第53話 フレンドリーな国王さま
広場に移動中。
「ルナ、国王さまなんか楽しそうだね!」
「……えぇ、お父さまは精霊である霊獣が大好きで、暇な時は趣味として霊獣の研究もしてるのですわ。だから今日だけで神獣クラスの霊獣に2匹も会えると思ってワクワクしていますの!」
「そうだな。僕もペガサスや地帝龍を見た時は驚いてワクワクしたからなぁ」
「それにしても国王さま、子どもみたいに楽しそうだね!」
「子どもみたいで悪かったなぁ、フィリアよ」
フィリアの一言を聞いた国王さまはフィリアの顔を覗き込む。
「も……申し訳ございません国王さま! ご無礼をお許しください!!」
フィリアがペコペコと頭をさげる。それもそうだろう。場合によっては不敬罪だ。
「よいよい、もうお前たちの前で偉そうぶるのも疲れてきた頃だしな。お前たちも気軽に接するが良い」
「えっと……努力致します、国王さま」
「お前たちはフォルトゥナの数少ない友だちなのだ。皆がおる前では国王さまと呼ぶべきだろうが、我々しか居らぬ時はレックスおじさんと呼ぶがいいぞ」
「……え?」
思いがけないフレンドリーさを出す国王にデウスとフィリアは困惑した。
それをよそに、フェリスは顔を強ばらせている。今にも吐きそうな様子だった。
「大丈夫だフェリス。みんな応援してるぞ。国王さまも別にフェリスを脅しているわけじゃないんだからな」
「……えぇ、そうですよね」
「そうだぞフェリスよ。余はお前の契約したという地帝龍が見たくてたまらないであるぞ。……それとデウス、余はレックスおじさんだぞ」
こくお……レックスおじさんもフェリスの緊張を解こうとしている。
「みなさん、広場に着きますわよ!」
ルナの声で顔をあげた時、王宮内とは思えないような広くて整備された広場が見えてきた。
花壇の花の香り。噴水の水の音。気を抜いたら寝てしまいそうな雰囲気だった。
「それでは早速だが……フェリス見せてくれるな?」
「はい、わかりました」
フェリスが左手を前に差し出し、精霊召喚術を唱え始める。
「神聖なる聖域に住まう霊獣よ 今、時は来た
永遠の盟約に従い 我が声に応えよ
汝 フェリスの名のもとに顕現せよ
霊獣召喚 地の神獣 地帝龍!!」
フェリスの左手の契約印から溢れる精霊力の光は大きな龍を形どり、轟音をたてて広場を埋めるほどの大きな岩の龍が召喚された。
国王さまはこれでもかと興奮している。
「すごい……すごいぞフェリスよ!! こんな立派な地龍は初めて見たぞ!! これが地龍のなかでも最上位、地帝龍というものなのだな!! ……マーテルにも見せてやりたかったのぉ」
(マーテル? 誰だ?)
デウスは疑問を感じたが、何も口にしなかった。
地帝龍はフェリスに頭を近づける。フェリスは地帝龍の頭の上に飛び乗った。
「おぉ! 地帝龍の頭の上に! いいのぉいいのぉ……!」
「お父さま、少しは興奮をおさめてくださいまし!!」
「いいんじゃルナ、ここには心の知れた者しかおらぬからのぉ! いいんじゃ……」
急に国王の声量が小さくなる。
「あれ……おかしいな……」
「ほんとね……急に眠気が……」
「眠気が……おさえられないですわ……」
「ちょっと地帝龍、落ち着きなさい……」
デウスたちは正体不明の眠気に襲われ、意識を失った。
広場に漂う花の香りと水の音は、彼らを眠りへといざなったのだった。




