真実②
『かすみさん、数々のご無礼、謝罪致します。』
彩は、深々とお辞儀をした。突然の謝罪に、かすみは戸惑った。
『かすみさん、あなたには告げなければならないことがあります。今日まで、黙っていたことを、許して下さいね。』
『どういうことですか。』
すでに、かすみの臨戦態勢は消えている。
『以前、お話ししたことは、覚えてらっしゃいますか。あなたは、アフロディーテ、つまり美を司る神『ヴィーナス』であること。そして、レイちゃんは、救世主の母になる『マリア』であること。この、お2つを話したと思います。』
『ええ、覚えてます。正直、ちょっと信じがたいと思ってます。』
『そうよね。普通に考えたら、疑うのは当たり前ね。このこと、そして、これから話すこと。いずれも信じるも信じないも、あなた次第ですよ。ただし、他言は無用です。今日、お話しするのは、わたくしとヒロ君のことです。』
『彩さんと、ヒロ君のこと。何かしら。二人の間に、何か秘密でもあるのですか。』
かすみは怪訝な顔をした。
『わたくしとヒロ君の間に恋愛感情は無くてよ。ご心配なさらずに大丈夫ですから。』
かすみは、ちょっと安心したようだ。
『お二人の関係では、ないのですね。』
彩は、話しを続けた。
『かなり複雑なので、順序立てて、お話ししますね。まずは、わたくしの正体。わたくしは、エロースと呼ばれています。愛の神です。クピード、キューピット、アモール、などとも呼ばれることがあります。神の一人です。そして、エロースこと、私の母は、ヴィーナスなのです。つまりは、あなたです。もちろん、遠い前世の話です。ですので、わたくしとレイちゃんは姉妹なのです。わたくしとレイちゃんを見ていて、不思議とお思いになりませんでしたか。あのお嬢さんは、とても感性に優れています。心で、わたくしを姉と悟ったようです。だから、誰からも言われることなく、わたくしのことを「彩ねえちゃん」と呼んで下さってます。』
にわかに信じられないようなことを言われて、かすみは動揺を隠せなかった。
『それは、本当のことなの。』
かすみは、身を乗り出して聞いた。
『真偽は、いずれ分かります。あなたの、お孫さんが無事誕生すれば、はっきりします。救世主の誕生を。』
彩の背中から、虹色のオーラが出ている。かすみは、それを目の当たりにし、信じることにした。
『まあ、わたくしの話はこのくらいにして、問題はヒロ君の話です。彼の話は、3種類あります。まずは、前世の話。ヒロ君も、あなたの子供です。末っ子の男の子です。だから、レイちゃんの弟ですよ。ヒロ君が無敵なのは、分かるでしょ。でも、なぜか、あなたや、わたくし、さらにはレイちゃんに対しては、異様なくらい優しいでしょ。前世から、母や姉に甘えていたから、愛情欲しさゆえに、決して逆らわないの。というより、逆らえない宿命を負ってるのよ。』
『宿命?』
『そう宿命。かすみさん、レイちゃん、そしてわたくし。いずれも神です。普通、神には12人の守護神がついているのよ。でも、かすみさん12人の守護神を見たり感じたりしたことありますか。ないはずよ。かすみさん、レイちゃん、わたくしの守護神はヒロ君一人なの。』
『ヒロ君が守護神?』
『そうなの。一人で3人の神を守ってるの。ヒロ君の宿命はわたくしたちを守護すること。だから、逆らいたくても、逆らえないの。ときに、とんでもなく強い神が現れることがあり、ヒロ君もその一人なの。だから、本当は36人の守護神が付くところを、ヒロ君一人で担ってるの。』
『確かに、何か問題があると、必ずヒロ君が助けてくれる。どんな難題でも、嫌な顔しないで、 引き受けてくれる。強くて優しい人、なのに甘えん坊。なんとなく理由が分かったような気がします。でも、3つの秘密だから、もう1つあるんでしょ。』
そう、ヒロには、最大の秘密が隠されているのであった。
二人は何を語らっているのか。かすみは大丈夫なのか。心配でならないが、レイちゃんの遊びに手を抜くことはできない。今、俺はトランプの神経衰弱を3歳の子供相手に真剣に戦っている。今、2勝2敗。強い。手を抜けば大敗をする。文字の描かれた額から汗が流れた。
『以前、こんな話しをしました。ヒロ君も神です。でも、わたくしたちとは、神のレベルが違いますと。覚えてるかしら。』
『はい。そのときのニュアンスですと、私たち3人に比べると、ヒロ君の神のランクはかなり下のような印象を受けた感じでした。』
『でもね、かすみさん。本当は逆なの。ヒロ君の神のレベルは、ずっと、ずっと上なのよ。わたくし達が近寄れるレベルではないの。なのに、わたくし達の守護神なの。』
負けた。やはり、レイちゃんは強い。しかし、なんという記憶力。そして、集中力。やはり、ただ者ではない。
『おじちゃんの負け。じゃあ、罰ゲームね。』
パチーン!デコピン。容赦ない。かなり効く。なんだか、悔しい。
『レミちゃん、オセロ知ってる?』
『知らなーい。でも、教えてくれたら、やってもいいよ。』
よし、これなら勝てるぞ。
『そしたら、ルールを教えてあげるから、遊ぼうか。』
『うん。いいよ。』
なんだか、楽しい。




