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編隊で飛ぼう

第七十話 編隊で飛ぼう


 「俺達も行くか。ゲルに乗るぞ」


 「うん」


 「ヴァイシュララナ、ドワーフの洞窟の場所はわかるか?」


 「ええ、大丈夫です」


 「そうか、ではヴァイシュララナとドュリタラーシュトラに白龍の竜騎士の先導を頼む。飛んでドワーフの洞窟に向かうよ」


 「クェェェェエ!」


 「どうした? ドュリタラーシュトラが興奮しているぞ?」


 「先駆けを我々に申しつけられますか。身に余る光栄、命を賭けまして務めさせていただきます。おおお、まさか私に竜騎士様と同じ空を飛び、さらには先駆けまで申し受け頂くとは・・・グリフォン冥利に尽きまする」


 「うふふ。私は龍だから、魔物の王でもあるからね。一番強い魔物という意味よ。エージは私のご主人様。エージは魔物の王の中の王よね」


 「・・・まぁ頼むよ、興奮するなよ」


 「クェェェェェェェェッェエェ!」


 「おい、興奮しすぎだ、落ち着け、一緒に空を飛ぶだけだぞ」


 「いえ、これから我ら二頭、レッドドラゴンであろうが、ワイヴァーンであろうが、先駆けの行幸を賜ったと言うだけで我らを無傷で通しますぞ。空を飛ぶ魔物の夢でございますゆえ」


 「・・・まぁゆっくり飛ぼうな」


 「クェェェ、ケェ、ケェ」


 「おいおい、大丈夫か、過呼吸だ。しっかりしろドュリタラーシュトラ」


 俺はドュリタラーシュトラの背中をさすってやる。


 「ハハハ。ドュリタラーシュトラ、そんなに嬉しいか! 我もだ!」


 「さぁ、飛ぶよ」


 ゲルが白龍の姿に戻る。堂々たる体躯の巨大な龍だ。この前より体が大きくなった気がする。


 「おおお、ゲル様、お美しいお姿です」


 「クェェェェ!」


 俺はゲルに乗ると、グリフォン達が頭を下げて平伏した。正しくは猫の箱座りをして、頭を低くしている。平伏だと思う。


 「どうした? 改まって?」


 俺がヴァイシュララナに言うと、ヴァイシュララナが口を開いた。


 「いえ、この地に竜騎士が降り立つのは神々の大戦以来ではないかと・・・ゲル様が本当にお乗せになるとは・・・」


 「クッェッェェ」


 「フフフ、この世で最も強い騎士よ。さ、いくよ。で、どっち行くの? エージ」


 「あ? 北だぞ。ええと、太陽の向きから判断してこっちだな。うーん、確実に海岸線を北上しようか」


 「わかった! 行くよ!」


 ゲルが大量の風を吐き、上空へ飛び上がった。大地がみるみる小さくなる。後ろにラグスドールの街が見える。上空から見えるのは、焼けた村とラグスドールの街。街の周辺の畑。ラグスドールから北は草原がひたすら広がっていた。左手に微かに山脈が見える。


 ゲルは右旋回すると海岸に向かって飛び始めた。


 「クェェェェェェェ!」

 「クェェェェェェェ!」


 グリフォンは鳴きながら海に向かって飛んでいく。ヴァイシュララナは真っ直ぐ飛ぶが、ドュリタラーシュトラは急上昇や急旋回を繰り返している。


 ・・・フフフ。グリフォン達、楽しそうね


 微かな風と共に、ゲルの言葉が頭に響く。魔法で風や寒さを和らげてくれているのだと思う。言葉も話す事ができないため、テレパシーめいた会話となる。流石龍だね。


 「海岸に出たら一休みしようか。そのままキャンプでも良いし」


 ・・・うん。グリフォン達に言っておくね。


 飛ぶ速度はどのくらいだろうか? ゲルはまだ速く飛べる気がするが、グリフォンが付いて来れないだろう。見た感じ、自動車での移動くらいだ。時速百キロかな? 一日で歩ける距離は精々二十キロくらいなので、二時間も飛ぶと、十日分の移動が可能になる。うん、やはり飛行ユニットは優秀だね。


 ・・・海だよ!


 微かに海が見えてきた。海辺で暮らしているのに、ドライブをしていて海が見えて来ると嬉しくなる現象に、ゲルが陥っている。エスルートから産まれて来たのかも知れないが、生命は海で育まれ、陸に上がったのだ。母なる海を見ると嬉しくなるのは生物の本能じゃないかと思ってしまう。


 二時間ほどだろうか。空を飛ぶと海が大きく見えてきた。時計の無い世界に来ているのに、時間を計るのに一時間とか数えてしまう癖はなかなか抜けない。まだこの世界に馴染んでいないのだろう。


 「ゲル、あの崖の上に着陸しよう。結構広い草原だよね」


 ・・・うん。


 青空が広がる中、俺地は崖の上に着陸した。鳥たちが一斉に飛び立った。ごめんな。


 「ゲル、ちょっと疲れたよ。今日はここでキャンプにしようよ」


 着陸すると、ゲルはいつものワンピース姿に戻った。風がふわりと吹き、ゲルのスカートを靡かせる。ちらりと見える太ももは俺のものだ。


 「ちょっと風が強いね。ね、家を建てていい? 誰も見ていないよね?」


 「家?」


 「うん。前にダンジョン内で建てたでしょ」


 ゲルは呪文を唱え始める。地面が隆起し、土壁の家がせり上がる。あっという間に家が完成する。家は日干し煉瓦っぽい感触だ。家は二棟だ。一棟は人間の住む家だ。もう一棟は厩舎だ。


 「ヴァイシュララナ、ドュリタラーシュトラ、君達の家だよ。風が強いから、中でお休み」


 グリフォンは家が隆起してきたことに驚いていた。


 「おお、良いのですか? 確かに風が当たりませぬ。ここにしばらくお住まいですかな?」


 「ううん、明日には発つよ。仮の家だから、出来は良くないけどごめんね」


 「とんでもない!」


 グリフォンは早速厩舎に入っていった。


 「ウフフ、気に入ってくれたかな? さ、中に入るよ。仮の家だから大きな部屋が一つだけだよ。ここにベッドを置こうよ。えい。ここにはテーブルよね。えい」


 ゲルは魔法の収納から次々に家具を取り出した。いつの間に収納していたんだよ・・・


 「さ、湯浴みしようよ。さっぽりしたいよね」


 「じゃあ、ここに湯船を作ってよ。お湯が零れても言いように、排水も作ってよ」


 「湯船?」


 「うん、これくらいの容器だね。お湯を張って入るんだ。俺のいた国は普通に入っていたんだよ」


 俺が説明すると、ゲルは地面を盛り上げて湯船を作ってくれた。


 「お湯が飛び散るから、壁を作って別部屋にしよう」


 ゲルはあっという間に浴室を作ってくれた。


 「はい、桶とヘチマとタオル、石鹸よ。で、ここにお湯を張ればいいのね?」


 ゲルは呪文を唱えると、ゲルは熱湯を張った。


 「おお、流石って熱湯じゃん。人が入れる熱さにしてよ」


 「あ、ああ、そっか。この中にうちらが入るのね。てっきりお湯を溜める物かと思ったよ」


 ゲルは大きめの氷を湯船に入れる。お湯は溢れ、床が水浸しになる。


 「ああ、床にお湯が!」


 「あち、あち!」


 俺は熱くて浴室から逃げた。


 「もういいよ、壁に穴を開けたから!」


 俺が戻ると、ゲルは裸になっていた。何回見ても、美しい裸体だ。はっきり言って、幸せだ。


 「エージも脱いで。体を洗ってあげるよ」


 俺はゲルに体を洗って貰った。俺もゲルの体を洗う。俺達は寒くなったので湯に浸かる。おお、久しぶりのお風呂だ。気持ちいい。


 体を洗ったら湯に浸かる。ふう。久しぶりのお風呂だ。入浴の文化が無いようで、風呂に入ったのはこちらに来て初めてだ。湯船は少し狭く、俺とゲルは体をピッタリと合わせて入った。


 温かいお湯と、ゲルがいて。いいね・・・


 「ちょっと、エージ、寝ちゃ駄目よ」


 「ん? 寝てないよ?」


 「色々あったから、疲れたんだよ。ほら、ベッドに行くよ」


 「ベッドって、ゲル、今日は積極的だね」


 「もう!」


 俺はゲルに体を拭かれ、服を着させられるとベッドに放り込まれた。


 「ゲル」


 「もう。甘えん坊なんだから」


 ゲルはするりとベッドに入ってきた。俺はゲルを強く抱いた。ゲルはいつになく激しかった。俺達は果てると二人で眠りに就いた。

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