第100話 心の強さを示した者
「みんな、おつかれさま。正直に感想をいうと、想像以上だった。君たちの入学試験の内容を見させてもらったが……それはとてもひどいものだった。そしてこれがエリートといわれるフォールテム学院の入学生だと知り、大きく絶望したものだ。こんな奴らがこれからこの国や人々を護る人間になるのだと、そう思うと未来がかすんでいくような気持ちになった」
デウスの正直すぎる入学試験の反応に新入生たちは顔をうつむけ落ち込んでいる様子だった。
「だからこそ、今回の死を前提とでもしているような模擬戦にはほとんどの者が辞退するものと思っていた。しかし実際には辞退者は予想よりはるかに少なく、ここにいる者は逃げずに我々に立ち向かってきた。お前たちでは敵うはずもない我々に。ほとんど死を約束されたかのような状況に」
デウスは新入生たちを見渡した。新入生たちは顔をあげており、全員と目が合った。
「お前たちは理不尽な力にも屈することがない心の強さを今回の模擬戦を通じ手に入れ、我々にそれを示した。それこそが、これからのこの国に必要なことであり、我々が求めているものだ。
人々を、大切な人を護るために恐怖に打ち勝ち立ち向かう……その心の強さを忘れるな。その心の強さはいずれ人々の、そしてお前たち自身の希望となるはずだ」
デウスの話は耳から心に染みわたり、多くの新入生が目に涙を浮かべていた。
「しかしだ。圧倒的な力にも屈さない強い心があるとはいっても、今回のようにすぐ殺されていては話にならない。人々や大事な人を護るには、まずはお前たち自身が生きて、生き抜いてそして戦い抜くことが必要だ。そのためにこの学院があるんだ。
これから我々とともに学び、ともに生き、ともに戦おう。お前たちが我々と肩を並べて戦えるようになるまで、我々が殺す気で指導してやるからな。その強い心で耐え抜いて見せろ」
デウスがそういうと、新入生たちはポカンとした。そしてディスキがデウスに聞いた。
「デウス先生……。合格は精霊科だけなのでは……?」
「何を言っているんだ? 僕は試合前にお前たちの強さを我々に示せと言ったんだ。この試合に死の覚悟を持って参加した時点でお前たちは我々に心の強さを示しているじゃないか。だからこの模擬戦に参加している時点で合格だぞ? そうじゃないと合格がトニトルス1人になってしまうからな」
「「えっ……えーーーっっ!?!?」」
新入生……いや、生徒たちが驚きの声をあげた。全員が声をあげたため、デウスはたまらず耳を塞いだ。
「うるさいうるさいっ! そもそもこの試合はお前たちに自分の無力さを思い知らせることで、生徒たちが学院で自ら強くなろうと努力するようになるためにと、国王さまが仕組んだ王命だ!! わかったらこれから死ぬ気で学んで強くなれ! いいな!!」
「「はいっ! よろしくお願いします!!」」
殺し合いの模擬戦という前代未聞の入学式は、生徒たちのやる気に満ちた返事で幕を閉じた。
……はずだった。
「先生! 先生たちにお願いがあるのですが……」
「どうしたんだ?」
デウスは申し訳なさそうに寄ってきたステラに問いかけた。
「せっかくですので、先生たち同士の試合も見てみたいのです。国の最高レベルの力をもつ先生同士の試合が見られたら、私たちにとってもいい経験になると思うのですが……」
ステラの申し出に生徒たちが沸いた。空気的に、これはもう試合をするしかないなと思ったデウスは、誰と誰を戦わせるのが最適かを考えていた。
(まず底の見えないティアの実力を知っておきたいからティアにお願いするとして、そのティアに対抗でき、かつ生徒たちの見本となれるような戦いができるのは……)
「話は聞いていたな? ティア、そしてフィリア。模擬戦をお願いできるか?」
「えぇ。私は問題ないですよ」
「いいの!? 憧れのティアさまと戦えるなんて……あっ、でも美しい身体に傷をつけたくないしなぁ……」
「はぁ……そうか。せっかくフィリアが勝ったらティアにフィリアを抱きしめてあげるように頼もうと思っていたのになぁ……」
こんな時にもティアへの愛を掲げるフィリアにデウスは飽き飽きとしながら提案をした。
「ほんと!? じゃあやるっ!! ティアさま、絶対負けないからねっ!!」
「ちょっ……まぁいいです。わたしこそ本気でいかせてもらいますからね!」
生徒たちから「おぉ!!」と歓声があがる。デウスにとってもこの試合は楽しみであった。
「しょうがないですね。私の魔力もあと一回は持ちそうですし、やりましょうかね」
レガティスの賛成ももらい、会場はティアとフィリアを残して他は観客席へと移動した。
生徒たちはもちろん、デウスたちもわくわくとしている。無理もない。なぜなら、トリスタン王国において最強の魔法使いと最強の剣術使いの戦いが今、始まろうとしているのだから。




