第44話 フォルトゥナの過去
「……びっくりしたぁ何が起きたのかしら?」
ルナが目をあけると、周りが……光に包まれている……?
(えっ、ここどこですの!?)
ルナはキョロキョロしながらパニックになった。
「ちょっと!! ここどこよ! デウス! フィリア! 私はここですわよー!!!」
「……落ち着きなさいなフォルトゥナよ」
「!?」
突然後ろに現れた女性にルナは盛大に驚いた。おそるおそるゆっくりと振り返るルナ。そこには丁寧にケアされているのである美しい金髪をくびれあたりまでスラッとおろしている女性がいた。その右目はエメラルド色、左目はサファイア色をしており、その綺麗な宝石のような瞳にルナは美しさと不気味さを感じた。
「あなたは……?」
「名乗る前にあなたに聞きたいことがあるの。答えてくれるかしら?」
「え、えぇ……なんでしょう?」
(ちょっと不気味ね……何者かしら……でもこの状況を作ったの、この人よね?)
ルナは不安がりながらも目の前の女性の機嫌を損ねないように答えることにした。
「あなた、魔法が使えないのでしょう?」
「……っ」
「そしてそのことで辛いめにもあってきましたね」
(どうして会ったことの無い人にまでそのことをつつかれなければならないの……)
ルナの心がチクチクと痛みだす。思わず右手で左胸をおさえるルナを見ながらも、女性は話を続けた。
「……もしあなたが魔法を使えたら? そしたらその力をどう使うかしら?」
「私が……魔法を……?」
ルナは答えに戸惑った。自分が魔法を使えたらなんて考えたこともなかったから。いや、正確には考えたくなかったからだ。
「どうしてご存知なのかは分かりませんが、私には魔法が使えません。考えるだけ無駄だと思いますが」
ルナが手を握りしめて、震える声で答えた。
「フォルトゥナ。そのような答えが聞きたいのではありません。もし使えたら、あなたは魔法をどのように使っていきたいか。それを聞いているのです」
改めて聞いてくる女性に対し、ルナの我慢が限界を迎えた。
「魔法が使えたら! どんなにいいことか!! 魔法さえ使えれば困っている民を助けられる! 大事な人を守ることが出来る! あの時だって……愛する人を……死なせずに済んだのに……」
ルナは過去を思い出していた。2年前、婚約者だった恋人と旅行中に魔獣に襲われ、恋人がルナを守るために自ら死を選んだこと。何も出来ず、大好きな婚約者が自分を逃がすために無謀にも素手で魔獣に挑み、かじられ、切られ、食いちぎられているのを見ながらも見捨てて逃げるしかなかったこと。
……魔法が使えない自分を…心から憎んだこと。
「う……うぅ……ごめんね……アニムス……」
女性は泣き崩れるルナを見て、慰めるように語りかけた。
「フォルトゥナ。たくさん辛い思いをしてきたようですね。悔しいことも、たくさんあったことでしょう。
しかし、そこまで打ちのめされてもあなたの心は綺麗なままです。もし自分が力を得ても、自分のためでなく人のために使おうとする。力が無くても、それ以外で人のためになろうとする。
……そんな人間だから、創世神ファリアさまはあなたに幸運の加護を与えたのでしょうね」
女性の言葉にルナの耳がピクッと動いた。そして耳に残った言葉に頭の何かが弾けたルナは、堰を切ったように女性に感情をぶつけ始めた。
「何が……私のこれまでの人生の……どこに幸運があるのですか!! 幸運の加護なんて……きっと不運の加護の間違いですわ! 私だけではなく、周りの者にまで及ぶ不幸の数々……これを不運の加護と言わずになんと言いますの!?」
誰にも言えなかった本音を女性にぶつける。女性は顔色一つ変えずにルナの話を聞いていた。
「フォルトゥナ。それならあなたの人生は不運なことばかりでしたか?
どうしてあなたはここまで生きてこられたのですか? 何度も襲われ、どうしてあなたは死んでいない? どうして自分のことを強く想ってくれている人がたくさんいることに気づけないのですか? どうして……そのような人たちに出会えたことが幸運だと思えないのですか?」
フォルトゥナは女性の言葉にハッとした。
アニムスもイークウェスも……デウスもフィリアもみんな……こんな私を命をかけて守ろうとしてくれている。
みんな私を裏切るような人ではない。そんな人と出会えたことがどんなに幸運なことなのか。
「フォルトゥナ。ファリアさまの幸運の加護は、幸運に気づけば気づくほど効力を増していくのです。身近にある幸せなこと、運がいいと思うこと。小さくてもそれを残さず気づき、噛み締めなさい。いいですね?」
「はい……ありがとうございます!」
よろしい!と女性がうなずく。
「ところで……あなたは結局どなたなのですか?」
「あっ…失礼しました。私は創世神ファリアさまより生み出された大天使アイテールという者ですよ」
そういって背中から大きな白翼を生やすアイテール。いや、生やしたのではなく隠していただけだったのだろうが……。
そんな予想の斜め上の正体ににルナは驚きを隠せずにいた。




