表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/35

花火大会

【カレン視点】 


 夏休みのはじめ、花火大会に行くことになった。せっかくの夏休みは楽しみたい。

 はじめは「他の生徒や教師に見つかったらまずい!」と絶対行かないオーラ全開だった先生。なんとか説得して、OKしてもらった。

 

 条件は……変装して行く。夜だし、みんな花火を見ているからばれないという理由らしい。万が一のため少し距離を置いて歩く。手をつながないという条件の元、なんとか花火大会デートができることに!! 先生は、仕事のクビ問題があるのでかなり慎重だ。

 

 一般的な恋人たちの見えない壁がないことが、うらやましい。成人しているという大人であるという事実が、うらやましい。生徒と先生じゃなければ……もっと堂々と歩けたのに。一緒に歩くことも禁止……苦しい……。

 

 

 もっと一緒にいたいけれど、近いのに遠い。先生との距離は、せつない。胸が痛むけれど夏は待ったなしでもう訪れていた。

 

 夏休みを間近に控えた放課後、2人っきりの花火大会の予定が急展開を迎えた。

「先生、花火大会にみんなで行こうよ」

 提案したのはオトキョンこと超勘違い女。オトキョンの友達数人と先生と花火大会に行こうということらしい。

 

「え……」

 先生は私のほうをちらり、見た。

 

「じゃあ、俺の友達のイケメン4を誘うからそいつらも一緒ならいいかもな。そこにいる野咲カレンも参加な」

 

「イケメン4ってあの? 男子校のイケメングループ?」

 女子たちがざわつく。

 

 

 なにぃいいいいいいい!!!!

 

 せっかく先生と花火デートにこぎつけたのに……。なんでオトキョンとその友達と、イケメン4まで……総勢10人くらいになるんじゃ?

 

「いい? 京香と先生を二人だけにするように協力するのよ」

 小声でクラスメイトに指示を発する女王京香。

 

 オトキョン、友達に小声で強制的に命令しているし。先生のこと好きなんだ……。

 

「うちのお兄ちゃんも誘ってみるわ。野咲さんとお兄ちゃんいい感じなんでしょ? 趣味も合うみたいだし」

 大きな太い声で、オトキョンが提案する。

 

「えぇ? いい感じなの? 野咲さん、オトキョンのおにいさんと?」

 まわりの女子たちが騒ぎ始める。なんでそうなるの? 趣味? もしや、アイドル戦隊のアニメ??

 

「おまえオトタクと良い感じなのか? 趣味が合うのか……」

 半笑いの先生。笑いを必死にこらえている様子。

 

 先生は私の気持ちを知っているから、余裕だけど――少しくらい、やきもちくらいやいてほしい。アニメオタクの オトタク、じゃ嫉妬しないかな?

 


 【オトキョン視点】

 

 こんにちは。主役のオトキョンです。オトナの100円ショップの娘で、兄はオタクのオトタク。恭介先生のことが大好きな可憐な乙女、17歳よ。先生、二人っきりということに気を遣ったらしくみんなで花火大会に行くことに。

 

 そうよね、二人っきりはまずいもの。でも、スキを見て二人っきりになるわ。だって、先生も本当はそれを望んでいるじゃない? 絶対そうよ。

 

 イケ4とかいうイケメンといわれている男子高校生が来るらしいけど、私は恭介先生一筋よ。花火大会に浴衣を着て、女子力アップで先生に見せつけるのよ。日本人は女性のうなじに弱いらしいから。髪型は、アップにして……ふふふ。先生が来たわ。Tシャツにジーパンという普通の格好。私服も素敵よ。ダーリン。うふふふ。

 

 ちょっと、野咲カレン。先生に近づかないでよ。マジでむかつくわ。先生もあの子にちょっと優しすぎるわ。カレンと先生が何やら小声で話しているけど、まわりがうるさくて聞き取れないわ。

 

 「先生、なんでみんな一緒なのよ?」

 「そのほうが堂々と花火見れるだろ」

 「でも、二人きりが良かったな……」

 「変装してばれるより、みんなで来ましたっていうほうが楽しめそうじゃね?」

 それもそうかな……。

 

 イケメン4がオーラを放ちながら到着した。

 

 沢屋という通称さわやか系イケメン男が指をさす。

「あの真ん中のかわいい子誰ですかね?」

 

「かわいい子?」

 リーダーの王子が女子たちをくまなく物色する。

  

「カレンさんじゃなくて? 何人かいるあのグループ?」

 やんちゃ系イケメンの矢茶がかわいい子を探す。

 

 「ぽっちゃり系の女の子」

 意外なことを言う沢屋。ぽっちゃりはオトキョンしかいない。

 

 「アレは音名京香。通称オトキョン。うちの高校の2年生だけど」

 恭介が説明する。

 

 「ちょーかわいい!!」

 沢屋の目がハートになって輝いている。恋なのか?

 

 男一同が唖然と立ち尽くす。何も言葉を発するものはいない。

 「……???」

 

 「オトナの100円ショップの娘さんだよ」

 恭介がつけたして説明した。

 

 「あそこの店よく行くんですよ。オトキョン、いい名前じゃないですか。これから通っちゃおうかなっ」

 沢屋の瞳は本気だった。

 

 男一同の心の中――好みはひとそれぞれだからね。ブス専っているんだ……。

 

 「あれ、お兄ちゃんじゃない」

 オトキョンが遠くを指さした。

 

 「ごめん、店が忙しくておくれちゃったよ」

 オトタクが重そうな体を引きずりながら汗だくになって小走りでやってきた。

 

 ♢♢♢


 (オトタクの心の中)

 本当はどのシャツを着ようか迷っていて、結局ピンクのTシャツにしちゃった。

 アイドル戦隊のTシャツ、絶対カレンさん喜んでくれるよね。

 


 ♢♢♢


 さわやかイケメンの沢屋は、オトタクそっくりの強烈妹にひとめぼれ。本気でかわいいと思っている。人はどこに惹かれるのか惚れるのかは、科学では解明できない神秘的な謎である。

 

 オトキョンは先生のことが好きで、カレンが嫌いで。先生とカレンは両思いだけど……秘密で。複雑に絡み合う関係。花火を見に来たのだが、恋の火花が飛び散りそう?

 

 イケ4リーダーの王子様は、今は心を入れ替えて、強くなるべくトレーニングを積んで、良い男になるべくがんばっているらしい。カレンへの想いはすっぱり諦めたようだ。師匠の恭介先生とだったらむしろ幸せになってほしいと思っている。王子は根は良い奴のようだ。王子は最近、女遊びではなく筋トレに目覚めたようで、いい意味で健全に更生された様子。

 

「京香さん、その浴衣似合いますね」

 沢屋が声をかけた。

 

 なにかしら……この人?

 

「僕、沢屋っていいます。イケメン4のメンバー、一応やってます。以後、お見知りおきを」

 

 オトキョンが邪険な返事をする。

「はぁ?」

 また、私に恋しちゃった系男子ね。私には先生がいるから。少しくらい顔がいいからって、調子に乗らないでほしいわ。

 

 オトキョンはいつも勘違いしているので、基本的にモテている女だと思い込んでいる。今回は、本当に奇跡的に好かれているのだけれど……。

 

 転ぶふりして、恭介先生の腕にしがみつくわ。「きゃぁ」とオトキョンが先生のほうへ倒れると……。

 

「大丈夫ですか?」

 沢屋が、助けてくれた。まさに、白馬の王子様のようなさわやかな男。

 

「大丈夫よ」

 邪魔しないでほしいわ。せっかく先生にしがみつくチャンスだったのに……。

 

 沢屋の心はオトキョンにわしづかみにされた。気高く美しい女性だ……。沢屋は、オトキョンの虜になってしまったのであった。

 

 

 オトタクは、相変わらず自信満々でアニメ談義をはじめた。オトタク妹のオトキョンは、恭介先生に夢中。しかし、さわやかイケメンの沢屋くんがオトキョンに話しかける。

 

 人数も多い花火大会に大人数で来ていると、だんだん迷子状態に陥る。いつのまにやらあいつ、どこへいった状態に陥っていた。祭りの騒がしさと人数の多さが、夕方の涼しさや寂しさをかき消していた。

 


【恭介視点】


 俺の視線の先はカレンだった。カレンの浴衣姿はとても色っぽい。今日はいつもと違う、美しさがあった。紺色に朝顔の柄の浴衣を着こなす。大和撫子なカレンに見とれてしまった。アップにしたうなじが女性らしさをさらに感じさせる。アップにした髪も似合うな。元々美少女なのだが、和風な超美少女が今日は出来上がっているのだ。

 

 俺は、みんなが別な方向を見ているすきに、カレンの腕をさっとつかみ、走った。結婚式当日に連れ去られる花嫁みたいな状況。驚いたカレンの顔。

 

 「なんで?」

 「はぐれたって口実なら二人きりでも問題ないだろ。全ては人ごみのせいってことでさ」

 二人きりでいたいから、うまく抜け出したというわけだ。最初から俺はそのつもりだったがな。誰もいない林の中へ手をつないで入ってみる。

 

 花火が始まった。穴場らしく、ここからは木の影から花火が見える。そして、ここは誰もいないし誰も来ない。幸せな笑みを見せる彼女を見て……。俺は、ひどく愛しく思ったんだ。愛しいという言葉は思ってもなかなか言えない。素直じゃないなぁ、俺は。花火もきれいだけれど、カレンのほうがもっときれいで美しい。俺は、彼女に釘付けになっていた。

 

 まつりのあとの、静かになる時間は割と好きだったりする。あれだけ人数がいたのに、みんなどこへいったのだろう? 不思議な時間だ。静けさの中に余韻が残る。

 

 俺とカレンは林の中だった。花火はいつのまにか終わってしまったようだ。一瞬で散ってしまう美しさははかなくて、切ない気持ちになってしまった。

 

 みんなとは、本当にはぐれてしまった。俺は、あえてスマホの音を切っていた。二人の時間を邪魔されたくなかったのだ。ここは花火会場からだいぶ離れた場所で、誰もいなかった。カレンは、浴衣が少し乱れていた。走ったりすれば、乱れるだろう。俺を見上げたカレンの笑顔は、極上だった。幸せで極上な時間は二人を包んだ。虫の声が心地いい。もうすぐ秋が来る気配がする。二人だけで、もう少しここにいたい……。それくらいのわがままいいよな? 俺は、彼女の前髪をくしゅっと触ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ