第25話 勇者パーティと魔王
もはや、現実と夢との境は曖昧だった。
果たしてこれが、回復薬の幻覚作用によるものなのか、単に現実逃避しているのか、分からない。都市一つを壊滅状態にしたことでアレン達は秘密警察や直属部隊からさらに強く追い詰められた。
もはや居場所は露呈していて、止まっていても包囲されるだけ。
毎日人を殺しながら前進し、ミチャロフ三世の喉元に近づいた。
待ち伏せ、奇襲、挟み撃ち、あらゆる攻撃を受けた。
体を犠牲にすることで、市民を人質に取ることで、四人は何とか困難を切り抜けるものの、その度に回復薬の使用量は増えていく。もはや市販の回復薬を体が受け付けなくなり、より強い効能を持つものばかりと頻繁に使用していた。
幻覚は毎日のように見たし、思考は回らなかった。
眠れないことは普通で、もし寝れても悪夢を見るだけだ。
だが四人で起きている時だけ旅の続きを夢見ることができた。
持っている剣は『勇者の剣』になり、何よりも強靭な肉体と精神力を持っていると感じることができた。どのような大魔術でも発動させることができるし、失われた回復魔法を使って仲間を癒す幻覚を見ることができた。
紛れもなく、勇者一行の冒険だった。
敵は市民で、兵士で、王だけれども今更どうでもいいこと。
振るう剣と魔法は正義感に満ち溢れていた。
やがて一行は魔王城のあるバルト皇国の首都『サンペータブルッヘ』にたどり着いた。
そしてそこでアゼバンと再会した。
妹を連れ去った部隊を指揮していた直属部隊の男……再び相まみえた時は戦うものだと思っていたが、現実は違う。
「君たちは……」
アゼバンは数年前に受けた負傷が原因で記憶障害を負っていた。
すでに軍務を退き、首都で本屋に通いながら昔のことなんて忘れて暮らす日々。
俺たちは復讐をする権利すら奪われていた。
しかしそれでも、ドランクは剣を振り下ろした。
アゼバンは自分が何をしたのかなど当に忘れて平和な日々を過ごしていた、そしてこれからも年を取って死ぬまでゆったりと生きていく――そんな虫のいい話はない。過去は付きまとう。老人になろうとも、忘れようとも贖罪の時は訪れる。
俺たちはそう納得した。
こいつは魔物だと。
そしていまから魔王を倒すのだと。
「派手にやろうぜ」
ドランクの掛け声とともに、俺たちはバルト皇国の首都ででかい花火をあげた。
花火には血肉が混じっていたのかもしれないが、もはやどうでもいい。
回復薬を使いすぎたせいで痛覚は鈍化して、腕を切り落とされようとも痛みは感じなかった。
どれだけ走っても疲れない。
どれだけ切り伏せても心痛まない。
魔王を殺すために。
勇者パーティの旅を終わらせるために。
ラスボスは殺さなくちゃいけない。
「やろう!」
臓物にまみれた宮殿で俺たちはそう叫んだ。




