ドワーフと話そう
第七十九話 ドワーフと話そう
「じゃぁ行きますか」
昨日、ドワーフの地都ドルゴグゲークから帰ってきて、疲れたのかすぐに寝てしまった。これからドワーフと話をしに地都へ赴くのだ。メンバーは俺とゲル、ガッコフルーグとフレヤの四名だ。俺とゲルは白龍の鎧、ガッコフルーグはミスリルの鎧、フレヤは元俺の革の鎧を着ている。ガッコフルーグの正装した方が良い、との意見を取り入れた。鎧が正装なのだろうかという疑問が湧くが・・・
ペガサスはその辺で草を喰んでいるし、グリフォンは四頭でひなたぼっこをしている。
俺の家の壁とダンジョンの五階を繋げて貰った。近かったのか、ゲルは魔石の消費無しで繋げてくれた。ドアの横にドアがあるという不思議な風景である。
「便利ね」
俺達は五階層に出る。平原にドアが二つ立っているというこれまたシュールな風景だ。
「ゲル、帰ってきたら湯浴み場を作ってよ」
「あら、素敵ね。エージ君の家からすぐに来れるじゃない」
「ええ。温泉だから、肌がすべすべになりますよ」
「ゲルちゃん」
「なんですか? フレヤさん」
「今すぐ作りなさい」
「ほら、フレヤさん行きますよ。フレヤさんはお披露目の意味もあるのですから」
俺はドアを開けて洞窟に入る。あっという間にドワーフの洞窟に出る。
出て、扉を開けると、ドワーフの地都、ドルゴグゲークだ。
「ここがガッコの古里ね。本当に地下にあるんだ」
「ほら、中央の建物に長老が居るからいくぞい」
ガッコフルーグを先頭に地都を歩いて行く。行く先々で、ガッコフルーグは呼び止められて鎧を見られていた。ミスリルだから珍しいのだろう。次に俺とゲルの鎧を見ると、皆は「龍の鱗だ・・・」と絶句していく。最後にフレアさんの鎧を見ると、「ガルーグ工房の新作じゃ?」と声が漏れる。正装って、単に自慢したいだけじゃ・・・
中央の建物の前に到着する。岩を削って出来た建物だ。岩山の前面だけ綺麗に建物っぽく削られていて、後の三面は岩肌になっている。見たことが無い建築様式だ。
「おい、長老はいるかの?」
ガッコフルーグは若いドワーフを捕まえて問いただしている。
「あ、ガッコさんですね。お待ちですよ」
中に入ると、大広間に通された。テーブルに座ると長老と四人の年寄りドワーフが現れた。
「この度はダンジョン化した洞窟を討伐していただき、誠に申し訳無かった。出来事に頭が付いていかず、肝心のお礼を言っておらなかった。誠に申し訳無い。
「ご長老、誰も死んではおらぬし、こっちはどうとも思っておらぬのじゃ。むしろガレンドールと地都が繋がってワシは嬉しいの」
「ええと、頭の整理をしたいのだが、今はガレンドールと繋がっているのか?」
「そうじゃ。ガレンドールのミコドールという我々の屋敷がある土地じゃな。このエージが裏山付きの家を買ったら、裏山にダンジョンが出来ていたのじゃ。ダンジョン同士を結んだんじゃよ。もの凄い魔力が必要で、恐ろしいくらいの魔石を使ったわい」
「して、何用で地都へ 何かを作るのか?」
俺が口を挟む。王国の成り立ち、太陽神エスルートの正体、王国を覆う結界が魔法使いを産んでいること。結界が大きくなり、ガレンドール全域を覆い、ガレンドールで魔法使いの運用が可能になったことで安全保障が脅かされていること。
「なるほど、それで王国に対抗するために武器を作るから手を貸して欲しいと」
「そういう事です」
「発注してくれたら斧でも剣でも弓でも納めるが?」
俺はちらりとガッコフルーグとフレアを見る。フレアは頷いてくれる。
「ここからは極秘の情報になります。決して漏らさないことを誓って頂けますか?」
俺は念を押す。長老は頷く。
「硝石という鉱物と炭の粉、硫黄の粉を混ぜると燃える薬、火薬になるんです。火薬を細い鉄の筒に入れ、これくらいの鉛の玉を撃ち出します。ガッコさんのミスリルだって打ち抜けます。量産して遠距離で魔法使いを狙い撃ちする作戦です」
「火薬? 鉄の筒?」
「ええ。銃と呼びます」
「銃・・・」
「はい。鋳込んで作ろうと考えているんです」
「鋳込む? 鉄はるつぼじゃ溶けない。魔法使いが要るぞ」
鉄は千五百℃で溶ける。一般的な炉では溶けない。
「もちろんです。まずは反射炉という高温の炉から作ります。L字型の炉なんです」
「鉄はどうするのだ?」
「砂鉄が採れるんで、石炭が欲しいです。こっちにありませんか?」
「うむ、ある。黒い石だろ。ガッコフルーグ、銃とか反射炉はわからないが、本気なのだな? 本気で王国と喧嘩をするのだな?」
「仕方ないのじゃ。黙って殺される訳にはいかぬし、ラグスドールは策略で王国から疫病がもたらされてしまったのじゃ。ラグスドールの人間が半数は死ぬと思われるのじゃ。王国も疫病が流行っており、王国の人間も大量に死ぬのじゃ。しばらくは王国とラグスドールに行ってはならぬぞ。疫病がうつるのじゃぞ」
「・・・王国から数人帰ってくるのだが・・・」
「その人達は帰ってきたら四十日間は地都の外で隔離してください。四十日して発病が無ければ、大丈夫です」
「・・・そうか・・・」
「俺はガレンドールへの侵攻は確実だと思っています」
「わかった。その反射炉だかをテラスに作るのか? 済まんが場所がないのだ」
「いえ、場所はこちらにありますので、人を貸して貰えないかと。石炭も売って頂けるとありがたいです」
「それならこちらはドワーフを出すぞ。正直、仕事が少ないのだ。逆にありがたい。何人くらいなのだ?」
「最初は数人、一年後をめどに百人」
「わかった。そのためにダンジョンを繋いだのか。魔石の使う量が尋常では無くて気が狂ったと思ったぞ。よし、食い物と酒だ! 昨日頂いた酒を持ってこい!」
女のドワーフが棗、石榴、杏などの乾燥果実、川魚と山菜の炒め物、肉の串焼き、硬いパンを持ってきた。
「済まんが、山奥なのでたいした物がないのだ。数日間作っていただいた鶏肉はびっくりしたのだ。あんなに旨いものは山では食えないのだ」
あ、乾燥石榴食べたい。杏もある。欲しい。
「さぁ樽を開けるぞ。新しい酒なんだろ、ガッコフルーグよ」
「いかにも。まずは飲んでみてくれい。ワシ等には普通のエールでも貰おうかの」
女中のドワーフが長老達にビールを注いでいく。シュワシュワの泡に驚き、透明度に驚いている。
「まずはグッと行け、ご長老。うちの主任醸造家の渾身の造りじゃぞ」
長老はビールを一気に飲む。フフフ・・・髭に泡がついているぞ。
「わし好みのスッキリとした味わいだ。凄いぞ。ガッコフルーグ。今すぐ売って欲しい。若いのを使わすぞ」
「ま、待つのじゃ。先月材料を見つけて作り始めたばかりなのじゃ。これから材料を増やして沢山作りたいのじゃ」
「ドワーフがいるのならいつでも言え。出す」
「長老、ワシ等ドワーフは酒造りに向かないのじゃ。熟成前に飲んでしまうかのう。ワッハッハ」
「言えている! ワッハッハ」
他の長老もビールを飲んで驚いている。凄いだろ。
「長老様、この石榴だとか杏は我々に売って貰える量はありませんか?」
俺は長老にお願いしてみる。旅の貴重なビタミン補給になるし、色々な食材があるのは純粋に嬉しい。
「腐るほどあるぞ」
「栗だとかリンゴとか有ります?」
「有るぞ。果物は豊富なのだよ。買ってくれるのであればありがたい。こちらはあのチキンを頂きたい。あれは旨い」
「ん? なんじゃ、果物でも卸すのかの?」
「ガッコさん、まずは我々が食べる分から買いましょうよ」
今回で第二章は終わりです。
沢山の方が読んで下さいました。
これからもよろしくお願いいたします。




