第67話 一人の神
「それじゃあ……ね」
インウィディアがルナの頭を撫でて、デウスの方を見た。
「話は終わったわ。デウス、国王さまを蘇生してちょうだい」
「いいのか? そのために自分が死ななければならないんだぞ?」
「いいのよ。最後に私の想いをフォルトゥナに伝えられたから。未練はないわ」
「嫌……お母さま! 死んじゃ……」
ルナがボロボロと涙を流しながら訴える。デウスには辛かった。インウィディアを殺せば、デウスはルナの両親をそれぞれ殺したことになる。
しかし……国王を生き返らせるには、それしかなかった。
「済まないな……王妃さま。ルナ。国王さまを蘇生するため……」
デウスが王妃を殺すと決めたときだった。
「デウスーっ!! 無事か!?」
遠くから……イークウェスが走ってきた。人力車のように檻を引いて。
檻の中には数匹の魔獣がいた。
「イークウェス! そっちこそ無事だったのか! よかった」
「デウス! お前たちが戦ってるって聞いて、俺たちは避難誘導しながら魔獣を頑張って生け捕りにしてきたんだ! お前の力の足しに……って、え? 終わってるのか?」
イークウェスが目の前の光景を見てポカンとする。
「いいや、まだ終わっていない。国王さまを生き返らせなければならないからな。ありがとう、イークウェス」
「国王さま……? 国王さま! 亡くなってるのか!?
頼む、デウス! 俺を生き返らせたように国王さまも……」
「そのつもりだ。連れてきてくれた魔獣、使わせてもらうぞ」
そういうとデウスは魔獣が捕らえられている檻にむかい、ナイフで倒していった。
魔獣たちの霊力はデウスに吸収され、デウスの霊力が回復していく。
(神懸りをするには足りないが……でも寿命を削ればなんとか……)
デウスが国王の横に膝まづいて右手をかざし、祝詞を捧げはじめた。
「かけまくも畏き 黄泉の支配者たる黄泉津大神
主よ 我は主の分霊たりて主に仕えしものなり
我願う 脆弱なる我が身に 主の力を分け与えたまえ」
天からの光がデウスの手に優しく注ぐ。
「神懸り 伊邪那美命
権能 黄泉がえり」
デウスの手と女神の光の手が重なったとき、デウスの右手がまぶしく光った。
その光は優しく国王の亡骸をつつんでいった。
(頼む……上手くいってくれ……)
デウスは祈る気持ちで国王を見ていた。
「……っあぁ!?」
国王がガバッと飛び起きた。伊邪那美に追いかけられたのだろう。デウスとイークウェスが顔を見合わせ安堵した表情で笑いあった。
「お父さまっ!!!」
ルナが起きたばかりの国王に飛びつく。
「ルナか! ……ということは」
「はいっ! 悪魔たちは倒しましたわよ!!」
「そうか、頑張ったな!!」
「……えへへ」
ルナはお父さんに褒められて素直に照れている。
「よくやったわね、デウス。お疲れ様」
「さすがです、デウスさま」
「ほんと……あなたの能力、一体何なのでしょうね」
フィリアとフェリス、そして王妃が声をかけた。
「デウスよ。よくやってくれたな」
「国王さま……戻ってこられて何よりで……す……」
ドサッ…… デウスはその場に倒れ込んだ。
「デウスっ!!!」
「大丈夫じゃルナよ。疲れただけじゃろう、寝かせておきなさい。それにしても……本当にやってのけるとはのぉ。不思議な子じゃな」
国王はデウスを見ながらそう言った。国を、民を救った、不思議な力を持つ少年。国王にとってデウスは……一人の神のように思えた。
長すぎる夜は明け、王都は朝日に照らされていた。




