第36話 護るための試練
「動くな!!」
「虚無の理よりいずる壁よ
我らを包みて防壁となせ 防壁」
デウスがスタート直後に向けられた殺意のもとのネームレスたちの動きをとめ、フィリアは自分とデウスに防壁をかけた。
「姿を表せ」
デウスの言霊により、5人のネームレスが姿を現した。
(配置しすぎだろ……ん? 5人?)
姿を現したのが5人であることにデウスは少し違和感を感じたが、すぐに戦闘に集中した。
そして余裕のデウスに対し、ネームレスたちは何が何だか分からないという様子だった。
「僕らの前に集まれ」
ネームレスたちが各々の場所からデウスたちの前までゆっくりと集まる。それが例え国王の護衛として傍に控えていたネームレスであろうとも。
デウスに敵意を向けていた時点で、抵抗は許されない。
「フィリア、拘束は任せた」
「えぇ! 任されたわ!」
そういうとフィリアは集まったネームレスたちに両手をかざす。
「生命の根源たる水の壁よ 轟く雷鳴たる紫電よ
我が敵の道を塞げ
其よ 無慈悲な監獄たれ 氷の監獄!」
フィリアの両手から青色と黄色の魔方陣が浮かび、その二つの魔方陣が重ねられる。その瞬間、謁見の間に、冬の冷気とは異なる殺気立った冷気がそこにいる人々の肺を刺した。
そして……重厚な氷の監獄がネームレスたちを囲った。勝負ありだ。
「国王さま。終わりました」
「あ……あぁ……そうだな」
国王は見ている光景が信じられないとばかりに呆然としている。
それは初めてデウスとフィリアを見たルナと同じように。やはり親子だなと思った。
国王だけではない。王妃はオロオロとしており、姿勢よく整列していた兵士たちも目の前の状況を小声で周りと確認しあっている。
ルナだけがクスクスと笑っている。
「無詠唱魔法に……複合魔法……まさかここまでとは……」
驚きを隠しきれない国王にデウスは口を開いた。
「国王さま、1つお願いがあります。このネームレスたちに質問したいことがあるのですが、質問してもよろしいでしょうか?」
「あ、あぁもちろんだ」
国王はうわの空で返事をした。
それでは……とデウスは氷の監獄の前で問いかける。
「ユムリ村でルナを暗殺するように指示したのが誰か、知っているなら教えろ」
ざわついていた周りがしんとする。
デウスの体から霊力が白い炎のように溢れ出る。
怒りで感情が高ぶっているのだ。
「早く答えろ」
言霊にのせる霊力が更に濃くなった。が……
「知らない……そんなものは初めて聞いた……」
ネームレスの首の円状の痣はしまらない。おそらく本当に知らないのだろう。
国王はデウスの思いもよらない発言に耳を疑っていた。
「デウスよ……今のは一体……」
しんとした広間には、言霊を受けたネームレスの心音が響いていた。




