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愛と美と慈しみ①

 かすみと彩が入ってきた。あれ?いがみ合ってるのかと思っていたが、二人ともニコニコと笑っている。まあ、いずれにせよ、仲直りしているのなら問題ない。

『ママ〜。』

レイがかすみを見つけて、抱きついた。

『レイちゃん、どう?楽しかったあ?』

『うん。すごく楽しかったよ。おじちゃんに、トランプとオセロを教わったの。何回も遊んでもらったよ。でもね。おじちゃん、凄く弱いの』

レイは、満面の笑顔で話していた。俺は、なんだか照れ臭くなっていた。

『あら、ヒロ君。レイちゃんに負けちゃったの。ちゃんと本気だしたの?』

彩が俺をバカにしてるのが分かった。すると、レイがちょっとムッとした表情で、彩に向かって抗議した。

『彩ねえちゃん、おじちゃんは本気で遊んでくれたよ。いつも、最初はおじちゃんが勝ってるんだけど、最後の方で、いつも間違えるの。だから、レイが勝つんだあ。』

『そうなんだあ。おじちゃんは、本気でやったのに、負けるのね。』

彩は、嬉しそうな顔をしている。俺は恥ずかしくて泣きそうになるのを我慢した。

『ヒロ君、レイと遊んでくれて、ありがとうね。泣きたければ泣いてもいいのよ。』

かすみが俺を抱きしめてくれた。優しさに包まれて、俺はなんとも言えない幸せを感じた。俺はかすみを見つめた。と、次の瞬間。

『キャハハ、 キャハハハッ』

『どうしたの、かすみさん。』

『だって、ヒロ君の顔。ダメだ、笑いが止まらない。』

『ヒロ君、あははは。受ける。面白すぎる。』

かすみに続き、彩も笑い出した。


 俺は何がなんだか分からない。しかし、顔を見て笑われてることは確かだ。かすみが笑いをこらえて、話した。

『どうしたのヒロ君。ふふふ。鏡を見ておいで。』

俺は再び、洗面所に駆け込んだ。さっきは、彩先生に顔にイタズラ書きをされた。今度は何が起きたんだ。鏡を覗き込む。

『ガァ、ガァ、アアア。何だこれは。誰がこんなことを。』

レイが近寄ってきた。

『おじちゃん、オデコのイタズラ書き、レイがデコピンやりながら消してあげたよ。可愛そうだったから。』

『消しちゃダメと言われた文字を、レイちゃんが消してくれたんだあ。優しいね。でも、これは。』

俺はまた、泣きそうになった。そして、かすみを見た。かすみは、不思議そうに見ていた。

『でね。おじちゃんは、ヒーローだから、ヒーローのマークを書いてあげたの。ママが読んでいた漫画の本と同じマークをね。』

彩は、笑いを堪えるのに必死になっている。

『レイちゃんは、わたくしよりセンスがいいわ。これは、最高よ。ヒロ君、どうする?この文字は消えませんよ。』

『彩先生、消えないって。どういうことですか。』

『この前、話したでしょ。わたくし達3人は「神」だって。神が書いた文字は誰にも消せないの。』

『 えー、そんなあ。何とかしてよ彩先生。』

『それは、無理なの。』

『かすみ〜、たのむ、助けてくれ。』

『ヒロ君、わたしも消し方が分からないわ。』

これでは、本当に恥ずかしくて、外を歩けない。

俺の額には、一文字、漢字が書かれていた。『肉』という文字が。


 俺は、ふさぎ込んだ。広い意味で目的は同じかもしれないが、俺は『キン肉マン』ではない。恥ずかしい。普段の行いが悪いといえば悪い。使命のためという理由で、何人もの命を殺めた。その報いと言われれば仕方ない。さっきまで、笑ってた二人も、さすがに、困り果てた顔をしていた。張本人のレイは、スヤスヤと眠りについた。その寝顔を見ていたら、なぜか俺の心も安らぎ、いつの間にか眠ってしまった。

 翌朝、ドスンという衝撃で、起こされた。レイが腹の上に乗っている。

『おじちゃん、おはよう。起きて、起きて。』

俺は無理矢理起こされた。

『こっち、来て。ママがおじちゃんのマークを消してあげなさいって言うから、消してあげるね。』

ゆみと彩が、こっちを見ている。

レイの小さな手のひらが、俺の額に当てられた。氣が伝わるのが分かる。だんだんと、額が熱くなる。

『終わったよ。きれいに消えたよ。』

『ありがとう、レイちゃん。君は優しいね。』

『彩ねえちゃんが、弱いものいじめはしてはダメって、言ってたの。おじちゃん、トランプもオセロも弱いから。いじめちゃいけないよね。』

俺は、喜んでいいのか、悲しむべきなのか。どちらにせよ。この子は、守るべき神だと感じた。

『ね、かすみさん、わたくしの伝えたことを信じてもらえたかしら。』

『はい。少なくとも、あの強いヒロ君が、か弱いレイに勝てないことは証明されました。』

『レイちゃんだけでなく、かすみさんにも、決して勝てないように決められてるの。今度、じゃんけんしてごらんなさい。何回やっても、ヒロ君は、あなたに勝てないですから。』

『なんか、ヒロ君が可愛そう。』

『大丈夫よ。ヒロ君は、おバカさんだから、すぐにまた、「俺は神だ」って、調子にのるから。そのときは、わたくしとレイちゃんで、お仕置きしますから。かすみさんは、優しくしてあげてね。甘えさせてあげてね。』

『彩さん、レイの役割は何なの。』

『レイちゃんの役割は、救世主を誕生させること。あとね。もうひとつあるの。それはね。ヒロ君の教育。ヒロ君は、レイちゃんによって、成長するわ。そして、いつか盧遮那仏として、覚醒するはずよ。』

『レイが、ヒロ君の教育係。』

なんだか、複雑な思いのかすみであった。

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