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【連載版】悪役令嬢ですが、今日は私が王国を救います――ただし婚約破棄の条件付きで  作者:
第三章:世界変革の序曲

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第17話:神の死、そして世界の再定義

数式などの書き方を変えました

 黄金の歯車が砕け散る音は、千年の時を刻んできた「呪い」の終わりを告げるファンファーレだった。

 最上階を支配していた建国王の思念体は、エレナが放った新式の演算コードによって根底から崩壊し、霧のように消えていく。その消えゆく間際、建国王の瞳には、かつてないほどの穏やかな安らぎが宿っていた。

「……エレナ。かつて私が、守りたかったのは……。……ああ、そうか。君のような、『真の強者』がこの塔の門を叩くのを……ずっと待っていたのかもしれん……」

 最期にそう言い残し、建国王は完全に消失した。

 直後、塔の中心に鎮座していた『システム・コア』が、エレナの色である透き通るような白銀色へと変色する。

「……さて、仕上げね」

 エレナはコアのコンソールに手をかざす。彼女の脳内で超高速の演算が走る。

 【世界維持プログラム】を解体し、そこから得られた魔力を、大陸全土を永続的に潤す「自然循環型エネルギー」へと変換する。

(以下、世界再定義のための最終演算コード)

 [Global_System_Initialize]

 [Set_Mana_Cycle = Open_Source]

 [Target = Whole_Continent]

 [Formula: E = Integral(Mana_Density * Time_Flow) dV]

 [Execution: Override_Original_Law]

 その瞬間、大陸全土に異変が起きた。

 これまで国境で区切られ、魔力枯渇に喘いでいた大地から、地下深くの源泉が解放されたかのように純粋な魔力が溢れ出したのだ。

 空を覆っていた『無』の嵐は、エレナが設定した新たな物理法則によって霧散し、雲の隙間から、千年間誰も見たことのないような、澄み切った黄金の陽光が降り注いだ。

 神との対峙

 しかし、嵐が去った後の空に、一つだけ消えないものがあった。

 それは、空間そのものに刻まれた、巨大な『黄金の瞳』。

 この世界を檻として管理していた『外なる神々(ヴォイド・アバターの本体)』の顕現だった。

『……定常状態を維持していた檻を壊したか。……脆弱な虫けらめ、お前の存在は世界のバグだ。消去する』

 神の声は物理的な音ではなく、直接脳内へ突き刺さる「破滅の命令」として響いた。

 その重圧に、傍らにいたシルさえも片膝をつき、呼吸を乱す。

「シル!」

「……大丈夫だ、エレナ。……お前の隣で、最期まで牙を剥いてやる」

 エレナはバルコニーから一歩踏み出し、宙へと浮かび上がった。

 彼女の周囲に、書き換えられた新たな世界法則ニュー・ロジックが、無数の光の鎖となって展開される。

「バグですって? ……いいえ、私はこの世界をバージョンアップさせただけよ」

 エレナは神の瞳を見据え、その細い指先をゆっくりと天へと向けた。

 彼女が構築した世界再定義の数式が、神の存在そのものを「上書き」しにいく。

「神よ。あんたたちの管理する古いルールは、今日で廃棄よ。……ここからは、人間たちが自分たちの足で歩む、新しい時代の始まりよ!」

【Final_Execution: Delete_Old_Deity_Access】

 【Status: Override_Complete】

 エレナがその名を告げると同時に、天の黄金の瞳が激しく明滅し、悲鳴のようなノイズと共に砕け散った。

 それは神の死であり、同時に「人」が「理」を勝ち取った瞬間だった。

 変革の代償と、新たな幕開け

 神の呪縛が消え去った大地には、もはや「悪役令嬢」も「聖女」も必要なかった。

 人々は、ただ一人の女性が世界を救ったことを、歴史に刻むだろう。

 塔の最上階で、エレナは深く息を吐き、シルの肩に体重を預けた。

 神を打倒した代償として、彼女の魔力は一時的に枯渇し、その身体はひどく熱を持っていた。

「……やったのね、私たち」

「ああ。……世界は、もう誰にも縛られない」

 窓から見える景色は、昨日までとは比べ物にならないほどに鮮やかだった。

 エレナは窓の外を眺め、ふと遠くの地平線に思いを馳せる。

 

 神を倒した今、大陸全土に平和が訪れる。……はずだった。

 しかし、塔の最奥にある端末には、エレナさえもまだ気づいていない「未知のログ」が、静かに点滅し始めていた。

 それは、建国王がこのシステムを作った真の理由――そして、この世界が「外なる神」以外にも抱えていた、真の暗部に関する警告だった。

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