第29話 王女の立場
一方そのころ。
デウスとイークウェスは一足先に温泉に浸かっていた。
「やーっぱり温泉はいいものだなぁ……僕のいた国では温泉は全ての民が好んでいたものだからよく仲間と浸かりに行ったものだよ」
「そうかぁ、そっちの国にもあるんだな。この格別の気持ちよさはどの世界でもどの国でも変わらないな」
温泉の良さを一通り語り終わったところで。
「なぁイークウェス、わざわざ誘ってきたってことは、何か話があるんだろ?」
「あぁ、よくわかったな。これから王女さまの友だちとして側近になるお前たちに知っていて欲しいことがあってな。もちろんこれから話すことは王女さまには知られたくない。だからフィリアにはいつか王女が居ないところで話しておいて欲しい」
イークウェスが真剣にこちらを見て話す。もちろんデウスは許諾した。
「王女さまは、今微妙な立場にいる。
王女さまの姉である第1王女のキャロルムさまは、媚びへつらってくる貴族たちに嫌気が差し、王位継承権を放棄して魔法の研究に入り浸ってしまった。
結果としてはキャロルムさまは賢者の称号を得ることとなったが、王位継承権を放棄したという事実のしわ寄せは第2王女のフォルトゥナさまにきてしまってね」
イークウェスは夜空に儚げに煌めいている星空を見上げながら続ける。
「フォルトゥナさまは、素晴らしい次期女王となりたいと願い努力していらっしゃる。しかしキャロルムさまと違い、フォルトゥナさまは魔法が使えないんだ」
そうなのか?とデウスは驚く。
「魔法が使えないということは、有事の際、自分自身は何も出来ないということを意味する。もちろん、それは女王となるにはマイナスの印象だ」
魔法が使えない……僕の言霊の力を聞いて、少し期待させてしまっただろうかとデウスは不安になった。
「まぁここまでは何とかなる話だ。問題は次なんだよ」
イークウェスの表情がより真剣になる。
「王女さまは良くも悪くも人を平等に扱う方だ。だから無能な者には厳しく当たり、有能な者には平民であろうと貴族であろうと同じように扱われる。
それがこの国の貴族たちには不満なのだろう。実際貴族など過去の先祖が凄かっただけで今の貴族は無能の者が多い。だがプライドだけはピカイチだ。
だからフォルトゥナさまが平民出身の者を呼び込むたび、その者たちは貴族から嫌がらせをされて大半はフォルトゥナさまの元を去っていく」
どこにでもある話だ。だれしも人間は他の人間より優れていると思い込みたい。 さらに、自分より下だと思っている人間が自分より上の評価をされると、どうしても攻撃してしまうものだ。
「だからまぁ、長々と話したが言いたいのはな。
まずお前たちは道中で拾ってきた有能な平民という扱いとなる。そうなればいつものごとくお前たちに攻撃が来るだろう。……でもな、この攻撃から逃げずにとどまって欲しい。フォルトゥナさまは自分の立場を危うくしてまでお前たちをそばに置くと決められたのだ。そのことを忘れないでくれ」
そうだろう。国の王女が平民を重用してしまえば、国の身分制度という根幹が揺らぐこととなる。その危険を侵してまで守ってくれようとしている。
ルナのその気持ちには必ず答えなければならない。
「もちろんだ。気にする事はない。僕たちは賢者と魔導師なんだぞ?」
「……おいデウス、あんまし調子に乗るなよ??」
デウスとイークウェスは互いに打ち解けあった。歳は離れているものの、デウスにとって始めての男の友人であった。
談笑していると、隣の温泉が騒がしくなってきた。
デウスとイークウェスは気まずくなり、温泉を後にした。




