第6話 障害対策チーム
テレパシー6 障害対策チーム
事件当日。
ポン
運用チームの監視端末から警告音が鳴った。
端末の前にいた仙台が眉を顰め、立ち上がって上司のデスクに向かう。
「宮城さん、サーバー03のアウトバウンドが異常に跳ね上がっています」
「サーバー03だけか?」
「はい。帯域を圧迫するレベルです。サイバー攻撃かと思ったんですが……」
「確認しよう」
宮城は立ち上がった。
「石巻さん、サーバー03に不正アクセスの痕跡がないかログを見てくれ」
「了解です」
石巻が検証AIを立ち上げ、サーバーの通信ログをスクリーニングする。
「……不正侵入の痕跡はないですね。ただ、サーバー側から特定のユーザー群へ、大量のデータが一方的に送信されています。今日、何か大型のイベント配信ありましたっけ?」
「ないはずだ。一体何のデータを送ってるんだ?」
「ええと……画像や動画じゃないですね。シミュレーション用のデータ……?」
「どういうことだ?」
「わかりません。バックグラウンドで計算プログラムが走っています。詳しく解析します」
「頼む」
画面を眺めながら、石巻の体が前のめりになっていく。
「……これ、単一の計算じゃないです。小さなシミュレーションのパラメータを何千パターンも並列で回して、中央に結果を集約しようとしています」
「何千パターンのシミュレーション? ……一体何を計算しているんだ?」
「ええと……ファイル名からは、わからないですね」
「開発に問い合わせよう」
「了解です」
石巻は社内端末を手に取った。
◇
その日の夕方、お客様サポートセンターに、問い合わせが増え始めていた。
「ダイブした娘が目覚めない。連絡も受け取らない」
「ダイブ中の家族に連絡が繋がらない。体に触れても反応しない」
「ビジー状態で友人が長時間動かない」
「道で止まっている人がいる」
「いまさっき話していた人が急にビジーになり二時間以上動かない」
……
外部からも『テレパシー』内部からも同様の報せが届いており、その勢いは止まることを知らなかった。
◇
「大量の脳端末者が長時間ビジーになってる?」
程よい暗さが保たれている廊下で、青森は足を止めず、隣に合流した弘前の顔を見た。
「はい。 お客様問い合わせセンターに寄せられた問い合わせを解析しました」
障害対策部には、昼間からサーバーに異常な負荷がかかっていることが伝えられていた。
不正アクセスの痕跡は認められず、開発部はその負荷を発生させているプログラムに心当たりがないとのことだった。
「対策本部を立ち上げよう」
「了解です」
「現地調査もしたい。弘前さん、ダイブできる?」
「了解です」
弘前と別れた青森は目的地を自分のデスクに変えた。
◇
『テレパシー』にダイブした弘前は、街のそこここで彫像と化したアバターを確認した。
思っていたより数が多い。
頭上の表示は全てビジー。
触れても応答なし。
チャット欄で話題になっている。
弘前は何人かの様子を動画に撮って帰還した。
◇
速やかに立てられた大量ビジー対策本部には、『テレパシー』にダイブした社員から、脳端末者がビジー状態で固まっているとの報告がなされた。
本部ではサーバーに負荷をかけているシミュレーターを強制終了することが決まった。
強制終了を行う前に、脳端末への影響を検証する。
検証には時間がかかりそうだった。
対策本部に配属された山形祐太郎は検証結果が出るまでに夕食を済ませておこうと同じく対策本部に配属された仙台に声をかけ、席を立った。
仙台がもう一人の本部員、十和田に声をかけているのを背中で聞きながら部屋を後にした。
◇
祐太郎は食堂で壁を背にする席に座った。
トレイの上にはサンドイッチとカフェオレが乗っている。
プライベートで使用しているスマホを取り出し、『テレパシー』にログインした。
手のひらサイズの小さな画面に文字が浮かぶ。
おかえりなさい
ユタ




