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【連載版】悪役令嬢ですが、今日は私が王国を救います――ただし婚約破棄の条件付きで  作者:
第四章:星の揺りかご編

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第18話:空から降り注ぐ「観測者」

 神を打倒し、世界を再定義してから半年。

 大陸は未曾有の繁栄を迎えていた。魔導技術は飛躍的な進化を遂げ、エレナが構築した新たなエネルギー循環システムのおかげで、もはやかつてのような貧困や瘴気による死は過去のものとなった。

 氷華帝国エル・リヒテンは、単なる一国ではなく、人類が歩むべき新しい指針となる「星」となった。エレナは『星の聖皇』として民から崇められ、平和を享受していた……はずだった。

 異変は、ある晴れた日の午後に起きた。

 空に開いた「窓」

 エル・リヒテンの王宮バルコニーで、エレナはシルと共に午後の紅茶を楽しんでいた。

 平和な午後。だが、エレナの鋭い感覚が、空の一点に「違和感」を捉えた。

「……シル、あれを見て」

 彼女が指差したのは、快晴の青空の一角だった。そこだけが、まるで古いフィルムのノイズのように激しく明滅している。

『外なる神』が消滅したはずの虚空に、今度は何かが「外側」から無理やりこじ開けようとしている――。

「……またか。今度はあの神どもの残党か?」

 シルが鋭い牙を剥き、警戒姿勢をとる。しかし、エレナは首を横に振った。

「いいえ、質が違うわ。……あの神々が『破壊』なら、あれは『監査』よ」

 明滅するノイズが弾け、空に巨大な「窓」が出現した。

 窓の向こう側に広がっていたのは、この世界の常識を覆す光景だった。幾何学的な形をした無数の浮遊島、そして空を埋め尽くすほどの、輝く金属の翼を持った異形の軍勢。

 彼らは「観測者オーバーシア」を自称する者たちだった。

 第四の法則

 窓を通り抜け、エル・リヒテンの空に整然と降下してくる数百の飛行体。それらは攻撃を仕掛けるでもなく、ただ冷徹にこの世界をスキャンしていく。

 エレナはすぐさま帝国の防御システムを起動させたが、驚くべきことが起きた。彼女が構築した【新世界法則】が、彼らの前では無効化されたのだ。

「そんな……私のプログラムが、読み込まれている?」

[Scan_Result: Abnormal_Variable_Detected]

[Type: unauthorized_rewrite_of_universal_laws]

[Command: Quarantine_the_Anomaly]

 上空から響く無機質な声。彼らにとって、エレナが命がけで行った「世界再定義」そのものが、この世界の「バグ(不具合)」として認識されていた。

 聖皇の決断

「観測者」の一人が、エレナの立つバルコニーへゆっくりと降りてきた。

 それは人型をしているが、目鼻立ちのない、純白の仮面を被った異質な存在だった。

「リヒテンベルクの娘よ。貴様が行った法則の書き換えは、高次元階層における重大な違反行為だ。……この世界は、現時点をもって『再初期化フォーマット』対象とする」

 淡々とした、しかし有無を言わせぬ宣告。

 彼らにとって世界とは、管理された一つの「シミュレーション」に過ぎなかったのだ。

「再初期化……?」

 エレナは仮面の男を真っ直ぐに見つめ、冷笑を浮かべた。

「面白いわね。私を『バグ』と呼ぶのは勝手よ。けれど、私が苦労して積み上げたこの世界を、あんたたちの都合でリセットさせるわけにはいかない」

 彼女は杖を掲げた。半年前の戦いとは違う。今や彼女の背後には、平和を築き上げた民たちがいる。そして、自分を認めてくれる最高の相棒も。

「シル。……準備はいい? 今回は、神相手よりもずっと手強いわよ」

「ああ、望むところだ。……神を殺した俺たちだ、今更『監査官』程度でビビるかよ」

 空を埋め尽くす「観測者」の軍勢に対し、エレナはエル・リヒテンの全魔導障壁を解放した。第四章、世界を初期化しようとする者たちとの、知略と魔導の衝突が幕を開ける。

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