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愛と美と慈しみ②

 なんだか元気が出て来た。毎日が楽しい。大宮の家には、ときどき3人の神が降臨する。かすみとレイ、そして彩だ。この頃、彩は北朝鮮に行く回数が減って来ている。理由を尋ねたところ、

『朴正恩。彼は、レイちゃんと会って、遊んで、それから心に変化が現れたの。昔の危険な人物ではなくなったの。』

やはり、レイには、大きな力があるのに間違いない。俺を泣かすほどの力もある。俺の最近の日課はオセロの勉強だ。レイに勝つまでは、絶対にやめない。

 あの日以来、3人はやたら仲がいい。まるで、家族のようである。今日は、月に一度の大掃除の日だ。俺が勝手に決めているのだ。俺の部屋だから、俺が掃除をするのが筋であるが、是非とも、3人に手伝って欲しい。

『えー、なんでー、やだー』

案の定、予想した通りの反応だ。

『じゃあ、俺にじゃんけんで勝ったら、手伝わないでいいよ。』

かすみと彩は、ほくそ笑んだ。やはり、おバカさんだと、彩を思った。

『最初はグー、ジャンケンポン!』

俺はグー、3人はみんなパーを出した。

『ちくしょう!また、負けかよ。』

この男、全く気づいていない。

『さあ、天気がいいから、掃除はヒロ君に任せて、お買い物に出かけようか。』

かすみが声をかけ、3人は出て行った。

 俺は、掃除は嫌いでない。部屋が綺麗になるのだから、嫌がる理由が分からない。さて、10分で終わらせよう。俺は、得意の特殊能力を使い、銃弾より速いスピードで動き始めた。見る見るうちに、部屋は片付き、磨かれていく。空気も綺麗になってきた。爽やかだあ。俺はソファーに座り、寛いだ。早く、帰って来ないかなあ。3人がいると、俺はなんだか、幸せな気分になれるのだ。


 かすみたち3人は、表参道でイタリアンのランチを食べていた。

『なんだか、彩さんが来ると、レイもヒロ君も喜ぶのが分かるわ。』

『かすみさん、わたくしたちは、ヒロ君も含めて、神の家族ですから。』

『ママ、彩ねえちゃん。レイね、おじちゃんの秘密を知ってるよ。』

かすみと彩は、ドキリとした。レイの計り知れない力に、何度も驚かされているからだ。

『レイ、どうしたの?何を知ってるの?』

『あのね、この前、おじちゃんの頭のお肉のマークを消したとき、お肉のマークの下に、別のマークがあったの。すぐに消えちゃったけど、あったのは本当だよ。』

『レイちゃん、それは、どんなマークだったの?』

彩の顔が真剣になっていた。

『ママ、紙と鉛筆ある?』

かすみは、手帳とボールペンを出した。

『これに書いていいわよ。』

『あのね、レイ、子供だから読めないし、意味も分からないけど、そのマークは覚えてるの。書くね。』

レイは、手帳にマークを書き始めた。

『こんなマークだったの。どんな意味なのかなあ。』

手帳に書かれていたのは、『梵』という文字であった。

この文字を見て驚いたのは彩であった。かすみは、何と読むのかも分からなかった。

『彩さん、この文字は、何て読むの。そして、何か意味があるの。』

驚きを隠せない彩が話し始めた。

『この文字「梵」は『ぼん」と読みますわ。古代インド仏教で使われていた文字です。そして、この文字の意味なんですけどね。』

彩は、一度深呼吸した。

『この文字は、「宇宙の創造主」という意味なの。ちょっとビックリしちゃった。ヒロ君が盧遮那仏であることの証拠の一つだと思っていいは。』

『かすみも、ビックリだわ。ヒロ君が近寄りがたい存在に見えてきちゃった。』

『それは、大丈夫よ。どんなに偉くても、大きくても、わたくし達の守護神であることは、変わりないのでね。それよりも、この凄いことを見つけたのが、レイちゃんだということに驚いているの。そもそも、この前のヒロ君の額の文字を消せたことが不思議なの。神の書いた文字は、誰にも消せないのに、レイちゃんは簡単に消せたのよ。そして、「梵」という文字を見つけ、しかも正確に記憶しているなんて、3歳の子のなせる技ではないと思うの。』

レイは、大人二人の会話をキョトンと聞いていた。


 3人はレストランを出て、街を散策した。しばらくして、異変に気付いたのは、彩であった。

『かすみさん、後ろを振り返らないで、聞いて。さっきから、男数人に後をつけられてるわ。』

『えっ。本当に。』

かすみは、身を強張らせた。このところ、何度も怖い目にあっているからである。

『ちょっと、試してみたいことかあるんだけど、いいかしら。』

『ええ、構わないですけど、、』

かすみは不安で、いっぱいであるが、頼れるのは彩だけである。

『ねえ、レイちゃん。おじちゃんと遊びたくない?』

『うん。遊びたい。』

『そしてら、レイちゃんの心で、おじちゃんをここに、呼び出してくれるかな。出来るかな?すぐに来て〜って、お願いして。』

『レイ、やってみるね。』

そう言うと、レイは目をつぶり、両手を胸に当てた。

『彩さん、これって。テレパシー?』

『そう、わたくしや、ヒロ君に備わっている能力。もしかしたら、レイちゃんにもあるのかもと思って、試させてもらったわ。』

私にも特殊能力があるけれど、レイにもあると考えてるのね。しかし、今は悠長なことを言ってられない状況だと分かってるのかしら。かすみは、さらに不安を募らせた。



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