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第18話 藍玉VSミルレリアン、セナ&アインVSコルレリス

 我はマスターたちと別れてから言われた通り西へと向かっていた。

 小型形態のままでだ。

 実大になると混乱が生じるだろうからな、それは我も望むところではない。

 それに、この小型形態でも下位悪魔ごときには遅れをとることなぞないしな。

 そんなことを考えながら西へと数十分飛んでいただろうか。

 ふと魔力を感知して下を見ると魔方陣とその上に少女が座っていた。


「あれか」


 我は魔方陣へと急降下して、即座に少女の首を噛み千切ろうとしたその寸前に少女が跳んで我の攻撃を避けた。

 行動ができない数十分が経過してしまった様だ。

 行動できないうちに仕留められなかったのが悔やまれる。

 マスターに叱られるだろうか、いやそれはないな。

 我のマスターは思いやりがある。

 そんなのろけともとれることを考えているうちに少女は体勢を立て直したようだった。


「危なかった」


 少女は感情の薄い声色で小さく呟いた。


「貴方は誰?私はミルレリアン」


 少女は臆することなく我へと話しかけてくる。


「我は藍玉。貴様を殺す」

「無理、殺されるわけにはいかない」

「殺すさ、必ず」

「分かった、私も死にたくはないから」


 そう言ってミルレリアンはどこからともなく出した巨大な両手斧を片手で一つずつ持った。

 少女らしからぬ膂力の持ち主の様だ。

 ミルレリアンは斧の重さを感じさせない動きでこちらに向かってくる。

 我は近づくのを待ってやるほど優しくはないので自身の利を活かすため空に舞い上がる。

 そしてミルレリアンに次の一手を打たせることなく殺しきろうと|《多重詠唱》《マルチキャスト》で数百の魔方陣を構築、展開し|《魔素粒子砲》《エーテルバスター》を全魔方陣から一斉に放った。

 ミルレリアンは殺到する数百の魔素粒子砲に絶望の顔を浮かべて断末魔をあげることなく実に呆気なく死ぬこととなった。


「終わったか」


 魔素粒子砲が直撃した跡には何も残っていないのを確認すると我はマスターに言われた通り王宮に帰った。

 む、今マスターの反応が消えた?

 いや、別空間に転移したのか。

 まぁ、マスターなら心配はないな。 


      ††††††††††††


 一方こちらは南へと向かったセナとアイン。

 二人は他のパーティメンバーと違い、普通に人間なのでシンゴの様に驚異的なスピードを出せるわけでもなく、藍玉の様に飛べるわけでもないので、普通に走り回って悪魔を探していた。


「あ、セナっちセナっち、あれ怪しくなーい?」


 アインが指差したのはいかにもといった様子の廃寺院だった。


「こんなところに廃寺院なんかあったんすね」

「そだねー、見てみる?」

「はいっす」


 二人は頷き合うと意を決して廃寺院へと近づいていった。

 そしてあとは扉を開くだけ、というところまで来たところで扉から飛び退いた。


「っ!」

「?!」


 セナとアインが飛び退いた次の瞬間扉が上下に真っ二つに切り裂かれて崩れ落ちた。

 あと一瞬でも二人が飛び退くのが遅れていれば二人の体も扉と同じ状態となっていただろう。


「避けられてしまったか」


 もうもうと立ち込める煙の向こうから現れたのは右手に反りのついた片刃の細長い剣と左手にその剣の鞘と思われるようなものを持って、青と白を基調とした珍妙な服を来た片目の男だった。

 いわゆる刀と袴である。


「して、そなたたちは何者だ?」

「セナっす」

「アインだよー」

「我はコルレリスだ。ふむ、何用だ?」

「君を止めに来たんだよー」

「そうっす」

「我を、殺すと?」


 そう言ってコルレリスは殺気を全開にした。

 殺気にあてられた二人は言葉を発せずただ息を飲むことしか出来なかった。

 しかし、唐突にふっと殺気が止んだ。


「気絶はせず、か。それなりの力量はあるようだ、どれ殺ってみるか?」


 コルレリスがそう言った次の瞬間一足踏み込んで刀を振るった。

 セナとアインは咄嗟に武器を取り出し防御したが、何分咄嗟の事だったので上手く防げず吹き飛ばされて廃寺院の壁に叩き付けられた。


「ガッ」

「カハッ」


 壁に叩き付けられた二人はズルズルと地面に落ちて着地した。


「構えぬと死ぬぞ」


 しかし、二人が着地した一瞬後にはコルレリスがアインの目の前にいてまた防御が完璧でないまま攻撃を受けることとなった。


「ぐぁっ」

「アインさん!」

「他人より自分の心配をしたらどうだ」


 コルレリスはアインを打った後返す刀で俺を攻撃してきた。

 しかし今度は俺の防御も上手く行き、数メートル押されるだけですんだ。


「俺だって、強く、なってんすよ!」


 俺はそう叫ぶと双剣を振り抜いてコルレリスを数歩後退りさせてその隙に距離を取ると、双剣に(オーラ)を纏わせて振るった。


「アルクゼオ流双剣術・迅の型《飛剣》!」


 セナは昨日王都にある双剣術の道場に行き稽古をつけてもらっていた。

 そこで分かったのが、セナには才能が有るということだった。

 気の量然り、気の扱い方然り、双剣の扱い方然り、足の運び方然り。

 セナは双剣に関することにおいてのみ一教えれば十理解するような、そんな頭の構造をしているのだった。

 そして、セナは才能が才能に物言わせアルクゼオ流双剣術の中伝にまで一日で至ったのだ。

 今使ったのは《飛剣》。

 気を使った剣術の中でも比較的ポピュラーな物で剣に纏わせた気を飛ばす、いわゆる飛ぶ斬撃というやつだ。

 コルレリスはそれを刀を使い防いだ。

 

「アルクゼオ流双剣術・迅の型《鎌鼬》!」


 今しがた使った鎌鼬は飛ばした斬撃を分裂させて斬撃の数を増やす手数に優れた技だ。


「ちぃっ、《十閃》!」


 対するコルレリスもただ刀で防ぐには足りないと感じたのか同じく剣術で対抗した。

 十閃はその名の通り十の閃だ。

 十閃は鎌鼬とぶつかり合うと互いに打ち消しあった。

 しかし、セナの攻撃はまだ続いた。


「アルクゼオ流双剣術・中伝奥義《四損龍牙》!」


 気を足に使って強化し、一瞬でコルレリスの懐に飛び込み、放たれる《四損龍牙》。

 正確に狙いを違わず放たれたセナの斬撃はコルレリスの計四つの手足を切り飛ばしたかに見えたが、コルレリスは一瞬前に体を捻り、左腕を切り飛ばされるだけで済んだ。


「くっ、がぁぁぁっ」


 しかし負ったダメージは大きく、続けて攻撃をしようとしたセナだったがコルレリスがそんなことを許す筈もなく、蹴り飛ばされてしまった。


「グッ」

「やってくれるじゃないか、甘く見ていたよ」


 コルレリスは腕を切り飛ばされて夥しい量の血を噴き上げながらもゆらゆらとセナの方に近づいてきた。

 セナは今までのダメージが蓄積されていたのか動くことが出来ずに地面に座り込んだままだった。

 そしてとうとうセナの目の前までコルレリスが来てしまった。

 コルレリスは腕を振り上げ、俺はは来るであろう痛みに目を瞑る。

 振り下ろされるコルレリスの腕。

 しかし、何時までたっても来るべき痛みは来なかった。

 なぜだろうと思い目を開くと、そこに居たのは左肩から右脇腹まで切り裂かれたアインだった。


「ぇ?」


 まだ辛うじて体は繋がってはいたが一目見て助からないとわかる怪我だった。

 俺は倒れてくるアインを受け止めると傍らに敵がいるのも忘れ必死に回復ポーションを飲ませ、傷口にかけた。

 しかし傷は治らず、それどころか溢れ出す血の量は増える一方だった。


「アインッ! アインッ!!」

 

 アインはポーションをかけようとする俺の手を止めるとフッと笑って言った。


「セナっち……無駄…使い、はダメ……ガハッ…だよ」


 血を吐きながらもアインは俺の手を話そうとしない。


「死ぬなよぉ、死なないでくれよぉ」


 俺は泣きながら回復ポーションの瓶を握りしめた

 分かっている、助からないって、無駄だって。


「でも、でもっ!」

「短…い、間……だった…けど、楽し……かった…よ?……だか、ら、ほら…泣かない……でさ……笑っ…てよ……」


 俺の手を止めていたアインの手から力が抜けてパタリと地面に倒れた。

 アインの体からは次第に熱が失われていった。


「アインッ、アインッ! アイィィィィィィ――ガッハッ」


 俺は忘れていた、近くに敵が居るのを。

 廃寺院の壁まで蹴り飛ばされてしまった。

 なにも出来ずに蹴り飛ばされて崩れ落ちる俺を、仲間を助けられなかった俺を嘲笑うかのように雨が振りだした。

 その雨は俺の涙を流し、俺の手に付いたアインの血を流した。

 コルレリスが近づいてくる音がする。

 

「死ね」


 俺はここで死ぬのか。

 アインと一緒に。

 ここで、アインが死んだここで。

 死ぬ?

 怖い、死ぬのが怖い。

 嫌だ、死にたくない。

 アインの分まで生きたい。

 嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!

 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないっ!

 殺す、アインを殺したこいつを。

 こいつを殺してアインの分まで生きる。

 殺す、殺す殺す殺すコロス殺すコロス殺す殺す殺す殺すコロス殺す殺すコロスコロスコロス殺す殺すコロスっ!!! 


「ガァァァァァァァァァァアアッッ!!」


 その怒りはセナの気を爆発的に膨れ上がらせ、近くにいたコルレリスさえ吹き飛ばした。

 セナの茶髪が次第に金髪になっていき、耳と尻尾が生えてきた。

 その出で立ちは伝説の霊獣、金獅子のようだった。

 俺は足に力を込めコルレリスの上空に飛ぶとそのまま回転しながらコルレリスの下に落下していき、踵落としを食らわせた。

 多分今ので肋骨が全て粉砕されて、肺も潰れただろう。


「俺の分っす」

「ゲハッッ! 」


 次はアインの分、俺はそう呟くと右手を手刀の形にし、気を纏わせて一気にコルレリスの体を上半身と下半身に切り分けた。


「これが、アインの分っす」


 俺は綺麗に真っ二つに切り分けられて切り口から血と臓物を溢れ出させている、コルレリスだったものに向けて呟いた。

 そして俺はふらついて雨に濡れてぐちゃぐちゃになった地面に倒れた。


「あ、れやばいっすね。立てないっす、帰ん、ないと、いけないっすのに……」


 そうして俺は気を失った。

感想待ってますっ!

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