第31話 黒幕は?
「な……なんだこれは……! 身体が勝手に……」
「なんだこれははこっちのセリフだクソ野郎!!」
イークウェスは問答無用で侵入者を殴りつける。今にも殺しそうな勢いだったため、慌ててみんなでとめた。
侵入者は細身ながら鍛えられた身体をしており、キリッとした目はそれだけで人を斬れそうだ。
そんな侵入者にデウスが問いかける。
「お前は何者だ? 何をしに来た。正直に答えろ」
濃いめの霊力が浮かぶ。使用する霊力を濃くすることで強制力をあげたのだ。
ビクッとした侵入者は無理やり返答を強いられる。
「俺は……王宮所属の暗殺者であるネームレスだ…。そこにいる第2王女を暗殺する任務を遂行中だ…」
案の定暗殺者か、とデウスは思った。
「それは誰の命令だ?」
「それは……言えぬ」
「もう一度聞く、誰の差し金だ?」
デウスの霊力は溢れ出るほど濃いものだった。
「俺に命令したのは……王宮の……うがぁぁぁ!!!」
黒幕を聞き出そうとしたそのとき、暗殺者の首を囲うようにして浮き出ていた痣が光った。
その瞬間痣の円は暗殺者の首を締め上げるように狭まり、そのまま暗殺者は動かなくなった。
「今のは……?」
呆然とするデウスに、絶望とも取れるような暗い表情をしたルナが説明を始めた。
「この人はネームレスと言いましたわ……。ネームレスは、王宮所属の暗殺者部隊の名前で、その部隊の隊員は全てネームレスと言う名前になるのですわ。
ネームレスは暗殺者として動く一方、情報が流出しないように徹底されていますの。
組織名だけじゃなく個人名までネームレスとされるのも、名前から指示者などの情報をたどられないようにするためですわ。
そして一番の問題は……情報が漏れそうになったとき、首元の呪印で口封じのために殺されるのですわ」
王宮所属の暗殺者とだけはある。情報は時に命より重いということだろう。
(ん……? 待てよ? 王宮所属?)
デウスが感じた疑問点はフィリアも感じていたようで、フィリアがルナに問いかけた。
「王宮所属ってことは……王宮の人が……その……言いにくいけど、ルナに対して暗殺者を仕向けたってことだよね?」
ルナが俯いたままうなずく。今にも泣きだしそうだ。
何も言えなくなったルナの代わりにイークウェスが話を続けた。
「王女さまは王族であり、王位継承権第2位であり、魔法は使えないものの創世神さまより『幸運』の加護を頂いている。色々な面から王宮内にも敵が多いんだよ」
「そんな……じゃあルナが安心して過ごせる場所って……」
「まぁ、強いていえばお前たちと一緒に居る場所だな」
そんな……とフィリアは悲しい顔をした。
「そんなに悲しい顔をされないでください。今の私にはフィリアもデウスも、もちろんイークウェスだっているのですから!」
ルナの無理に作った笑顔をデウスは忘れることが出来なかった。そして彼女を守るのだと、そう心に誓うのだった。




