第四話 話すための部屋
翌々日、紗季から封書が届いた。
中には、時刻表のコピーが二枚入っていた。
乗り継ぎの駅に丸がつき、余白に到着時刻が書かれていた。
《土曜なら、片付けの邪魔にならないでしょうか。話せたら嬉しいです》
修一は劇場の予定を確かめた。
土曜の午後には、客席の撤去が始まる。
《その日は音がうるさい。駅前でお茶でも飲もう》
返事を書いてから、しばらく封をしなかった。
結局、窓口へ行って速達で出した。
二日後、電話が鳴った。
「駅前のお店、今は土曜日がお休みだそうです」
紗季は、川向こうの喫茶店にも電話をしたという。
そこは祭りの日で、店の前を山車が通るらしい。
「ゆっくり話すには、ちょっとうるさいかなと思って」
「どこでもいいよ」
「私もそう思ったんですけど」
紙をめくる音がした。
「先生、寒いところだと、右手が痛むでしょう」
修一は、自分の手を見た。
冬の作業中に一度、そんなことを言った気がした。
「図書館の奥に、小さい談話室があるそうです。土曜も暖房を入れてくれるって。飲み物も持ち込めるそうです」
「よく見つけたな」
「電話、三つ目で教えてもらいました」
彼女は少し得意そうに言った。
「私、早い汽車にします。先に鍵を借りておきますから、先生は片付けが済んでから来てください」
修一は窓の外を見た。
劇場の向かいの金物屋が、店先のバケツを重ねていた。
「無理しなくていい」
「その方が、私も落ち着きます」
受話器を持ち直した。
彼女には一緒に暮らす人がいる。
この町へ来ても、夕方にはその人のいる家へ帰る。
その土曜日の途中に、彼と話すための部屋を探していた。
「ありがとう」
言うと、喉に少し引っかかった。




