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再会しよう

第八十三話 再会しよう


 エリヤスエーミルとマーヤレーナを宿に迎え入れるとフレヤとガッコフルーグに言ったら、賛成してくれた。俺とゲルで迎えに行くことになった。まずは久しぶりにグエルターク商会に行ってエリヤスエーミル達の家具を運んで貰おう。


 翌日、ガレンドールの街にあるグエルターク商会の門を通る。久しぶりだ。


 「あら、ひさしぶりね、エージ君。ま、座って。残念だけどね、生理が来ちゃったのよ。また頑張るわね」


 セリーリアの母、メリヌがいた。今日は露出が少ないワンピースだ。良かった。この人は元アラフォーの俺にとってドストライクなのだ。ま、ゲルが一番で、実は二番目がメリヌだ。セリーリアは三番目だな。ごめんよ。


 「頑張るって、あの」


 ゲルが顔を赤らめながら返答している。


 「あ、そうそう。セリーリアから話を聞いたんだけど、支離滅裂でね。少し怒ったら支離滅裂なのはエージ君だって。そうだねって夫と二人で笑ってしまったのよ。待っててね、今呼んでくるから」


 メリヌは打ち合わせテーブルに俺とゲルを座らせると部屋から出て行った。


 「もう。エージが変な本を書くからだよ」


 「まぁ、グエルターク商会は男の子が生まれた方が良いよ」


 「まぁね・・・」


 ゲルが納得していると、セリーリアが来た。


 「おはようございます、エージ様。紅茶をどうぞ」


 セリーリアは紅茶を出してくれた。うん、セリーリアの淹れる紅茶は旨い。


 「怒られたんだって? ごめんな」


 「もう。支離滅裂だって言われましたよ」


 セリーリアが頬を膨らませている。ちょっと可愛いな。


 「エージ君、わざわざ済まないね。セリーリアから話をきいたんだが、エージ君の行動力にと我々の頭が付いて行かない状況なのだ」


 セリーリアの父親、ヘンリッキが入って来た。メリヌもいる。


 「ええ。説明します。事の始まりは俺がミコドールに家を買ったことまで遡ります。裏山が付いてましてね。そこにお茶の木が生えていたんです」


 「なんと」


 「ええ。しかも、ダンジョンまでありました。僕の所有で、管理はゲルです。こうみえてゲルはSランク相当の魔法使いなんですよ。ダンジョン以外では魔法は使わないようにしているんです。頼まれても使いませんけどね」


 「ええええ!」


 セリーリアが驚く。


 「ダンジョンの五階層に温泉が湧きましてね、お風呂付きの宿を魔法でちょいちょいと建てたんです。ゲルはダンジョンマスターですので、ダンジョン内はいかようにでもなるんですよ。そこで温泉宿の備品一式をお願いしたいと」


 「うわー。ゲルちゃん魔法使いだったんだ。セリーリア、あなたも習ったら?」


 「まぁ、メリヌさん。でですね、俺とゲルがドワーフの都まで赴いたんですが、ドワーフの都って地下にあるんです。魔法でちょいちょいと五階層とドワーフの都を繋いじゃいまして、ドアを開くとドワーフの都がある状態です」


 「なるほど、信じられないが君だしな・・・一応納得するよ」


 「ヘンリッキさん。なんか引っかかりますがありがとうございます。で、ドワーフと交易が出来ないかっていう話です。金物細工と果物が豊富なんです。逆に例のハーブチキンがもの凄く喜ばれましてね。ドワーフ相手にお店をできないかなって」


 「ふむ。商機を我々に譲ってくれるのか? 相変わらずお人好しが過ぎるんじゃないか? 王国と交易が出来なくなったので、非常にありがたい」


 「お願いします。我々はあくまでもメーカーで、商品を生産するまでで精一杯です」


 「ふむ、わかった。売り上げのいくらかを納めればいいな。詳細はフレヤさんと話せばいいか?」


 「ええ。でですね、ラグスドールなんですが」


 「ああ。ラグスドールは立ち入り禁止と聞いている。何があったのか?」


 「王国の策略でペストという疫病が持ち込まれました。エリヤスエーミル様が現地で指揮をとっていましたので、四十日ルールでガレンドールに入れないので新しく作った温泉宿に泊まっていただこうかと。家具類は全く無いのでお屋敷から運んで来て貰えませんか? テントで寝泊まりするらしいので。エリヤスエーミル様は病気に羅患されていないのはわかっているので、問題ないかと」


 「なるほど、わかった。私がお願いしてこよう。温泉か。聞いた事が無いな・・・」


 「地下からお湯が湧き出るんです。硫黄が混ざっていて、お湯に浸かると暖まるしお肌がつるつるになるんですよ」


 「お肌がつるつるになるの?」


  ゲルが口を挟むと、メリヌが食いついてきた。


 「これからエリヤスエーミル様を迎えに行きますので、ミコドールに来て頂ければ入れますよ」


 俺とゲルはゲルターク商会を出るとバーニクとバーサシに騎乗する。目立つ。かなり目立つ。翼は収納しているが、こちらの常識では巨大な美しい白馬だ。


 街の門を出ると、騎士に守られたテントが見えた。俺のテントと同じ、A型テントだ。グエルターク商会は既に納入していたんだな。A型テントはドーム型が出てくる前に主流だったテントだ。断面がA型で、三角柱を横に置いた形状をしている。ドーム型テントはアルミの合金である7000形ジュラルミンでポールを作る必要があるが、A型テントは木材で可能だ。


 「うわ。本当にテントを張っているよ。エリヤスエーミル様凄いね」


 「だから迎えに来たのさ」


 「うん。ペストは大丈夫だね。安心して」


 俺とゲルは下馬して近づくと、騎士達に行く手を阻まれた。十人はいるだろうか。


 「あ、みなさん通して下さい。私の恩師に当たる方達です。無事生還しました、エージさん、ゲルさん」


 「顔を見せてくれるとは嬉しいぞ、剣聖殿」


 マーヤレーナは俺の事を剣聖と呼んでくる。人がいるところでは止めて欲しいな・・・


 「その呼び方はちょっと・・・」


 俺が畏まると、後ろから大声が聞こえてくる。


 「事実だから仕方有るまい。皆、私など子供扱いだったぞ。エージ殿はとんでもない使い手なのだ」


 護衛騎士のトーレの発言に、皆がどよめきの声を立てる。


 「まずはお礼を言わねば成らぬ。エージ殿が授けてくださった技で生き延びることができたのだ」


 トーレが俺に握手を求めて来た。ガッチリと握手をする。


 「はい? なにかあったのですか?」


 「ほら、剣聖殿が鎧騎士の息の根を止める技があっただろう。あれだ。刺客を放たれてな、我ら三人が同時に襲われたのだ。皆短剣で倒したがな」


 「く・・・俺はマーヤレーナ様派だ」


 「剣聖殿の奥方様は・・・羨ましい・・・」


 マーヤレーナの声の後ろで、騎士達の率直な声が聞こえてくるが気にしないことにする。ゲルは聞こえたのか、ゲル派の騎士に小さく手を振る。止めなさい。しかし刺客か・・・


 「ミコドールに宿を建てましたので、四十日間はそちらで逗留して頂こうかと思いまして。テントでは大変でしょうし、警備も不安が残りますよね」


 「そうなのですか? では遠慮はしませんよ。行きましょう。ミコドールに行きたかったのです」


 「只ですね、建物が出来たばっかりで、何も家具が無いのです。グエルターク商会にお願いしてお屋敷から家具を運んで貰いますので、それまではご不便をおかけいたします」


 「いや、かまわん。でもこの新しいテントはなかなかだったぞ。今までは野ざらしで寝かせていたので、少しは兵達に良い思いをさせてやれるぞ」


 「は。マーヤレーナ様、ありがとうございます。生産しているグエルターク商会も喜ぶと思います」


 「では行きましょう! しかしエージさん達の馬は凄いですね。白くて大きく、美しい・・・」


 「まぁ、あの。あ、ミーアミーサ様は?」


 ミーアミーサはラグスドール公の娘だ。


 「あ、ミーアミーサもお願いしていいですか? テントの中に居ます」


 「良いですよ。では行きましょう」


 メンバーはエリヤスエーミル、マーヤレーナ、トーレと護衛騎士五名。残りの五名はテントを撤収し、引き上げるそうだ。


 俺の家に到着し、ダンジョンの五階層に行く。道中、ダンジョンの事を説明したが、驚いていた。グリフォンの姿が見えない。かくれていてくれたか。ナイスだ。


 宿に行くと、ガッコフルーグとフレヤ、ロキが待っていた。


 「お待ちしていました、エリヤスエーミル様、マーヤレーナ様。私はワイヴァーンアックス商会副会頭のフレヤ、こちらが会頭のガッコフルーグです。このエルフは紅茶をタンとしているロキです」


 フレヤの紹介で、兵達からどよめきの声が上がる。


 「不屈の蒼穹士だ・・・」


 「希望の蒼穹士だ・・・」


 ガッコフルーグはにやりとして背中の斧を取り出す。彫り込んでいる希望の文字を見せる。


 「き、希望の斧・・・」


 やはりガッコフルーグとフレヤの人気が凄い。


 俺は浴場を案内する。三十人は入れる湯船を見たときは皆が驚いていた。


 「大公家のお屋敷よりも大きな湯屋です・・・凄いですね」


 「エリヤスエーミル様、マーヤレーナ様、ミーアミーサ様、どうぞ温泉に浸かって疲れを落としてください。温泉は美容にも良く、お肌がつるつるになります」


 俺は温泉の説明をする。


 「匂いがしますね。なんの匂いですか?」


 エリヤスエーミルが匂いに気が付いた。


 「地下から湧き出るお湯に、硫黄やいろいろな成分が溶け込んでいて、体に良いんです。特に疲労回復とお肌に効きます」


 「よし、トーレ、入りましょうか。騎士達も入りましょう」


 驚く騎士達の鎧を脱がし、皆で温泉に入っていった。騎士達は畏まっているが、一緒に温泉に入ってエリヤスエーミル派を大きくしていって欲しい。


 「ではミーサミーサ、一緒に入ろう」


 「はい」


 マーヤレーナとミーアミーサは女湯に入って行った。さて、こちらは準備をしないと。


 「エージさん、大公家のお屋敷からお荷物が」


 エルランドが俺に教えてくれた。


 「エルランドさん、服のままでいいから、お風呂に入ってお湯加減いかがですか、と聴いてきて。お湯の温度とかね。熱かったら水を入れて。露天風呂の説明もお願いしたい。あと体を洗う場所などね。モーラさんは女湯をお願いします。偉い人が来たら必ず確認してください」


 二人は頷くと、浴場に入っていった。


 俺はミコドールの家に戻ると、大量の家具が運び込まれていた。俺は宿の奥の部屋二つに家具を運んで貰った。奥の部屋は大きめになっている。エリヤスエーミルの部屋とマーヤレーナの部屋だ。騎士用に簡易ベッドが運び込まれている。それぞれ部屋に運んで貰った。個室だ。


 浴場の広場に、休憩用のテーブルと椅子を置いて貰う。


 これで良し。あとは食事か。冒険者四人組とルー、ゲルが作ってくれている。パンとハーブチキンだ。ハーブはあらかじめ大量に調合しておいたので、誰でも作る事が出来る。


 さて、一休みしよう。

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