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第四話:恋する紅玉(ルビー)の暴走と、参謀アレクの采配

 1.ポンコツ化した騎士副団長


 交際が始まって数日。王宮騎士団に緊急事態が発生した。 普段は「鬼の副団長(実質的な団長)」として恐れられるルーファスが、完全に使い物にならなくなっていたのだ。


「ルーファス殿下! 本日の演習メニューですが!」


「……ああ。花が咲いているな(ロザリンド嬢の笑顔を思い出し中)」


「は? いえ、今は剣術の……」


 ドサッ!


「で、殿下ーッ!!」


 なんと、ルーファスは乗馬訓練中に、馬上でぼんやりと考え事をして、派手に落馬したのだ。幸い、彼自身が頑丈すぎるため無傷だったが、騎士団員たちは真っ青になった。


「ダメだ……殿下は恋の病で重症だ……!」


「誰か! 第四王子、アレクセイ殿下を呼んでこい! あの人を制御できるのは弟君だけだ!」


 泣きつかれたアレクセイは、演習場にやってきて、ため息をついた。


「兄さん。部下が泣いてるよ。真面目な兄さんが馬から落ちるなんて、異常事態だ」


「……すまない、アレクセイ。気がつくと、彼女の可憐な姿が頭をよぎって……」


 アレクセイは、上の空の兄を見て、ピシャリと言った。


「妄想してる暇があったら、デートをしてきなよ。現実の彼女と向き合ってきなさい」


「デ、デート……! そうか、交際しているのだから、デートをすればいいのか!」


 こうして、ルーファスは初めてのデートに臨むことになった。


 2.無難すぎる「接待デート」


 数日後の週末。王都のメインストリート。 ルーファスは、アレクセイのアドバイスや恋愛指南書を参考に、「完璧な淑女のためのコース」を選んだ。


 まずは、流行りのカフェでお茶から。


「……このケーキは、君に似て甘くて可愛いね」


 ルーファスは自ら誘ったものの、慣れぬ場所で大きな身体を縮こませていた。


「まぁ、ありがとうございます」


(……甘すぎて胸焼けがしますわ)


 正面に座るロザリンドも優雅にカップを傾けながら愛想笑いを浮かべていた。


 次に、本屋で詩集選びをすることに。


「君には、この花の詩集が似合う」


 彼の人生において初めて手に取る花とレースで装丁された本を勧める。


「あら、素敵ですわね」


(……最新の兵法書が読みたいです)


 これもまた、肉体派の彼女の心に響くことはなかった。


 最後に、公園を散歩することになった。


「足元に気をつけて。石がある」


 平坦な道ではあったが、ヒールの高い華奢な靴のロザリンドを気遣う。


「まぁ、殿下、お気遣い痛み入りますわ」


(……この程度の石、踏み砕けますけど)


 体幹が鍛えられた彼女にとって何の問題もない道だった。


「ルーファス殿下、今日は素敵な一日でしたわ。――それでは、御機嫌よう」


(無事に一日終わったわ。やれやれ――)


 二人を乗せた馬車が公爵邸に着く。丁重に手を取り、エスコートしたルーファスにロザリンドは可憐に微笑んで別れの挨拶した。


 初デートの一日、ルーファスは終始、彼女を「壊れ物」のように丁重に扱い、ロザリンドは「淑女の仮面」を貼り付けて対応した。 表面上は平和だが、そこには熱量もときめきも皆無だった。


(……手応えがない)


 別れた後、ルーファスは落ち込んだ。彼女は微笑んでいたが、その瞳は全く笑っていなかったように見えた。


 寡黙ではあるが、感情の機微に疎くないルーファスなのだった――。


 3.参謀アレクのリサーチ


 翌日。アレクセイの部屋。 どんよりと落ち込むルーファスを前に、アレクセイはリサーチ結果を弾いた。


「兄さん。昨日のデート、落第点だったみたいだね」


「……やはり、そうか。彼女は退屈そうだった。僕のような無骨な男が、流行りの店に行ったのが間違いだったのか」


「というよりも、方向性が違ったんだよ」


 アレクセイは、ニヤリと笑った。


「僕がこっそりクォーツィン公爵家の侍女たちの噂話を拾ってきたんだけどね。どうやらロザリンド嬢は、ただの深窓の令嬢じゃないらしい」


「それは、どういうことだ?」


「なかなか興味深い情報を得ることが出来たよ」


 前のめり気味なルーファスにアレクセイは得意顔で話を続ける。


「彼女、どうやら『強い男性』が好みらしいよ。なんでも、公爵家の庭師が重い植木鉢を運んでいるのを見て『頼もしいわ』って、目を輝かせていたことがあったらしいんだ」


 正確には、庭師の筋肉の付き方を観察していただけだったが、大筋間違ってはいない情報だった。


「強い男……?」


 ルーファスは自身の腕を見た。アレクセイはうんうんと頷く。


「そうだったのか。彼女は、流行りのケーキよりも、男としての頼りがいを求めているのか」


「その通り。だから兄さん、次は『騎士団』に招待したらどうだろう? 兄さんの本領発揮できる場所で、その剣技を見せてあげるとかどう?」


「騎士団にか? ……しかし、あそこは男ばかりでむさ苦しいぞ。彼女が怯えないだろうか」


「大丈夫。彼女の好みが本当なら、きっと喜ぶはずさ」


 アレクセイの策に乗せられ、ルーファスは半信半疑ながらも、次のデート場所に王宮騎士団を選んだ。

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