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第99話 過去を斬る剣


ステラは悔しそうにティアを見上げた。その目には悔しさの他にも驚きや尊敬、羨望といった感情も透けて見える。


「私の完敗です……剣姫さま。よろしければ今私に何が起こったのか教えていただけませんか……?」

ステラは瀕死の重傷を負いながらもティアに問いかけた。


「えぇ、いいですよ。しかしそれは後にしましょう。時間を巻き戻してあなたの傷が治ってからのほうがいいでしょう」

「いいえ……今、どうか今教えてくださいませんか? 私が負けたこと。その理由。悔しさも未熟さもすべてこの傷の痛みに刻んで覚えておきたいのです……」

ステラは傷口を握り、あふれ出る血を少しでも止めようと足掻きながらティアに懇願した。

その必死な姿に心を打たれたティアは、普段より少し早口で話し始めた。


「さっき使ったのは付与魔法の時空間。賢者レガティスのみが使えるとされている時空間魔法を私が付与魔法という形で再現したものよ。私が左手に持つ時空間魔法を付与した開闢の剣で切ったこの場所。ここはあなたがさっき剣技の抜刀術で私を斬ろうとした場所よ。

そして私は……時間軸と空間軸をあなたがさっきここに居た場所に合わせたの。つまり、私は……あなたの過去を斬ったのよ」

「過去を……斬った?」

ステラは聞き間違いですかとでも言いたげに聞き返した。それはデウスも含め話を聞いていた全員も同じことを思っていた。


「そうよ。数分前の過去しか斬れないけど……時間軸と空間軸を過去の一点に合わせ、そこをピンポイントで斬ることができれば可能なことよ」

ティアは2本の剣を納刀しながらさらっと言った。常人にはありえないようなことをやってのけ、それをさらっと流してしまう人間。それが神剣に選ばれし剣姫・ティアモ=アエテルヌムである。


「そうですか……もう剣姫さまに勝てるわけがありませんね……。でもいつか、私がもっと強くなって神妖刀に認められたとき、また手合わせしてもらえませんか……?」

「えぇ、もちろん。楽しみにしているわよ」

「はい……次は……負けませ……」

ステラは笑みを浮かべて息絶えた。その姿を、ティアはしっかりと目に焼き付けた。

(ステラ。あなたはこれからもっともっと強くなるわ。その力で多くの人を殺すのか、多くの人を救うのか……楽しみにしているわ)


「この勝負、剣姫ティアモの勝利とする。これより時間を巻き戻す!」

レガティスの時間遡行魔法で視界が歪み、会場は試合前の状態に戻った。


「負けちゃったね……」

「何もできなかった……です……」

「……」

剣術科の新入生は目に見えて落ち込んでいた。魔法科と一緒で不合格は不合格。しかし魔法科と違い、健闘することもなく一方的に殺されたということに。


「それではこれで新入生に対する模擬戦を終了する! 剣術科はそのまま、魔法科と精霊科の新入生は会場の中に戻ってくるように!!」

レガティスの指示で会場に魔法科・精霊科・剣術科の新入生が集まり並んだ。その前にはデウスたちとティア、レガティスが立っていた。


「デウスさま、今回の試験についてお話ください」

デウスはレガティスにそういわれると、新入生の前の中心に移動し、今回の模擬戦について話を始めた。

新入生は真剣な顔のデウスを不安そうに見つめていた。


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