表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイスペ佐藤くん、この恋だけはポンコツです〜五月雨式に失礼いたします〜  作者: もふおのしっぽ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/112

第57話:【監視継続】管理部と経理部の絶叫!越えるコンプライアンス遵守

 急ブレーキの少し前、画面の中の佐倉さんが楽しげに体を揺らし始めた。



『あ〜る〜晴れた〜昼下がり〜♪』




 スピーカーから、凛のノリノリの歌声が響き渡る。




「……あー、よくいるやつだ」




 高橋が苦笑する。



「お調子者が、大声でノリノリで歌いながら……」




 島田の予言めいた言葉が続く。




『市場へ続く道〜♪』



『……佐倉さん、声が大きい。それにちゃんと前を見て』



 佐藤が注意するが、佐倉さんは止まらない。



『ててててててててててててててー♪』




 その瞬間だった。

 歌声が最高潮に達したところで、画面が激しく揺れた。




 「っ、盛大に事故るやつだ!」



 島田が叫ぶ。



 幹線道路の真ん中に飛び出してきた猫を避けるため、画面の中の佐藤が急ブレーキを踏み込んだ瞬間、画面が激しく揺れ、警告音が鳴り響く。




 映像の中では、ダッシュボードに置かれていたマッスル猫が宙を舞い、盛大に頭をぶつけた凛の悲鳴が響き渡った。



『痛ったーい!! なに!? 先輩、なに!?』



「あー……佐倉さん、頭ぶつけたな。かなり派手な音したぞ」



 高橋がモニターに顔を近づける。



「猫は!? 猫は無事!?」




 お局様が叫ぶ。



 画面では、佐藤が後続車を気にしつつも慌てて車から降り、車体の前を確認している。




「猫は大丈夫みたいだな……。それより佐藤くん、佐倉さんの心配はどうした!?」




 島田の突っ込み通り、映像の佐藤は車体の下を覗き込んだ後、猫が逃げたのを見届けて車内に戻る。




「……あっ」


 

 高橋が画面を指さし、息をのむ。




 派手に頭をぶつけて呆然としている凛の髪に手を伸ばす。




 佐藤は前髪を優しくかき上げ、ぶつけたおでこを覗き込むようにして、


『……痛い? 大丈夫?』



 静かに、けれど明確に心配する様子が映し出された。




「…………」




 その瞬間、管理部と経理部を繋いでいたスピーカーから、一切の音が消えた。




 あまりの映像の破壊力に、全員が言葉を失った。



 次の瞬間。



「キャーーーーーーーッ!!!」




「佐藤くんが! 佐藤くんがおでこに手をッ!!」



 経理部エリアから、建物が揺れるほどの絶叫が上がった。

   



「ヒューヒュー!やるじゃん佐藤くん!」



 島田がモニターを叩いて歓喜する。



「おでこ……前髪上げて……しかもあの優しい顔! これは昼ドラどころか、少女漫画のクライマックスですよ!!」

 


 高橋が狂喜乱舞し、モニターの前で一人でダンスを始める。

  


 業務中であることを完全に忘れ去った3階は、佐藤と凛の恋の行方に完全に陥落していた。




「あ、事故の記録がここで終わりだ」



 高橋が冷静になってシステムを確認する。



「続き見るなら、リアルタイムの映像に切り替えたら見れますよ。どうします? 繋げます?」



 高橋が島田とお局様たちを見回す。




「繋げ! 今すぐ! 一秒も逃したくないわ!」



「早く! あの佐藤くんの優しいお顔をもう一度!」



 経理部から再び絶叫に近い命令が下る。



 高橋がニヤリと笑い、キーボードを叩いて映像を「リアルタイム監視」へと切り替えた。




 モニターに、再び先ほどの車内の映像が、今度はライブで映し出される。



「あ!動き出したわよ!」




 画面の中の車が、猫騒動の現場から再び走り出す。



「あら、中央区方面にUターンしてる」



 お局様の一人が画面を凝視する。



 「ん? これ、佐藤くんの家の方?」




「……本当だ。佐藤のマンション、あっちでしたね」




 高橋が地図と照らし合わせる。




「まさか! 連れ込み!? ……いや、それはあかん、あかんよ、佐藤くん! まだ就業時間内!」




 島田がインカムを握りしめ、顔を真っ赤にして叫ぶ。




「島田さん……ちょっと、これもう見ちゃだめじゃ」




爆笑していた高橋も、状況のあまりの劇的さに少し引き気味になる。




 管理部のコンプライアンス課の面々も息を飲む。




(((佐藤くん!!!一線は越えないでくれ!ヒアリングやら後々面倒だぞ!!!)))




「……見ちゃダメ、でも、見たい……!」




 経理部エリアでは、お局様たちが悲鳴にも似た歓声を上げながら、神妙な面持ちでモニターの行方を見守っていた。




 職場は、佐藤と凛の「かもしれない」行動に、嵐のような緊張と興奮に包まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ