面接をしよう
第六十三話 面接をしよう
「ええと、お名前はテクラさんでしたね」
「うん。ところでこれから何するの?」
「テクラさんを雇う前に、色々話を聞かせていただいて、問題無いようだったら雇います。プライベートな事を聴きますがいいですか」
翌日、昨晩話しを聴いた四人を雇うかどうか、面接をする事にした。食堂の一角で話を聞いている。他のメンバーは部屋に居て貰っている。
「ええと、答えないと雇ってくれないのね。わかったわ。何でも聴いて」
この時代は面接をしないだろうな。面接と言われても良くわからないみたいだ。
「ありがとう。では、出身と、年齢、家族構成を教えていただけますか」
「出身はルブ。王国の街よ。年齢は二十三。父と母は魔物に襲われて居ないわ。孤児だったの。食うに困って冒険者になったわ。だから何処にでも行けるから、心配しないでね。基本的にみんな親は居ないわよ」
魔物孤児か。大変だったんだな。
「読み書きは出来ますか? 足し算引き算は出来ますか?」
「私は魔法使いだから、読み書きは出来るわ。古語も読めるわよ。足し算、引き算は大丈夫。あ、私は魔法使いとしてはBランクなんだ。だから、王国の外では魔法は使えないの」
「両親と別れて、どのように暮らしたのですか?」
「私は火の魔法が使えたから、ルブの街で孤児院に入れたわ。そこで読み書きと計算を教えて貰ったの。魔法の稽古もしたのよ」
なるほど。王国は魔法使いは大事にするんだな。
「体、何処か悪いところはあります?」
「いや、特にないわ」
「王国出身ですか。言っておきますけど俺は全く加護が無い、無スキル者です。俺の下で働けますか? 気持悪くないですか?」
「え? え? 無スキルって、あの」
やはり動揺している。雇うのは難しいかな。
「無理にとはいいません。王国の人は無スキル者に対して良くない感情を持っているのは知っています。無理にうちに来てくれなくても良いですよ」
「・・・・」
「明後日、ここを発ちます。それまでにどうするか教えて下さい」
「うん、わかったわ・・・」
テクラは戻って行った。無理かな? 経理をして貰おうと思ったのだけどね。
「ゲル、彼女は病気を持っていなかった?」
「うん、大丈夫よ。例のペストね? でもエージの事で動揺してたよね」
「うーん、やっぱり無スキルは差別されるみたいだな」
次の人が来た。男僧侶のエルランドだ。
「エルランドさんでしたよね。座って下さい。出身と年齢、家族構成を教えて下さい
「私は王都の産まれ、孤児院の育ちです。両親はわかりません。年は三十八です。私は神に仕える者ですので、独身です」
この人は人格者っぽい。是非雇いたいが、大きな問題があるよな。
「エルランドさん、王国の主祭神はエスルート神ですよね。エスルート神は生きていますよね? この前、エスルート神の分離体、天使を捕まえてテイムしています。エルランドさんだけにして貰いたいのですが、我々は政商という立場もあって、これから侵攻してくるであろう王国をガレンドールは迎え撃つ用意をしています。遠からず、エスルート神とは敵対する可能性が高いです。それに我々は失われた大地の女神の恩恵を受けていて、彼女を信仰しています。まぁお供えものをする程度ですけどね。エルランドさんには棄教と、神の使いとしての立場を放棄してもらって、還俗して貰いますけど構いませんか?」
「・・・色々いっぺんに来ましたね。確かに王国を出たら私は神官では無くなります。気が付きませんでした。そして、太陽神様の天使とはなんでしょう?」
「うーん、エルランドさんはエスルート神をどう思っています?」
「全てを生んだ偉大なる神として信仰申し上げています」
「あとですね、俺は無スキルです。エスルートは俺を危険人物として見張っているのだと思います」
「え? 無スキルですか?」
「ええ。全く加護がありません。よってスキルはありません」
「そうですか・・・」
「天使とは、これくらいの大きさのネバネバしたアメーバの魔物でした。エスルートの正体は永遠に生き続けるアメーバの魔物です。神話を読むと、神々って人間と子を作りますよね。孫も産まれている。生物学的に、孫が産まれるということは人類と同種と言うことです。ここから導かれる結論は、古代の人々を率いていた魔法使いの指導者、これが神々の正体だと思っています。しかし、エスルートは子を産んでいないし、死んでもいない。死なない生き物は、アメーバくらいです。正確には小さな生物の集合ですので、個々は死んでしまうのですが、集合体として魔法かなにかで記憶を引き継いでいるのでしょう。エスルート神の天使とはエスルートを構成するアメーバが分離して別行動をとった個体だと思われます」
「・・・」
「俺は無スキルで、あなたには無スキル者の差別意識が無いとはいいません。しかも棄教を迫ります。明後日ここを発ちますのでそれまでに答えて下さい。一度、じっくりと神話集をお読みいただくと、私の言っていることが嘘では無い事がわかりますよ。どう解釈されている、ではなく、そのまま読み取って下さい」
「・・・わかりました」
エルランドは肩を落として出て行った。
「彼も特に病気はないわ。でも無理そうね」
「うん、苦しいよな。俺も心苦しかった」
「まぁでも最初に言っておく方がいいよ」
三番目は女戦士のロニヤだ。
「こんにちはー。話ってなんですか?」
「エージ、この子、例のペストをもっているわ。ノミも居るわね。ノミは殺してしまうわ。この宿のノミを全て殺すよ」
小声で耳打ちしてくる。俺は頷く。ゲルは小さくゴニョゴニョと呪文を唱えている。
「エージにはうつらないから安心してね。うちの体液をいっつもね・・・」
なるほど、ゲルの唾液とえっちなやつは体にいいのか。しかしこの子がペストとは。
「ちょっとゴメンね」
俺はロニヤの額を触る。熱がある。発症したか。
「ゲル! 兄貴を連れて来い! 今すぐ!」
「ん? どうしたの?」
ロニヤは不思議そうな顔をしている。戦士なので熱が出ていても平気なのだろう。
「いつも何を食べていた?」
「王国で売っているパンと干し肉だよ」
「鼠の干し肉か?」
「うん、大鼠だよ。もしかして私、何かの病気?」
「・・・」
「はっきり言ってください」
「・・・」
「ロニヤが何か!」
兄のブロルが来た。怖い顔をしている。
「君の妹は疫病にかかっている。治療は難しい」
「なんだって? いい加減な事言うな!」
俺はブロルに襟筋を持って詰め寄られる。
「お兄ちゃん! 止めて! エージさんが悪い訳じゃないのよ! 私たちが悪いのよ! 止めて頂戴!」
ロニヤが大きな声で叫ぶ。
「熱があるのか?」
ブロルがロニヤに近寄ろうとする。
「止めろ、触るな!」
俺は大声でブロルを止め、距離を取らせた。
なんとか本日分の更新が用意出来ました。
明日は予約更新です。
これからキャンプに行ってきます。




