第38話 小悪魔の天使 ルナ
「こちらがデウスさま、フィリアさま両名の部屋でございます」
謁見の間を出たあと、侍女さんにひとつの部屋を案内された。
そう、ひとつの部屋を。
「え……?」
2人は固まった。仲が良いとはいえ男女ですが……
「おふたりは婚約されていますのでしょう? 何が問題がございましたでしょうか?」
「婚約ぅ!?」
デウスもフィリアも王宮ということを忘れ大声で叫んでしまった。慌てて口元を手でおさえている。
「どうしてそんな話に……?」
「ルナさまの話では2人で仲良く旅をしていて、信頼関係は夫婦のようだったとか。
しかし名に誓ったときにフィリアさまはデウスさまのリーグレットの名まで言わなかったため、結婚前の婚約状態だろうと……」
なるほど。少しだけ納得した。
2人ともお互いを愛していることはアシッドタイガーと戦ったあとに確認済みだ。
「……まぁ仲はいいですけど婚約はしてませんよ!」
フィリアがきっぱり言う。少し傷つくデウスだった。
結局、2人は同じ部屋に住むことになった。部屋の中心にはそこそこ豪華なシャンデリアがぶら下がっており、部屋の隅までを照らしている。白を基調としたテーブルとイスは、冬の今の時期には少し寒そうに見える。……しかし大きな暖炉はテーブルやイスも含め部屋全体を温めていた。従者とは思えないほどの豪華な部屋だ。
ベッドは……ふたり用のが1つだけ。
(僕はソファーかなぁ……)
デウスは勝手に少し落ち込んだ。
「さーて、どうやって黒幕を捕まえますかねぇ……」
「そうだな。少なくとも相手はネームレスの実力以上の者たちを使えるだけの権力者だろうからなぁ」
「私がいますから権力については問題ないですわよ!!」
ドアから顔をひょこっと出したルナがしたり顔で言う。
「ルナちゃん!!」
「ルナ! いたのか!」
「いたのか! ですって。酷いわデウス……」
ぐすん……とルナが泣き真似をする。フィリアからの視線が痛い。
「デウスさんに泣かされました。デウスに撫でて貰わないと涙が止まらなそうですわ」
「そんなことあるのか!?」
「うぅ……ぐすっ……」
デウスは戸惑いつつもルナを撫でる。
「わーい泣きやみましたわ!」
「そ……そうか、よかったな」
ルナがかわいい。……のだが……
「ふんっ!!」
完ぺきにフィリアが拗ねた。拗ねてもかわいい。
「よしよし、そう拗ねるなよ」
「拗ねてないもん……えへへ……」
フィリアを撫でるとニヤけてご機嫌になった。
「それはそうとルナ、どうしたんだ?」
「用事がないと来ちゃいけませんの? 私の親衛隊ですわよね?」
「それはそうなんだが……」
「いいわよルナちゃん! ルナちゃんもいたほうが楽しいからね!!」
「ですわよね! 2人は婚約してるわけじゃないんですし私も一緒でいいですわよね!!」
ん……?とデウスとフィリアが顔を見合わせる。
「もしかしてさっきの侍女さんが婚約してるか聞いてきたのって……」
「ルナが聞いて来いって言ったの?」
2人の確信めいた疑問をぶつけられルナがかぁーっと赤くなる。
「だって……おじゃましたら悪いと思って……でも2人に会いたくて……」
「ルナちゃんかわいーっ!! いつでも来ていいからね!」
「あぁ、そうだな。でもノックくらいはしてくれよな」
「なんのことですのっ?」
てへっと誤魔化すルナ。
この国宝級の笑顔は必ず守り抜かなければならない。デウスは改めてそう思った。




