239 帝都への移動
少し短めです。
ゴットフリート様と、ベンヤミンさん、マーサさん、そしてザーラをはじめとする先生達にくれぐれも子供達をよろしくとお願いして、アルスフィアットを後にする。
門番に立っていたのは偶然来た時に居た人だった。
「帝都に戻ります。孤児院の子供達をよろしくお願いします」
「ええ、任せて下さい」
お互いに情け無い笑みを交わして門を潜る。
子供達もぺこりと頭を下げて通り抜けた。
移動中にテレーゼ達に野営の仕方を教えて何があっても生きていける様に育てる予定だ。
山の幸や薬草に関してはハンスが先生役になって俺も一緒に教えてもらう。
【鑑定】先生に頼らず採取できる様に、頑張って覚えた。
おかげで秋の薬草は粗方覚える事ができたはず。
俺がそうやって覚えるのを見て、テレーゼとヴィムも真剣にハンスの話を聞く様になったのは良い影響だったと思う。
初めのうちはちょっぴり隔意があった感じだけど、今は大分打ち解けた様に感じる。
バックパックに薬草を括り付けて休憩できるスペースまで歩いていく。
いちいち自分のに付けるために下ろしたり背負い直したり、というのは時間の無駄なので、ハンスの物はヴィムに、ヴィムの物はテレーゼに、テレーゼの物はハンスに、という感じで括り付けた。
「キノコはまだ全然難しいけど、薬草にはかなり詳しくなった気がする!」
「キリトさん、それは雑草です」
「?!」
自信満々に折り採った草はどうやら雑草だったらしい。
念の為に鑑定したが、ブタクサに匹敵するくらいの雑草だった。
油断大敵だね。
ハンスのツッコミにヴィム達は笑いながら採取を続けたのだった。
自分達だけで野営出来るというだけで、万が一の時全然違う。
魔法が使えたり、火を熾せたり、近くの野山で食べれる物を探せたり、そういう事ができるだけで生き延びる可能性が数パーセント上がる。
たかが数パーセント、されど数パーセントだ。
上げられるのならばきっちり上ておきたい。
馬車は二人乗りの小さな物なので、移動の基本は徒歩である。
子供達の歩幅、というよりテレーゼの歩調に合わせてのんびりとした移動。
こまめに休憩を入れて無理なく進む。
時折疲れた子供達を馬車で交互に休憩させて歩いている。
ヒラヒラと舞い散る落ち葉や、道の脇に転がる木の実。
どんぐりなどは水に付けておくとアクが抜けて食べられるらしい。
サクサクと落ち葉を踏む音をBGMにあれこれ話しながら帝都に向かう。
彼等は元々孤児だったので外で寝る事や、周辺への警戒などは抵抗はないらしい。
何だったら魔法を使わない俺よりも出来る事が多い。
ぶっちゃけ魔法に頼りすぎかもしれないけど、いまだに火打石が上手く使えない俺。
気配は何となく感じ取れるようになってはきたものの、魔法に頼らないとできない事が多いんだよな。
もう五年近くこっちにいるのに……ハァ。
なんていうか少し考えが後ろ向きだなぁとは思うけど、今は感情のコントロールが上手くできない。
……難しいな。
できるだけ爆発させない様、後ろ向きになりすぎない様に心掛けよう。
本日の野営地は河原の程近く。
土手に広めに作られた野営地だ。
簡易的にではあるが、河原に向かって降りる階段まであって、とても良い野営地だと言える。
二人はヤンスさん指導のもと、石でかまどを組んだり、小さい鍋で野外料理をしたりと楽しそうに学んでいる。
ハンスはハンターとして過ごしていた上に、来る時にかなりスパルタで教えられていたので、大体のことは出来る。
どちらかといえば指導側に回っていた。
俺は足りない食材を取り出すくらいなものである。
そういえば「子供達」とは呼んでいるものの、正直こちらの世界の子供はデカい。
テレーゼも身長は俺と同じくらい、ヴィムは見上げるほどである。
そしてヴィムもテレーゼもこの世界では既に独り立ちしている年頃である。
日本の感覚でつい子供達って言っちゃうけど、そういうのもやめないとだよな。
一人前の大人として接しなくてはならない。
三人とも特に確執を持つこともなく、お互いに情報交換したり、知らない事を教え合ったりしていた。
そんな微笑ましい光景を見ながら、時折「もっとアルスフィアットに行けばよかった」などと後悔が頭をもたげるけれど、皆のおかげで前向きに戻れる。
彼等も同じ様にマチルダさんを失った仲間であったし、俺が守らねばならない命だと思うと、顔を上げる気力が出るのだ。
行きは真っ直ぐアルスフィアットに向かったが、帰りはあちらこちらに足を向けて豊作の作物だとか、その土地の名産品だとかを購入し、冬物の服や小麦粉などを売って商売しながら帰った。
思いの外ヴィムが客捌きが上手く、テレーゼは売り付けるのが上手かった。
この二人はもしかしたら接客の才能があるのかもしれない。
「兄ちゃんが紙芝居させたからだよ」
「あの後どんだけ読まされて、整列させられたと思ってるの?」
あ、そうか、俺のせいでしたか。
なんかすみません。
そんな感じで移動していた為、帝都に着いた時にはすっかり秋も深まり、もういく日もせずに初雪が降り始めるだろうと思われた。
拠点にたどり着くと、テレーゼ達をリーゼに預ける。
うちで数日生活して疲れを取り、生活に慣れたら各店を回ってどこで働くか決めてもらう。
第一希望はブリギッテの店の店頭スタッフだそうだが、テレーゼは目を引く美少女だ。
出来たらあまり人目につかない安全な所で働いて欲しい。
まあ、テレーゼの人生なので、あまり俺が口出ししない方が良いのはわかってるから言わないけどね。
ヴィムもどうやら同じ意見みたいだし。
そうして皆に帰還の挨拶と心配させた事を謝り、無事弔ってきた事を告げる。
説明しているうちに涙が勝手に溢れてきたりもしたが、誰もそれを揶揄ったりする事なく静かに聞いてくれた。
温かな蜂蜜茶をデイジーがいれてくれて、鼻を啜りながら飲んだ。
それは熱すぎずぬるすぎず、舌を火傷しないけれど体を温めてくれる、そんな完璧な温度で。
デイジーの優しさに胸がギュッとなった。
いつも俺不運を読んでいただきありがとうございます。
いいね、リアクション、感想、ブックマーク、評価、誤字報告、本当にいつも助かっております。
間話のご希望沢山ありがとうございます!
おかげで、色々書きたい物が出てきました!
何かのタイミングでどんどん消化していきたいと思います!
今回は短めだーっと思いましたが、むしろこれくらいに収めたいなっていうベストな文字量でした。
あれ?何かおかしいな?
次回は石鹸の続きです。




