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オトキョンとさわやか男子

 オトキョンは、兄のせいで精神的にぼろぼろになっていた。性格の凶暴性が増して、学校にも自宅にも居場所がなくなった。ブスだがプライドの高い彼女は、イケメン4の沢屋君に連絡を取った。

 

 気高いオトキョンは、あまり自分から行動する方ではないのだが、優しくさわやかな沢屋君なら、話し相手くらいにはなるだろうと思ったのだ。恭介先生のことは好きだけど、あんなことがあったらアプローチもできない。

 

 沢屋君は、電話で話すと意外と面白く話が合うイケメンだった。沢屋君を自宅に呼ぶことにした。両親は仕事で帰宅が遅い。

 

 学校でも居場所がなく、自宅でも家族の空気は気まずくて……沢屋君しか今のオトキョンにはいないのだった。

 

 沢屋君はオトキョンに対して優しかった。事件のことを話しても、彼の優しさは変わらない。面白い話をしてくれるので、久々に少し笑った。オトキョンはストレスの渦の中にいた。

 

「沢屋くん、私と付き合いたいっていってたよね?」

「うん……」

「じゃあ、私の言うことを何でも聞いて。私の奴隷になるの。そうしたら、付き合ってあげる」

 ブスの女王は、さわやかイケメンに命令した。

 

 沢屋くんは、無言でオトキョンのことを真剣に見つめながらうなずいた。彼女のことが本当に好きな優しい男の子なのだった。彼女を癒したいという一心なのだった。

 

 普通、こんなにさわやかで育ちのいいイケメンを彼氏にすること自体大変なのに……。下僕にするオトキョンは、ただモノではない。女王体質は、生まれつきなのかもしれない。そして、あらゆるところを沢屋にマッサージさせる。さわやかイケメンは彼女の言うことを嫌だと言わない。ブスの女王は不気味に笑うのだ。私に、ひれ伏しなさいと……。

 

 「僕たち、つきあってるんですよね」

 オトキョンに確認するさわやかイケメン沢屋君。

 周りから「お前変だよ」「ブスのどこがいいんだ?」とか散々言われたが――顔が好みなのだ。仕方ないだろ。人には好みがあるのだ。だからこそ、この地球は成り立つし、人類は存続している。顔が好みなのだが、オトキョンは、性格がやっかいな女王タイプで、扱いづらいが、そこも含めて惚れてしまった。惚れた弱みというやつかもしれない。

 

「つきあってあげてもいいわよ」

 僕の胸は熱くなった。やっぱり尽くした甲斐があった。女の子に不自由はしていないが、僕はいわゆる美人やアイドル顔が苦手らしい。世間でいうブスに惹かれる……習性らしい。こればかりは仕方ない。好みなのだから。オトキョンは性格はいいとは言えないが、いつも孤独で寂しそうな雰囲気があって、放っておけない。そういうところが心をくすぐったのかもしれない。

 

 オトキョンは家事や料理は得意だし、気が利く。野咲カレンのような一般的な美少女より、お母さんらしくてそれがいいのかもしれない。僕には母がいない。幼少のころに死んだ。だから僕は、無意識に母親的な女性に憧れるようだ。父親の収入はいいが、いつも自宅にいない。寂しい子供時代だった。でも、僕には居場所があった。イケメン4というグループのメンバーが大好きだった。

 

 みんな同じ幼稚園で高校までずっと一緒だ。みんな優しい人ばかり。リーダーの八王子は頼れる男だった。だから、王子の言ったことには従うし、ヤンキー教師の弟子にもなる。

 

 オトキョンが言った。

「私、恭介先生が好きだったの。でも諦めた……」

 え? あのヤンキー教師のこと?

「僕でいいの?」

「わからない。でも、あの人はきっと好きな人がいるから」

「僕、先生の弟子だから君のこと推してみるよ」

「でも、私たち付き合ってることになってるのよ?」

 あくまで、上から目線のオトキョン。

「君が幸せなら、僕はかまわない。協力する」

 どこまでも良い人沢屋くん。先生とオトキョンに協力する??

 

 恋の行方は?

 


 ♢♢♢


 後日、イケメン4の沢屋くんの取り計らいで、先生をうまく喫茶店に呼び出した。

「どうした?」

 恭介先生は沢屋くんと二人だけだと思い、やってきた。

 

 なぜか自分が勤務している学校の生徒、音名京香オトキョンがいるではないか。

 見た目はオトタクそっくりで美人ではないが――はきはきしていて成績はいいほうだ。先生は、その場にオトキョンがいることにびっくりしていた。

 

「あれ? 二人ってつきあってるとか?」

「違います」

 全力否定のオトキョン。ちょっとへこむ沢屋。でも、応援するって決めた沢屋が切り出す。

 

「今日は友達になったオトキョンと師匠である先生と三人で……お茶でもって思いまして」

「はぁ?」

 わけがわからない先生。

 

「そっかあの花火大会で友達になったのか」

 あの花火大会の甘い思い出がつい昨日のことみたいだな。カレンとは別れたんだ。同居って別れてからが気まずいよな。カレン、あれ以来俺の部屋にやってこないし、そっけなくなったな。気持ち、冷めちゃったのかな、嫌われたのかな……。


 恭介の心はカレンのことでいっぱいになっていた。ストローでアイスコーヒーを飲みながら恭介先生は悩む。


 いつもは強気のオトキョンが猫を被った乙女をしていることに、沢屋はギャップ萌えしていた。あの女王気質の気が強いオトキョンが、先生の前だと何も話せないでいる。モジモジしている彼女も割と好きだ。やっぱり僕はオトキョンを愛しちゃってるようだ……。


 

「先生、彼女いますか?」

「いないよ」(最近、わかれたけどな)

「私じゃダメですか?」

「……」

 あまりに突然の不意打ちで恭介は声が出ない。

 

 なぬ? 俺のことが好きだというのか? 沢屋じゃないのか? 結構似合ってると思ったんだけどな。

 

 オトキョンの顔は真っ赤になっていた。下を向いたまま、固まるオトキョン。

 

「俺、好きな人がいるんだ」

「私以外にいるんですか? どんな人?」 

 自信家のオトキョンは納得がいかないようだった。

 

「一生懸命で不器用で、いたずらずきで、愛情が深い人」

「そうですか……」

「一応、うちの学校男女交際禁止だからオトキョンも卒業まで彼氏作っちゃだめだぞ」

「わかりました」

 

 先生は伝票を持って会計を済ませると、そのまま帰っていった。オトキョンは泣いていた。沢屋が傍でなぐさめる。プライドの高いこの人が、フラれて泣くなんて……屈辱だろうな……。

 

 はじめての失恋をしたオトキョンは、いつも優しい沢屋に無茶を要求する。ストレスのはけぐちがないのだ。

 

「今なら私、何をやってもかまわないわよ。10代の男子ってそーいうことしたい年頃なんでしょ?」

 相変わらずブスにも関わらず、イケメンに上から目線のオトキョン。

 

「胸触ったりしても訴えないから大丈夫。私の部屋にこない?」

「京香さん。もっと自分を大切にしてください。見つかったら退学になります」

「男女交際禁止なんて校則、あってないみたいなものだから」

「校則とかそういう問題じゃないんです。あなたは誇り高く気高い人だ。だから自分を安売りするなんて、あなたらしくない!!」

 

 さわやか沢屋くんの真剣な顔に驚いた顔をしたオトキョン。でも、この超ブス女子に誇り高く気高い人だなんていう男は沢屋くらいだろう。世界中探しても、なかなかいないだろう。

 

「もう……どうでもいいって思ったのよ」

「僕がいます。でも……あなた自身をもっと大切にしてください」

 彼の真剣なまなざしにオトキョンは少し黙った。

 

「今度いつ会う?」

 オトキョンが沢屋を誘う。プライドが高い彼女はツンデレである。

 

「毎日会いたい」

 沢屋のやわやかで優しい笑顔に胸がきゅんとなるオトキョンであった。

 

 それにしてもオトキョンは強運の持ち主である。普通なら男性に見向きもされないであろう容姿にもかかわらず、さわやかイケメンを虜にするのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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