庫で会うようになって早々に雨月さまがかなりの読書家だとわかり、わたしも彼の話を聞くのは楽しみだったのだが、何か気に障ることでもしてしまっただろうかと気にしていたところだった。


「どうだ、雨月もこう言ってるぞ。本当に俺の皇后になるつもりはないか」

「すみません主上。ありません」


 即答よ!だから、わたしには好きな人がいるって言ってるのに!いくら主上でもそれだけは聞けないわ。


「好きな男が忘れられないか」

「はい」

「十年も前に死んだんだろう。死してなおこれほどまでそなたに好かれるとは、一体どんな男だったのだ」


 主上はむっとした顔で尋ねた。毎回わたしの部屋に来るたびに、軽くあしらわれてすぐ一人にされることを根に持っているのか。


 女は皆自分のことを好きになるとか、お花畑みたいな考えを持ってるんじゃないでしょうねぇ!確かにこの国の誰よりもお金と地位と権力をお持ちの方だけど。


 雨月さまも、これまで何度もわたしには好きな人がいるって言っているのに、ちっともわたしの気持ちを理解して下さらないのね!と、恨めしげに雨月さまに視線を向けると。


 ……え?


 急に、彼の姿にありえない姿が重なった。今のは一体、何?


 ぼーっとしていたら、主上が「皇后よ、俺の話を聞いているか?」と催促されたので、わたしは動揺を悟られないようにありったけの笑みを主上に向けた。


「主上。煌びやかで美しい数多の妃がいる主上には、きっと退屈なお話ですわ」


 わたしの初恋の人について、この場ははぐらかそう。


 

ここまで読んで頂きありがとうございます!

今日はこの後も何話か更新予定です。

良ければブックマーク、星評価、感想などお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ