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いとこのリクト

 今は夏休み。俺のいとこが一週間ほど泊まりに来るらしい。いとこにはカレンのことを話してあるが、すごい楽しみにしていて長めに滞在するらしい。

 

 いとこの名前は、林堂リクト。高校2年生で、カレンと同じ歳だ。親父の弟の子供で普段は少し離れた場所に住んでいるので、会うのはたまにといったところだ。

 

 リクトは俺と顔立ちが少し似ている。高校時代の俺と雰囲気も似ている。もし、俺の外見が好きならば、カレンが惚れてもおかしくはない。歳も同じだし。

 

 どちらかというとヤンチャなリクトが、ひと夏の危険な夏にならないように見守るのが俺の役目だ。しかし、俺も両親も社会人で夏休みといえども仕事がある。ということは……カレンと二人きりの時間ができるのだ。カレンとリクトの二人だけの時間……。

 

 そんな心配をよそに、ピンポーン、リクトがやってきた。リクトと美少女の同居が短期間だが始まるのだ。

 

「はじめましてカレンちゃん、林堂リクトです」

「こちらこそ、野咲カレンです」

「こんなかわいい人がいるなんて、ラッキーだな」

「こちらこそ、よろしくおねがいします」

 

 傍目でみると、初々しい高校生カップルのようで、お似合いだな。俺が今、高校生だったら絶対カレンに手を出していただろう。だからわかるんだ。リクトはカレンに手を出すと。いとこのリクトは昔から女好きで、ノリの軽い男だ。

 

「おばさま、これお土産です」

「あら、おかあさんによろしく言っておいてね」

 

 なんとも細かいところまで気の利く男だ。そつがないのだ。俺にはない芸当かもしれない。

 

「カレンちゃんは、彼氏いないの?」

 早速リクトがカレンに聞き出す。

 

「校則で禁止されているから」

「恭介とは、どうなの?」

 おいおい……ストレートに聞くな、リクトは。ここは、関係を暴露するわけにいかないしな……。

 

「担任の先生でいつもお世話になってます」

「恭介、カレンちゃんがかわいいからって手を出すなよ」

「出さないって」

 俺は即座に否定する。生意気盛りのガキだ。家でも生徒指導しないといけないとは。災難続きだな……。

 

「なぁ、恭介。普段、カレンちゃんの下着とか見てるんだろ?」

 突然、何を聞く? 自分に顔立ちが似ているせいか、よけいむかつく。

 

「見てないよ」

 ちょっとは、見たりするけれど……。

 

「洗濯物とか見えちゃうだろ?」

「基本、洗濯物は自分の部屋に干していると思うけど」

「よく見てるな」

 リクト、そこを突っ込むな。

 

「風呂上がりとか、風呂に入っているときに間違えて入るとか……ドラマみたいな話ってわりとあるのか?」

「ないよ。入浴中の札を下げているからな。そんなことより、リクトは彼女とかいないのか?」

「今はフリーだ。だから超楽しみにしていたんだ。カレンちゃんクラスの美少女、なかなかいないぞ。うらやましいなぁ」

 

 そうでもないぞ。カレンは嫉妬もすごいし、怒ると怖いし……なんて思っているうちに、いつのまにかコミュ力のあるリクトが風呂あがりのカレンに話しかけていた。ものすごくフレンドリーで仲良しみたいじゃないか?

 

 俺は風呂上がりのカレンを見たときに話しかけられなかったのに――。その辺がだめなのかもしれないな。

 

 カレンも楽しそうに笑ってる……何を気にしてるんだ、俺は。リクトの奴、カレンにボディータッチしてるし……。リクト、そんなにカレンに気安く触るな。

 

「マジでカレンちゃんのあとに入浴なんて、最高だな」

「俺が次、入るから」

 俺は大人げないかもしれない。

 

「えぇ? 恭介のあとかよ。じゃあ、カレンちゃんもう少し話聞かせてよ」

 

 切り替えはやいな――って二人でなに話してんだろう……。あいつがいるとカレンに不用意には近づけないな。担任顔を続けなければいけないのは、結構大変だ。俺と顔立ちが似ているからって好きになるなよ。

 

 風呂上がりのカレンの髪はまだ乾ききっていなくて、毛先にウェーブがかかっていて、いつもより大人っぽく見えた。コミュ力って大事だなと痛感する恭介であった。



 ♢♢♢


 「しーっ、みんなにばれないようにこっそり来ちゃった」

 

 口元で一本指をたてたリクトが深夜、カレンの部屋に遊びに来た。修学旅行で女子の部屋に侵入しようとする男子の心理だろうか。

 

「リクト君……ばれたらまずいと思うよ」

「大丈夫だって。ただ話すだけだしさ」

「顔立ち、先生に似てるよね……」

「昔から良く言われるんだけど、似てるかな?」

「きっと高校生の頃はこんな感じだったのかなって」

「もしかして、恭介のこと……?」

「違うの。別にそういうわけではないけど……」

「そうだよな。あいつにはカレンちゃんはもったいないって」

「そうかな? 先生ってああ見えてモテるんだよ」

「その話、聞かせてよ」

 

 そんなことを話していたのだが――恭介の部屋は隣で会話がとぎれとぎれに聞こえてくる。これは注意すべきなのか? 修学旅行の教師の心理だな。深夜に年頃の男女が一緒に話していること自体問題だよな。俺だって、カレンの部屋に滅多に行かないのに。

 でも、明日仕事だし、その間もカレンとリクトは夏休みだしな。少しはカレンのこと、信用しないと……。少し経つと、声が聞こえなくなった。きっとリクトは部屋に戻ったのだろう……。俺は安心してそのまま寝ることにした。

 

 朝になって、カレンの部屋からリクトが出てきて、俺はリクトが一晩中カレンの部屋にいたことに気づいたんだ。

 

「おまえ、朝まで部屋にいたのか……?」

「いつのまにか眠っちゃってさ。大丈夫心配するようなことは何もないから」

 続いてカレンが出てきた。

 

「先生、これは誤解なの。ただ眠っちゃっただけで……」

「あっそ……」

 

 俺はどうでもいい返事をして、不機嫌丸出しだった。俺が隣にいるにもかかわらず一緒に眠っただと? 俺たちだって一緒に眠ることはそうそうないだろ? カレンのやつは事の重大さをわかってるのか? リクトもリクトだ。

 

 俺とカレンの心の溝が少しできた瞬間だった。

 

 



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