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第92話 作戦通り


「行くぞっ! みんな!!」

ディスキの掛け声で魔法科の新入生がおのおの魔法を唱え始める。

その魔法の内容は……


「燃え盛る命たる炎の粒子よ

熱気をまといて敵を撃て 火の弾丸(ファイアブレット)!!」


「生命の根源たる水の粒子よ

冷気をまといて敵を撃て  水の弾丸(ウォーターブレット)!!」


2種類の弾丸系魔法がデウスとフィリアに襲い掛かる。


「神眼・氷華!」

「霧散しろ」


瞬く間に弾丸は凍り付き、抜けたものもデウスにより無効化された。


(よし、これでいい……)

ディスキは笑みを浮かべた。初動は作戦通りだった。


「みんな! 次だっ!!」

ディスキの掛け声によって別の新入生が詠唱を始めた。


「母なる大地の変動よ

大地のすべてを震わせよ 地震(アースクエイク)!!」


「おっとっと」

「地震? かな?」

会場が揺れに襲われた。……とはいっても威力は低い。デュオが戦いのときに作ったゴーレムが歩いたほうがよっぽど揺れるだろう。

しかしそれは新入生もわかっていた。目的は……意識を地面に向かわせること。


「よし、もう一回だ!!」

水魔法を使う受験生が合図をすると、再びファイアブレットとウォーターブレットの詠唱が始まった。


「ありゃりゃ……懲りないね。デウス、そろそろ私たちからもやっちゃう?」

「そうだな、そろそろ……危ない! 霧散しろっ!!」

デウスはかすかに後方から電気の音が聞こえ振り返ると、数本の雷光(ライトニング)が見えとっさに言霊で消滅させた。……かに思われた。


パキン……


「えっ……?」

フィリアの右腕辺りから何かが割れた音がした。

それは間違いなく……フィリアの防壁(プロテクション)が傷ついた音だった。








「みんな、聞いてくれ。まずデウスさまだが……恐らく魔法は使えない」

魔法科の作戦会議でディスキはこう切りだした。ディスキはデウスの秘密になんとなくだが気づいていたのだ。

「魔法が使えないって……どういうこと?デウスさまは魔導師よ?」

「そうなんだが……火や水のような属性魔法が一切見られなかった。無属性の支配魔法だったとしても、魔法が使える魔導師が他の効果的な属性魔法を無視して支配魔法だけを使う理由がない。さらに……」

「さらに?」

「デウスさまは力を使った後、目に見えて疲労していた。あの疲労のしかたは間違いなく魔力の欠乏からくるものじゃないんだ。だからこの弱点をつく」

「なるほど……具体的には?」

自分で考えず質問ばかりしてくる同級生にディスキは若干イラっとしたが、そうも言っていられない状況だけに話を続けた。


「弾丸系魔法が使える火・水の属性の使用者で開始直後にたくさんの魔法をぶつけるんだ。消すべき魔法が多いほどデウスさまの疲労も多いはずだ」

「フィリアさまの神眼は……? デウスさまに届く前に凍らされちゃったらどうするの?」

「フィリアさまのあの力は……恐らく連発できない。 ファイアボールを消すために使った後、俺を捕らえるときに氷魔法を詠唱していたからな」

「あなた……暴れん坊の馬鹿だと思っていたけど意外と頭いいのね!」

「うるせぇよ。みんな、初動の作戦はこれでいいか?」

「あぁ、初動はお前の作戦でいこう。その後は……土魔法の地震で注意をそらしてその間に攻撃するのはどうだ?」

ディスキ以外に初めて新入生が意見を出した。


「そうね。ただ威力は低いから……注意をそらせるのはほんの一瞬よ?」

「十分だ。その間に雷魔法の雷光をぶつける。恐らく雷魔法は音でバレるだろう。そうなるともちろん……雷魔法も囮だ。本命は……」

「音も少なく、視認しにくい魔法……風魔法ね」

「あぁ。うまくいけばこの作戦で傷の一つくらいはつけることができるはずだ。みんな、頑張ろう!!」

「「おーーっ!!!」」







「驚いたな。まさか魔法を当てられるとは」

「ほんと、油断したわぁ……」

デウスもフィリアも心から驚いている。入学試験で醜態ともいえる超低レベルな魔法を披露していた新入生たちにまさか攻撃をもらうとは思っていなかったからだ。


「デウス先生! じゃあ僕たちは……」

ディスキがキラキラとした目でデウスとフィリアを見る。


「まだだ。よく見てみろ。防壁は傷ついているがフィリアは傷ついていない。合格の条件は僕たちに傷を付けるか触れるかだったはずだ。まだ終わってないぞ?」

「……そんな! ずるいですデウスさま!!」

新入生からブーイングがあがった。しかしデウスはそれを一言で黙殺した。


「ずるいだと? お前たちは皮膚の固い魔物に攻撃が通らなかったとき、その魔物に対してずるいと、そういうのか?」


「……っ」

新入生は黙り込んでしまった。間違いなく正論だったからだ。


「なんだ? 諦めるのか?」

デウスは新入生たちを煽った。無論、嫌がらせをしているわけではない。折れかけの心を奮い立たせようとしているのだ。


「……まだです! まだできます!!」

「そうよ! まだまだこれからですっ!!」

デウスの読み通り、新入生は折れることなく立ち上がった。


(デウス……煽ってやる気にさせるなんてさすがね。でも私を皮膚の固い魔物に例えるなんて……後で怒ってやるんだからっ!)

真剣な表情のデウスと新入生、ふくれっ面のフィリアは改めて戦いに挑むのだった。


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