第86話 雷精と抜刀術
「来たか、成り上がり貴族め」
「ひどい言われようだな」
「事実を言ったまでだろうが!! そして何より……よくも俺の父さんを殺してくれたな……」
「言いがかりだ。僕は何もしていない。お前の父親が処刑されたのは自業自得だ。その父親の自業自得の恩恵を受けていたはずのお前自身にはお咎めなしなんだ。国王さまに感謝するんだな」
「……んだと!? てめぇ……国王に気に入られているからって調子にのるんじゃねぇ!!」
ディスキがデウスの煽りを真に受けて激高した。そして……
「ぶっ殺してやるっ!!!」
ディスキの両手首が鈍い赤色に光った。
(あれがこの力の原動力か……?)
デウスは無駄にディスキを煽ったのではない。神経を逆なでし怒らせることで魔法を使わせ、異常な魔力量を生み出している原因を探っていたのだ。
「ぐっ……ああああ!!!」
ディスキが苦しむような仕草をみせながら叫んだ瞬間、デウスたちの周りを囲うように…50は超えるであろう魔方陣が形成された。
「死ねっ! 炎の槍!!」
「霧散しろ」
パリリリリリリン……
50を超える炎の槍が魔方陣ごと消えた。初めて見る光景にトニトルスもステラも、……そして何よりディスキが驚いた。
「なんだ……なんなんだよお前はっ!?」
「知っているだろ。≪神々の代行者≫のデウス=ヌーミネだ」
「くっ……こんなの……認められるかぁあああ!!!」
ディスキの両手首がまた妖しく光った。次の攻撃が来る。
「トニトルス! ステラ! お前たちの実力を見たい。手荒でいい。手足を切り落としたって構わない。2人だけであいつを止めて見せろ‼」
「わかりました!」
「はいっ!!」
トニトルスとステラは返事をしてすぐ動き出した。
その間にディスキの火球の魔法陣が20以上構築されていく。
「雷精よ 我が身に集いて 力と為せ」
トニトルスが呟くと、周りを漂っていた数体の雷精がトニトルスに集まった。そしてそれぞれが放電し、それはまるでトニトルスが雷をまとっているようだった。
「いい加減に死ねぇえ!!!」
間もなくディスキの火球が3人を襲った。
デウスは自分に向かってくる火球を言霊で消し、トニトルスとステラを見ていた。
ビリリリッ……ビリリリ………
放電している雷精をまとうトニトルスは火球が飛んでくるのを確認した。
(今だっ!)
フッ……バチチチチチ!!
「ぎゃああああ!!!!」
雷精をまとうトニトルスは瞬間移動に近い速さでディスキに触れ、感電させた。それは地を駆ける雷そのものであった。
「剣技 縮地」
前かがみになり柄を右手で握ったステラはギリギリまでディスキの攻撃を引き付け、縮地によってディスキの背後まで移動した。それはフィリアの瞬間移動を彷彿とさせる動きだった。
ステラが背後をとったちょうどその時、トニトルスによってディスキが感電し動けなくなっていた。
(もらった!!)
ステラは左手で鯉口を切った。そして……
「剣技 抜刀術 峰打ち」
ステラの抜剣の領域内にいるディスキ。剣を抜かれたことさえ気づかずにゴキッと自分の左腰の骨が砕ける音だけが聞こえた。
「がぁあああ!!!」
どさっ……と倒れ込むディスキ。ステラはその首元に剣をあてがい、その周りを雷精が漂っている。
「よくやったな。お前たち」
「使用者の血液? ……って、なんでルナがそんなこと知ってるの??」
フィリアがルナに問いかけた。
「あいつが使っている効果付き武具。……あれは血塗られた腕輪というものですわ。
私が魔法が使えずに苦しんでいる時にお父さまに頼んで貸して貰いましたの。…まぁそもそも魔力が無くてなにも起きなかったのに、代償の血液だけはごっそり抜かれましたのよ……。早くやめさせないと命にかかわりますわ!!!」
ルナが過去を思い出し俯きながら話した。そして顔をあげた時…
「えっ……?」
「あー……なんか終わってるみたいだね!」
ルナたちの目には、2人の生徒に完全に制圧されているディスキとそれを見ているデウスが映っていた。




