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第97話 ティアの殺戮


「それでは剣術科の模擬戦、開始!!」

レガティスの開始の合図があった。そして開始直後、剣術科の新入生は素早く移動し、ティアを取り囲んだ。


「この陣形は……何かの作戦?」

「もちろんですティアさま。我々も勝たなければなりませんので、少々卑怯でもやらせていただきます!」

「いいでしょう。悪魔や魔獣相手に正々堂々も卑怯もないからね。本気でかかってきなさい」

「はいっ!!」

新入生ははきはきと返事をすると、四方八方から同時に斬りかかった。







「トニトルス、剣姫さまの弱点は何か見つかったのか?」

剣術科の男がトニトルスに尋ねた。


「それが……すまん、見当たらなかった。隙のない動き、攻撃を打ち消す神剣の剣さばき。噂によると付与魔法(エンチャント)の能力もすごいんだろ? すまないが……剣術科だけで作戦はたててくれ」

「お……おう、まじか……」

すでに剣術科は絶望に陥っていた。


「みんな、ちょっといい?」

絶望の空気を変えたのはステラだった。


「みんな、勝つため、合格するためなら何でもする?」

「当たり前だ。俺はここで強くなって人のために剣を振るうって決めたんだ! こんなところで……」

「わたしも……絶対勝ちたい、です……」

ステラはみんなの肯定の意見を聞いてから考えた作戦をみんなに話した。


「試合が始まってすぐティアさまを囲んで、同時に斬りかかるの。いくらティアさまでも四方八方からの同時の攻撃には対処できないはずでしょ?」

ステラの意見に男が怒りをあらわにした。


「お前……剣を握る者としての誇りはないのか!? 取り囲んで同時攻撃だと? そんなことして許されるか!!」

「そう。じゃあさっさと斬り捨てられて死んじゃいなよ。そして不合格になってここを立ち去って。それでいいでしょ?」

「なんだと……!」

「だってそうでしょ? 正々堂々戦って勝てるわけないんだから。魔物と戦うときだって、取り囲むのがセオリーじゃん?」

「でも相手は人間……」

「あのねぇ、相手は剣姫さまよ? 普通の方じゃないの。そんな方と戦うなら絶対に一対一を繰り返させるような戦い方をしちゃだめなの。こっちが勝っているのは人数だけ。だったら一対多数で戦うしか勝機はないでしょ!!」

ステラの気迫と筋の通った意見に剣術科から他に意見は出なかった。剣術科の作戦は一対多数で戦うこと、これに尽きる。








ティアは斬りかかってくる新入生を素早く見渡した。そして……


ギィン!!!


斬りかかってきた全員の剣を頭上で右手の剣で受け止めた。

ティアは新入生が味方を斬ることを恐れ、垂直の縦振りしかしないことを瞬時に見抜いたのだ。


「剣技 回転切り」

ティアの身体がわずかに動いたように見えた。その瞬間、受け止めていたはずの新入生の剣はカラカラと落ちた。新入生たちは崩れ落ち苦悶の声を上げ始めた。


「があぁぁ……いでぇ……腹が……」

「死んじゃう……死んじゃうっ!!」

「う……うぅ……」

新入生は腹を切り裂かれており、間もなく息絶えた。圧倒的な強さに剣術科はおろか、観戦している全員までもが言葉を失い硬直した。


「どうしました? 私は暗殺部隊名無し(ネームレス)に所属しているんだ。人を殺すことにためらいは無いよ?」

剣術科の新入生は剣を構えた。しかしそれは闘志からではなく、生存本能からであった。


「う……うわぁぁぁ!!!」

恐怖からやけくそになった1人の新入生がやみくもに突っ込む。そしてあっさりと斬り捨てられた。


「どうしたの? もう終わり? ……そう。それではこちらからいかせてもらう!!!」

そういうとティアは右手の人差し指と中指で左の剣に文字を書き始めた。いや、剣を指先で撫でたという方が正確だろうか。そう感じてしまうほど一瞬で付与魔法を施し、左手の剣は雷をまとった。その瞬間……ティアはその場から消えた。


バチチチチチ!!!


音がした方を見ると、ティアが先ほどまでいた位置から一番遠くにいた新入生の背後から、雷をまとう剣で心臓を一突きして立っていた。新入生は胸からも口からも血を流している。

そしてティアはまた剣を撫でた。その剣は風をまとい、そしてまた消えた。


ごとっ……


岩が地面に落ちるような音がした。そこには……首から斬り落とされた頭があった。先ほどまでより切れ味がいいのか、骨まで綺麗に切断されているようだ。

……そこからは地獄絵図だった。あるところでは火で傷口が燃え、またあるところでは水で血が固まらず長く苦しみ、またあるところでは土で傷口が腐食しボロボロになっていた。

ティアは目に見えない速さで新入生を次々と付与魔法を施した剣で斬り捨てていった。


「あとはあなただけね。神剣・無影の次期継承者、ステラ・ウンブラ」

「……っ」

ステラはティアを睨みつけた。神剣保持者と神剣の次期継承者の放つ殺気は、その場の空気を震撼させていた。


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