オトナの100円ショップ
「100円ショップって、何でもそろっているよね」
「便利だよな、安いし」
「電動歯ブラシって性能いいのかな?」
「すぐ壊れそうな気がするな。安いから」
「オトナの100円ショップっていうサイトに電動歯ブラシがおすすめナンバー1って書いてあったんだよね」
「どんな100円ショップだよ」
「小型マッサージ器がおすすめとか、どうなんだろうね? 今から近所だから行ってみない?」
「俺にはさっぱりわからないな」
どうせ安さがウリのあやしい店なんだろうな。そんなことを思いながら、好奇心でオトナの100円ショップに行ってみる。
「ここだよ、最近オープンしたんだって」
なに? こんな近所にできたのか。結構近いな。
たしかに「オトナの100円ショップ」ってかいてある。もしや怪しいグッズを100円で売っているという不健全な店では?? 俺は慎重に様子を伺った。
「中に入ってみない?」
「え? まずくないのか? 高校生だろ」
「大丈夫だよ」
外装も普通だし、店内もいたって普通の店じゃないか? 怪しい感じではないし、外から見えないようにしてある店ではない。
「いらっしゃい、カレンちゃん」
「音名さん、お久しぶりです」
「オトナさん?」
中年の人のよさそうなおばさんがレジのところに立っていた。
「店長の音名です。この度近くの100円ショップから独立して、お店の名前は私の苗字をつけたんですよ」
「音名さんのお店のHPの作りがすごく上手で大ファンです」
「あらありがとう。小型マッサージ器おすすめよ」
なんでこともあろうにおすすめが小型マッサージ器で、名字がオトナなんだよ!! 絶対、勘違いしている人いるって! 店名改名しろ!!
でも、この店とのつながりがここで終わることはなかった。俺たちは、ある意味ここでの出会いに翻弄されていくのかもしれない。この名前、何とかならないのだろうか? 絶対間違った解釈しているお客さんがいるに違いない。そして、勘違いした客が遠方から来そうなネーミングだ。後日、俺一人でオトナの100円ショップに行ってみた。
「あら、お久しぶりカレンちゃんの彼氏さん」
彼氏じゃないけど……似たようなものだからまぁいいか……。
「最近のおすすめありますか?」
「最近、子供向けのオモチャを入荷したのよ」
「どんな感じのですか?」
「警察官ごっこができる手錠セット。お医者さんごっこができる診察セット。なかなかいいでしょ?」
「……今どきの子供って、そういう遊びするんですかね?」
「あら、今は小さいうちから職業体験させる時代でしょ。私も子供たちのために仕入れたんだけど 大人が買っていく割合高いのよ。自分の子供に買うのかしらね。でも、若いカップルが多いのよ」
「売れ行きは好調ってことですよね」
苦笑いの俺。笑いを必死にこらえる。
「おかげさまで。あと、ベビーローションの売れ行きが好調なの」
「……ここって、客層大人が多いですよね」
「そうなのよ。小さい女の子向けの人形も入荷したら、大人の男性が結構購入していくから、何に使うのかしらね」
おばさんマジで天然ですかな?
「音名さんって、入荷のセンスが独特ですね」
「うちの息子が選んでくるんだけど、結構大人のお客さんの売り上げが高いのよ」
息子さん確信犯だな……。音名の100円ショップの売上の品物と購買年齢層を調べたら面白いことになりそうだ……。そんなことを思っていたら、噂の息子が現れた。一度見たら忘れることができないインパクトのある男だ。
「息子のタクヤです」
なんだ、このいかにもオタクオーラは!!?
「はじめまして、林堂です」
一応、初対面だ。こちらも自己紹介をする。
メガネの真ん中をおさえながら、オタクな息子は自己紹介を始めた。
「僕、アニメの女性戦隊ものが好きで、100円でアニメグッズ売るのが夢なんです」
「なかなかアニメ100円の店って他にはないから、オタクの聖地とかになりそうですよね」
一応彼の意見に賛同してみる。
「ちなみに僕、アニメオタクなんでオタクのタクヤで、通称オトタクと呼ばれています。どんなアニメお好きですか?」
自己紹介しなくてもアニメ好きなオーラ、でてるな……。彼の着ているTシャツにアニメキャラが大きくプリントされているあたりもわかりやすいな。
「俺は、アニメはそんなに詳しくないんで……」
少々、ドン引きな俺。
「是非動画配信で見てほしいんですが、アイドル戦隊が今、一押しですよ」
オトタクの目は、キラキラ輝いていた。きっと、本当にアニメが好きなのだろう。稀にみる一目瞭然のオタクのオトタクであった。




