第91話 無気力の中のやる気
一方そのころ……
「おい、みんなどうするよ……」
デウスにより大きな決断を迫られた新入生は悩み戸惑っていた。
「俺はやらねぇぞ! こんな茶番に付き合ってられるかっ!!」
「でも参加しないと退学だって……」
「たかが入学のために命なんかかけてられるかよ! ……ったく、フォールテム学院を卒業したらエリート街道まっしぐらだっていうから、貴族の俺さまがわざわざ金積んで入学してやろうとしたのにな」
「……裏口で入ったの?」
「う……うるせぇ! とにかく俺はやらねぇぞ! じゃあな!!」
裏口から入学しようとした貴族の息子は悩むことなく会場を去っていった。
その後ろを付いていくように数人の新入生が会場を後にした。
「結構帰ったね……」
ステラは他の新入生の会話や実際に帰る姿を見て、少し悲しくなった。
(私は意地でもこの学院で強くなって……神剣を扱えるようにならなくちゃいけないのに……)
ステラは焦っていた。このままみんなの士気が下がり続ければ、ただでさえ低い合格の確率がもっと下がってしまう。そうなると入学が出来ず、病気の身でありながら神剣を振るい続ける父親から神剣を受け継ぐのが遅れてしまい、父親の身が危ない……と。
(だめだよ……みんな、がんば……)
「みんな頑張ろう! ここで怖気づいちゃだめだ。一緒に戦おう!!」
弱気になっている全員の心を奮い立たせるような声があがった。その声の主は……ディスキだった。
「なんだてめぇ! 問題起こしておいて頑張ろうだと!? ふざけてんじゃねぇぞ!!」
「そうよ! あなたに何ができるっていうのよ!!」
当然のように反発があがる。しかしディスキは諦めなかった。
「俺はあの人たちと戦っている! 戦っているうちに、神のような力をもつあの人たちにも弱点のような部分があったんだ、聞いてくれ!」
ディスキはデウスたちと戦った時のことをみんなに話した。
「確かに……そうだった気がするな」
「私もそう思うわ」
デウスとともに戦ったトニトルスとステラもディスキの意見に賛成した。
そして……残った新入生たちの顔に闘志が浮き出てきた。
「だったらその弱点だけをつけば……」
「一度くらいは攻撃が通るかもね!」
「ケガしても死んでも元に戻るんだろ? だったらやれるだけやろうぜ、みんな!!」
「そうだな! みんな、学科に分かれて時間まで作戦会議といこうぜ!」
新入生たちはさっきまでが嘘のように生き生きとして作戦会議を始めた。その様子にディスキとトニトルス、ステラは顔を見合わせて笑った。
「思ったよりも残ったな」
解散から一時間後、会場の第三演習場に戻ってきたデウスたちの目に映ったのは、やる気に満ちた新入生たちだった。
「先生。私たちは負けるわけにはいきません。絶対に一泡吹かせてみせますからね!!」
「そうか、楽しみにしているぞ」
思いのほかやる気満々の新入生にデウスは少々面食らっていた。
「ねぇみんな、どうしてそんなに楽しそうなの?」
フィリアがデウスの感じている疑問をぶつけた。
「よくよく考えたら……死んでもケガしても大丈夫という破格の条件で英雄のパーティの方々や剣姫さまと戦えるなんて、こんな機会滅多にないですからね!」
「それに僕たちは一人じゃないんです! みんなで力を合わせて……先生たちに全力で挑みます!!」
新入生たちの熱い気持ちをぶつけられたフィリア。今まで生徒を痛めつけるというやり方に後ろめたさがあった。自分が国王に勢いで提案してしまったため、撤回もできずに当日になってしまった。……しかしそんな後ろめたさも、やる気に満ちた生徒たちを前に消えてなくなった。
「わかったわ! そんなにやる気なら私たちも覚悟を決めなきゃね! みんな、大けがしても死んじゃったとしても恨まないでよね!!」
「はい! よろしくお願いします!!」
「それじゃあ魔法科から始めるぞ。魔法科は残って他は観客席に行ってくれ」
デウスの指示によって、魔法科の新入生とデウス、フィリアを残して他は観客席に移動した。
「フィリアったら、覚悟決めるっていいながら恨まないでねって……覚悟決まってないですわよきっと」
「そうですね。でも本気には本気で応えないとだめですよね」
「彼らのためにも、私たちも頑張りましょう」
ルナ、フェリス、ティアも彼らの熱意に心が決まったようだ。
「……時間遡行結界は施した。 それでは模擬戦……開始!!!」
審判のレガティスにより開始の合図があった。参加を決めた時点で合格になっているとは全く知らない新入生とデウスたちとの戦いが始まった。




