第30話 侵入者
……うるさい。眠れない。
「ごぐがががぁぁ!!!!」
イークウェスのものすごいいびきに、デウスは眠れずにいた。
(……ったく、明日は王都で疲れることが多いってのに)
デウスは若干のいら立ちを隠せなかった。
コンコン……
(誰だ、こんな夜中に……)
夜も更けているいうのに、こんな時間に来るなんで一体誰だろう。
ぎぃ……とデウスはゆっくりと少しだけドアを開いた。
そこには慌てた様子のフィリアと、恐怖心に顔を強ばらせたルナがいた。
「ちょっと話があるの……今すぐに。入ってもいいかしら?」
「デウス、お願いしますわ」
深刻な感じだったので、デウスはイークウェスに無断で2人を招き入れ明かりをつけた。
明かりに驚き起きたイークウェスは男の部屋に女性がいることにさらに驚いていたが、重たい空気なのを察し自ら黙って座った。
「時間がないから簡単に説明するわね。私が念の為に張った敵意探知っていう索敵魔法に一人引っかかったの。状況からして、ルナを狙う暗殺者の可能性が高いわ」
「どうしてここが……いや、そんなことよりどうする。敵は近くにいるんだろ?」
「えぇ、すぐそこよ。すぐ逃げましょう!」
フィリアは逃げることを選択した。暗殺者は幻影魔法や水魔法の霧隠れなどで姿を隠して襲ってくる。知覚出来ない以上、こちらが圧倒的に不利だとわかっていたからだ。
「いいや、撃退しよう。逃げたところで、ここを突き止めるやつらだ。絶対に追いかけてくるだろう。それこそ、ルナを殺すまでな」
ルナがビクッとした。デウスは言葉を選べばよかったと思った。
「安心しろルナ。僕たちはルナを絶対に守ってやるからな」
「は……はい……。 あわゎゎ……」
デウスはルナを撫でて落ち着かせた。……ルナは違う意味で落ち着かなくなったが。
「それで……何かいい案があるのか? デウス」
イークウェスは問い詰めるようにデウスに言い放った。
「あぁ。条件さえ満たせば、見えない相手でも言霊は効果があるはずだからな。とりあえず今は急ごう! こっちだ!!」
デウスは有無を言わさずみんなを連れて一番広い広間に来た。
着いた先は、村で宴会が行われる時くらいしか使われない広い部屋だった。
「……ちょっと! こんな広いところに来たら殺してくださいって言ってるようなもんじゃない!!」
フィリアが怒る。隣でビクビクしているルナの気持ちも考えて欲しいものだ。
「大丈夫だ。安心しろ。あとルナ、僕と手を繋いでくれ。フィリアは僕とルナに対して感覚の共有が出来るような魔法をかけてくれ」
ルナは顔を真っ赤にしたが、自分から手を差し出した。フィリアは不服そうだったが、デウスを信じて魔法をかけた。
「虚無の理より出る精神を紡いだ糸よ
2人の人間を繋げ共有せよ 感覚共有」
デウスはルナに向けられる殺意を感覚共有で感じ取った。
その殺意の感覚がこの広間の中に入ってきた時だった。
「動くな。姿を見せてひざまずけ」
4人のすぐそばで、1人の男がひざまずいた状態で姿を現した。




