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第58話 神懸り 大国主命


「ルナっ! 大丈夫かっ!?」

飛び込んだデウスの目に映ったのは、血だらけで倒れるルナとその横にへたり込む王妃だった。


「てっめぇ……」

デウスから霊力が燃え上がる。その白い炎はこれまでの比ではない。


「なんと……王妃よ……。これは……」

王さまは呆然としている。


「あは…あはははは! これはこれは国王さま! どうです? 私の本性を知ったお気持ちは!」

「やはり……《嫉妬》の加護を持つお前を王妃にしたのは間違いだったのか……?」

「……なぜそれを……。隠していたはずなのに……」

「お前の事を愛していたからの。それくらいの隠し事など知っていて当然じゃろ」

「……嘘。そんなの嘘よ! あなたが愛していたのはマーテルだけだったくせに!!」

「いいや、ちが……」

「ネームレスたちよ! 国王もろともこいつら全員殺しなさい!!」


王妃は国王の話など聞く耳すら持たずに殺すことを命令した。王女フォルトゥナを手にかけた王妃に怖いものはなく、止められる者は誰も居ない。

……ことはなかった。




「王妃以外全員死ね」


ドクン……


バタバタバタ……と9人のネームレスと思われる者たちの死体が転がった。


「ぐあぁ……ゲホッ……」

9人に対し死ねと言霊を使ったデウス。反動が少ないはずもない。

舌に貯めていた霊力は枯渇、自身の霊力もほとんどを削りネームレスを虐殺した。デウス相手に抵抗すら許さずに。


「なに……? なんなのよあなた!! ネームレスを……ネームドも2人いたのに……」

「うるせぇ黙ってろ」

「……っ」


デウスは王妃を無視しルナの元にかけよる。

ルナは……まだ死んではいない。が、あと数秒で死ぬだろう。

(黄泉がえりは……まだよく分からない、不確定すぎる。もし生き返らせることが出来なければ……)


デウスは高速で考えを巡らす。最善の行動は? ルナを護るための……最善の……


「死なせはしない……死なせないぞ! ルナっ!!」


意志を固めたデウス。再び霊力の炎が吹き出した。

霊力の基は……自身の生命力。すなわち魂。




「かけまくも(かしこ)き 医療の神 大国主命(オオクニヌシノミコト)

(しゅ)よ 我は主の分霊(わけみたま)たりて主に仕えしものなり

我願う 救うべき者を救えぬ無力な我が身に 主の力を分け与えたまえ!!

死にゆく弱き主が子に 救いの御手を……」


デウスの霊力のこもった祝詞は天空へと捧げられ、デウスに光が差す。


「神懸り 大国主命(オオクニヌシノミコト)

権能 医療神(いりょうしん)御手(みて)!!!」


デウスの両手に光が宿る。その両手には、デウスの背中に浮かぶ男神の御手が重なっていた。

デウスの両手の光に包まれたルナの傷は癒され、何も起きなかったかのように綺麗な状態に戻った。


「……ん? デウス私……生きてるの……?」

「あぁ……そうだ……遅くなって……済まなかったな……」

限界を迎えたデウスはぜぇぜぇと息を切らして倒れ込んだ。

そんなデウスにルナが抱きつく。


「ありがとうデウス! 助けてくれて……やっぱり私は《幸運》のフォルトゥナね!!」

「そうだな……ルナ、ちょっと横にしてくれ……」

「ご……ごめん……!」

ルナはデウスを横にした。



「どうして……なんで? せっかく殺したのに……」

王妃は動揺を隠せなかった。その動揺は……やがて嫉妬へと変わる。


「どうして……どうしてあんたには味方がたくさんいるのよ!? どうしてそんなに大事にしてもらえる!? 私とあなたは何が違うっていうの!?」

王妃が手を握りしめる。そして……


「黒より暗き闇より(いず)る悪魔よ 人間の負の感情 ここに多くあり

願わくばその心の闇を具現化し 弱き人間に代わり憎しみを晴らせ

さすればその身 汝に与えん!!」


王妃が詠唱を始める。霊力が枯渇した今のデウスにそれを止める手段はない。

詠唱を聞き、国王が震える。


「インウィディア……お前それは……禁術・悪魔召喚……」

「えぇ! もう国も民も何もかもどうでもいいですわ! 私以外みんな消えて無くなってしまえばよろしいのよ!!」


王妃の前に黒い召喚陣が浮き出し、黒い邪気に纏われた人型の何かが召喚された。

その何かに……デウスは見覚えがあった。


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