5/6
第五話 取り替えたねじ
電話を切った後、修一は客席に腰を下ろした。
白い布の下で、座面のばねが鳴った。
何列か前に、紗季がいつも荷物を置いていた席がある。
また会えば、別れ際に寂しくなるだろう。
帰りの汽車を遅らせてほしくなるかもしれない。
その時、彼女に困った顔をさせずにいられるか、今はまだ分からなかった。
通路の緑の灯りを眺めた。
やがて立ち上がり、舞台へ戻った。
窓枠の裏の、潰れかけたねじを一本だけ取り替えた。
彼女はこれを欲しがるだろうか。
部屋には大きすぎるかもしれない。
聞いてからにしようと思った。
刷毛を洗っていると、目から水が落ちた。
顔を上げても、もう一滴落ちた。
修一は袖で拭い、誰もいない舞台を見た。
情けなくて、少し笑った。




