温泉宿を建てよう
第八十一話 温泉宿を建てよう
「えー、ではこれからダンジョンに行きます」
俺は皆に言い放つ。ガッコフルーグ、フレア、ゲル、ロキの最初期メンバーと、新たに仲間になった冒険者の四人組、ルー、モーラとノーラの親子とでダンジョンに行く事にした。
「皆さん、これを」
俺は皆に巾着袋を渡す。
「エージ君、何?」
フレアは不思議そうな顔をしている。
「まず皆さんに言っておくことがあります。帰って来るまでがダンジョンです。皆さん気を抜かないように。お配りしたのは小銅貨三枚の材料で作った水飴です。疲れたら嘗めてください。いいですか、おやつは小銅貨三枚までです。タオルも入ってますが、後で使います」
「何いっているんじゃ?」
フフフ・・・一度やってみたかったのだ。俺は皆の不思議そうな顔を見ながら更に言い放つ。
「質問ありませんか」
決まった。完璧な遠足遊びだ。
「あ、すんません。ダンジョンって何がでるのですか? 面接でもダンジョンって言われてましたけど何を言われているのかさっぱり」
Bランクパーティのブロルが質問をしてくる。確かに。一切ダンジョンの説明をしていない。
「良い質問です。魔物はアイアンゴーレムが二十体とヤギが一頭です。ブロル君には頑張って貰いましょう。じゃあ行きますよ」
俺は焦るブロル達を尻目に歩いてダンジョンに向かう。ダンジョンに到着すると、俺は巨大な扉に手を当てて扉を開く。
「皆さん、このダンジョンコアに触れてから中に入ってくださいね」
ゲルがダンジョンコアを取り出すと、やはり不思議そうな顔で触って行く。
「皆さん、ダンジョンコアに触りましたか? 一階層だけ魔物を配置していますので、ダンジョンコアを触っていない者、ゲルが味方と認識していない者はゴーレムに襲われますので気を付けてください。因みに十階層がボス部屋ですので入らないようにしてください。ボスはゲルの本気モードですので」
「ひ」
「おねーちゃんボスなの?」
冒険者四人は悲鳴を上げるが、正体を知らないノーラは可愛い声を上げる。ノーラが来たら可愛さで悩殺されるな。
「うん? そうなのか? いっちょ戦うか。全部燃やしてやるよ」
「フレヤさんは十階層の中ボスですので無理ですね。ガッコさんもです。もしダンジョンが攻略されそうになったら配置に就いてもらいます」
「駄目なのか・・・」
「仕方ないの。我らはダンジョンの防衛組じゃからなぁ」
「では入ります。ゴーレムさんお疲れ様です」
俺達がずらりと並んだゴーレムの間を歩いて行く。ゴーレムは足を鳴らして敬礼をする。
「かっこいい・・・」
「ひ」
娘のノーラは楽しそうであるが、母親のモーラは腰が砕けている。冒険者の四人は珍しそうにゴーレムを眺めている。俺は二階層に降りる。
「さ行きますよ。二階層はホップ畑です。我が商会の主力商品、ビールの材料です」
二階層はホップ畑だ。緑が広がり、美しい階層である。ホップ畑は既に大きく広がっている。胡椒と唐辛子もここに植えたのか。
「うわぁ。凄い!」
「勇者ノーラ!」
「あい!」
「アソコのヤギを頭を撫でて来い!」
ノーラは果敢な突撃を見せたが、草を喰んでいるヤギに顔を嘗められ、帰ってきた。
「きゃー嘗められた!」
ノーラはモーラに顔を拭かれている。
「ゲル、家を二棟お願い」
「三棟で無くて?」
「ルーさん、ロニヤ、ロキの家の隣に家を建てますので使ってください。残念ながらブロルの家は三階層に造ります」
ゲルは呪文を唱えると、二棟の家が地面から盛り上がって来た。壁は日干し煉瓦だろうか? ゲルは地上でも魔法で家を建てることができるのであるが、建築ギルドがうるさそうなので止めているが、ダンジョン内は遠慮しない。ガンガン建てる。
「あ、家!」
ロニヤは嬉しそうな声を上げた。
「凄い!」
「あ、後でお願いします。後ろにいるのが農作業用のゴーレムです。ロキの命令で動きます。じゃぁ三階層に行きますよ」
三階層に降りる。斜面が広がっていた。ここも青空で、広い。ひたすら斜面が広がっていた。
「ここは私も始めて見ます。石灰室の斜面ですね。葡萄栽培に適した場所です。ここで葡萄を作り、葡萄酒の原料となります。ゲル、作業小屋とブロルの家を」
ゲルが呪文を唱えると二棟に建物が地面から湧き出てきた。
「俺の家?」
「ブロル君、残念だけどロニヤとは別居です。一つは作業小屋ですので農具などを締まったり休憩に使ってください。二層と三層がロキの管轄です。じゃぁ行きますよ」
「え! あ、別々に住むのか・・・」
ブロルは残念そうな顔をしている。
俺は四層に降りて行く。四層は硝石のフロア。見渡す限り、白い大地が広がっている。向こうには山が見える。
「えーこの白いの硝石という鉱物です。用途は今は秘密です」
フレヤとガッコフルーグは手で触りながら眺めている。
「これなんじゃな・・・」
俺は五階層に行く。
「五階層は温泉と硫黄です。目の前には山がそびえ立っている。裾は谷で、湯煙を上げる沼がある。温泉だ。
「じゃあゲル、お願い」
ゲルが呪文を唱えると、大きな建物が二棟、せり上がってきた。皆がおおっと声を上げる。一階が酒場、二階が宿の建物と、大きな湯屋だ。総煉瓦の美しい建物である。
「ここがノーラさんとエルランドさんの温泉宿です。調度品はセリーリアを呼んで仕入れましょう」
「こんなに立派な宿を我々に?」
エルランドはモーラの手を握りながら感嘆の声を上げる。
「お願いします。因みに五階層は直接俺の家と繋がっているので、素早く来れます。温泉ですが、硫黄泉と言う奴ですね。一般的には病み上がり、美容によく効きます。じゃ会い来ますか」
「エージ君、これが美容に効く?」
「ええ。温泉です」
湯屋は中に入ると大きめのフロワーに成っている。フロワーでは簡単な演劇やイベントが開催出来る。今はがらんとしたフロワーだけだ。奥には入口が二つあり、男女別の脱衣所とお風呂がある。お湯は温泉が噴き出している沼から樋で流れて来る。お湯が流れ出しているが、まだ風呂場には溜まっていない。湯船は二十、三十人が入れる大きさだ。大きいよ。風呂場から外に出ると、壁に囲まれた露天風呂がある。さらにはサウナ小屋まで。外から釜を炙り、水で蒸気を作る仕掛けだ。人手がいるので可動はまだだな。
「お湯が溜まっていないので宿を見に行きますよ」
宿の一階は食堂兼酒場だ、宿は流行らない気もするが、一階の酒場はこれから増えるであろうドワーフ達への福利厚生だ。働いてもらった給料を酒場で使って貰おうという作戦だ。
「二階は宿ですか?」
ノーラが聞いて来る。
「はい。奥の扉を開けるとノーラさんとエルランドさんの居住スペースです」
「何から何まで・・・すみません」
「いえいえ。明日から、練習がてら、このメンバーの食事をお願いできないでしょうか? ミコドールのレシピは少しづつ教えますので」
「ミコドールの料理ですか?」
「エージ君は料理も上手なのよ。しっかり学んでね」
「は、はい。フレヤさん」
フレヤは直立不動のエルランドの肩を叩く。
「さて、お湯がちょうど良くなったかな? みんな、お風呂に行きましょう」




