魔物を倒そう
第七十六話 魔物を倒そう
俺はドワーフ二人に洞窟へ続く扉の隙間、ゲルが火の玉を打つ為の隙間を塞いで貰った。ゲルの手だけ入る穴が開いている。石を積んで隙間を塞いだが、泥で目地を埋めて通気しないようにした。これで酸欠を保てるだろう。
「あれ? 火の玉がすぐ消えちゃうよ」
ゲルが不思議そうに俺を見る。
「よし、洞窟の中に酸素は無くなった。火の玉を打ち込む穴にも蓋をしよう」
泥で全ての隙間を埋めてしまうと、俺達は休憩に入った。
「ゲル、魔物を探知出来る?」
「うーん、長すぎて、ちょっと・・・でもこちら側に魔物は居ないようよ・・・あ!」
「どうした!」
俺は思わずゲルに駆け寄る。
「ダンジョンの真ん中から魔物が溢れ出た!」
「なんだと!」
俺も思わず声を上げてしまう。
「大丈夫よ、エージ、すぐに死んで行くね。ダンジョンの魔力が尽きるまでこのままかな。わぁ凄い。どんどん魔物が溢れ出てくるけどどんどん死んで行くよ」
「んーとりあえずベリグフーグさん、状況を知らせてあげてくれませんか。ヴァイシュララナ、行ってきて」
「は。ベリグフーグ氏、行きましょう」
ヴァイシュララナはベリグフーグを乗せて飛んで行った。
「さて、残りは死体の片付けをしますか。ドュリタラーシュトラ、頼むよ」
「クェェェェ」
ドュリタラーシュトラは死体を軽々と咥えると、どんどん外に運び出した。
「お手伝いありがとうございました。俺はエージと言って、ガレンドールから来ました。こちらは妻のゲルです」
「あ、はい。私は弟のメルガーです・・・凄い魔法ですね・・・」
「うふふ。褒められたよ」
「死体も無くなったし、少し食べようか」
俺は焚き火を焚くと、メルガーと三人で硬いパンと干し肉を食べた。改めて今いる場所を見る。岩盤を掘られた大空洞だ。感覚的には詰め所っぽい。詰め所の奥に大きな扉があり、ドワーフの地都、ドルゴグゲークに行ける様になっている。
「魔物爆発湧出は何回も見たけど、只待っているだけで良いなんて初めてだよ」
ゲルは感心して紅茶を飲んでいる。
「全くです。何と言っていいのか・・・地都が全滅する恐れがありました・・・まだ魔物は溢れているんですか?」
「ええ。まだまだね・・・数日はこのままよ」
「ゲル、時折火の玉を打ち込んでよ。空気が少しずつ漏れ込むと思うんだ」
「・・・・」
「ゲル、どうした?」
ゲルは小さく呪文を唱えると、小さな雷が起きた。
「うわ!」
俺とメルガーは酷く驚いた。
「なんかね、モリモリと力が湧いてくるの。雷の呪文が使える様になったよ。知識としては知っていたけど、発動しなかったからね」
・・・もしかしたらいわゆる「レベル」みたいなものが有るのかも知れないな。スキルも本当にあるのかも知れないが、まぁどうでもいいや。
「ゲル、おめでとう。でも洞窟に向けて打つのは火の玉だぜ」
「うん。じゃあ打ってくるね」
ゲルは数発の火の玉を打ったが、いずれも不発だった。空気は漏れ込んでいないな。
「メルガーさん、俺達はスタンピートが終わるまでここで監視します。先に休んでください。違いますね。テラスにお送ります。ドュリタラーシュトラ、送ってあげて」
「クェェエ!」
「さ、乗ってください。送ります」
「済みません。明日の朝、様子を見に来ます。迎えに来て頂けると助かります」
メルガーは帰っていった。一週間はここに貼り付けか・・・
「ね、エージ、先に寝なよ。交代で監視するよ。まぁエージが考えてくれた敵意を感じる魔法があるから、寝ていても大丈夫だけどね」
俺は木製の椅子に横になると眠りに就いた。
目覚めたら真夜中だった。ゲルのうめき声で目が覚めたのだ。
「どうした!」
「エージ」
「どうした」
「うち、魔物を呼び出せるようになったよ・・・」
「ほほう? どんな?」
またレベルが上がったようだ。凄いな。女神だから、覚える魔法が凄い。
「うーん、じゃぁドワーフよ出でよ!」
空中に人影が浮かび、地面に落ちた。結構いい音が響いたぞ。ドワーフだ!
「グボォ!」
ドワーフは寝間着だ。落ちた衝撃でのたうち回っている。
「本当にドワーフが召還された! ん? ガッコさん?」
「なんじゃなんじゃなんじゃ? ここは何処じゃ・・・地都への入口門じゃ。はて、夢か?」
「キャーごめんなさい! ガッコさん! 魔物召還の呪文を唱えたら、ガッコさんを召還しちゃったの!」
「ん? 白龍ではないか。エアドール殿も? 何しているのじゃ?」
「いや、ガッコさんを魔法で呼び出しちゃったんです。今は地都へ続く洞窟がダンジョン化しちゃって、今はスタンピート中なんですよ。ゲルの魔法で空気を無くしたんで。今は魔物が溢れては死んで、溢れては死んで、を繰り返しているんです」
「むむ? エアドール殿、本当か? んんんん! なんじゃと! ダンジョン化だと!
ス、スタンピート!」
ガッコフルーグは非常に驚いた。
「不味い、戦う準備じゃ! あ、斧が、ワシの斧が無いのじゃ!」
「ガッコさん、大丈夫ですよ。湧き出てもすぐ死んでしまう状態になってますので。ガッコさんも入ったら駄目ですよ。死んじゃいますから」
「ん、ん、ん? まぁわかったぞい。で、ワシはどうしてここに居るのじゃ? ああ、白龍に召還されたのじゃな・・・」
ガッコフルーグはようやく落ち着いて来た様である。ガッコフルーグは入口まで行くと、不思議そうに扉を眺めている。
「入っちゃ駄目ですよ。呼吸が出来ないようになっているんで」
俺がガッコフルーグに注意をすると、ゲルは扉の前に立ち、掌大の泥の扉を開けると火の玉を打つ。酸素が無いため不発になる。打ち終わると泥で塞ぐ。
「成る程のう。地下ダンジョンでは余り火は使わぬ様にと、注意されるが逆手にとったのじゃな。スタンピートは通常一週間は続くので、このまま待機なのじゃな?」
「あっあっあっうげぇぇぇ」
「どうした、ゲル」
「フレヤさんから何か届いたよ・・・気持悪い・・・」
ゲルは懐から斧を取り出した。刃に希望と書かれた希望の斧だ。
「ワシの希望の斧!」
ゲルは次にミスリルの鎧を取り出した。ガッコフルーグは器用に独りで装着していく。
「手伝いはいらぬぞい。おう、フレヤがお主等の鎧を作り終えてたぞい。白くて格好いいぞ」
「え? あっあっあっうげげげげ」
ゲルは大量の鎧を取り出した。人間用の鎧が二つ、良くわからない鎧っぽいのが二つ。
「デザインはエアドール殿の革の鎧を採用じゃ。因みに革の鎧は製作料だっていってフレヤが着ているぞい。凄く嬉しそうだったぞ。馬がいるんじゃろ? 馬の鎧じゃぞ、それ」
金貨十枚もした俺の鎧が・・・
「・・・ありがとうございます?」
「気持悪いよ・・・でも着てみようよ、エージ」
俺はゲルに鎧を着せて貰う。純白だ。ゲルの純白の鱗を細長く柵にし、つなぎ合わせて出来ている。皆に好評で、フレヤさんが欲しがった俺の王都の新作に似ている。
ゲルが驚いた顔で見ている。
「エージ、カッコイイ・・・バーニク、バーサシもおいで!」
ゲルはペガサスを呼ぶ。
「ヒヒン!」
「おお、それが二人の馬じゃな。白くて大きいのう」
「さ、私の鱗でできた鎧を着けるよ。大人しくしてね」
「ヒヒン!」
バーニクとバーサシは直立不動で立っている。ゲルは脛当て、テールガード、胴に着るステーブル・ガードを着せる。ステーブルガードは馬の胴を覆う布なのだが、鱗を短い柵に加工し、つなぎ合わせる事で馬の曲線でも着れるようになっていた。
「バーニク、男前だぞ」
「ヒヒン!」
バーニクも喜んでいるようだ。俺は早速乗ってみる。
「どう?」
「凄いわ、凄いわ。いいよいいよ。ね、魔剣持って。うちから魔力を送るから。バーニクも翼を出しなさい」
俺は七色に光る魔剣を受け取る。バーニクは魔法の翼を思いっきり広げる。
ゲルは鼻を押さえ始めた。鼻血が出ている。
「凄い・・・格好良すぎて鼻血がでたよ・・・」
「馬じゃ無くてペガサスじゃったか・・・まるで地上に降り立った神のようじゃぞ・・・まぁ戦場では目立ち過ぎて的になるじゃろうがな。まぁ悪知恵は地上に降り立った神というのは間違いないぞい。悪知恵神じゃな」
「え? なにその言われよう。ゲルも着なよ」
俺は降りてゲルの鎧を手に取る。手に取る・・・素晴らしい。素晴らしいデザインだ。
俺はゲルに鎧を着せる。
「エージ、あの、この鎧おっぱいを強調しすぎじゃない?」
腰はくびれ、スカートが付いている形状だ。胸の部分は細かな柵で微妙な曲線が描かれている。ゲルの豊かな胸を圧迫感なく覆う事が出来る! そう! くびれた腰と相まってゲルの胸が強調されるデザインだ!
「くう、エロ過ぎる。フレアさんは神か? 別に露出が無いのにこうもエロいとは・・・フレヤさん流石ですね」
「ちょっと、エージ何言って・・・この鎧おっぱいが強調されすぎで・・・」
「まぁまぁバーサシに乗った乗った」
ゲルは渋々バーサシに乗る。バーサシも鎧を装着している。神々しい。まさにゲルは地所に降り立った女神だ。
「うんうん。いいよいいよいいよ。うんうん。本当に女神様だ。俺だけの女神だ」
「ちょ、何いっているのよ」
「おおお・・・まぁ白龍は魔物ではなく極めて神に近いから仕方ないのじゃな。エアドール殿は果報者じゃのう」
「えへへ。やっぱりそう思います?」
「俺だけの女神とか言っておったが、皆に見られてしまうがのう」
ゲルはバーサシから降りた。俺は穴が開くほどゲルを見る。うんうん、いい。凄くいい。帰ったらフレヤさんに土下座してお礼を言いたいくらい、いい。
「ちょっと、見過ぎよ。もう」
「うんうん。ガッコさん」
「なんじゃ?」
「鎧ってこんなに良いとは知りませんでしたよ」
「ワハハハ。そりゃお前さんが果報者だからじゃぞい」




