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話を聞こう

第六十二話 話を聞こう


 今回の旅の第一目標はドワーフの都、ドルゴグゲークへ行くことだ。鉄鋼製品を作る職人を雇いたい。大まかな場所はガッコフルーグから聞いている。大陸を南北に縦断する大山地の北にあるらしい。気になるのは、ドルゴグゲークは地下にあるため、洞窟を通って行かなくてはならないのだが、ガッコフルーグは故郷を出てから結構立つため現状はわからないと言っていた。昔は沸いてきた魔物を駆逐していたが、まぁ白龍より強い魔物は居ないはずだから安心しろと言われた。


 第二目標は大山地の北、大森林、通称エルフの森にあるエンドルフィンというエルフの都に行くことだ。ロキの配下として、数人雇いたい。農産物担当だ。気がかりなのは、エルフは気が難しいから喧嘩にならないようにと言われた。ロキは胸は無いが、良い奴だ。胸が無くても良いので、ロキみたいな気の良いエルフを雇いたい。無理して雇うなと言われている。


 夜になって、俺達は食堂へ移動した。食堂はなかなか広く、賑わっていた。俺達は席に座ると、女将が出迎えてくれた。


 「こんばんは! 食事にするかい! エールを飲まないかい? 一杯銅貨一枚だよ」


 「うん、じゃぁ頼もうかな。二杯頼むよ」


 「わかったよ! さっきは娘にありがとうね。喜んでいたよ!」


 持って来てくれたのは硬いパンと、鶏肉のスープだ。味は塩だけだ。正直美味しくない。旅をして、ゲルと二人で居られるのは嬉しいのだが、いや凄く嬉しいのだが、食べ物が美味しくないのが玉に瑕だ。俺がいた日本は世界でも最高峰の食事が食べられる国である。食べ物が美味しいのは日本だけの特徴で、庶民の食事が美味しいなど、基本的にはあり得ないようだ。中世のヨーロッパは、エールでパンを煮て食べていたようだし、イギリスは今でも料理不毛の地だ。鰊のパイやウナギの煮こごりなど正気かと思ってしまう。ローストビーフは美味しいけどね。


 ゲルも苦笑しながら硬いパンを食べている。家で焼く柔いパンや、ハーブチキンが懐かしい。それでも食べ終わると、女将を呼んだ。


 「あの四人組にエールを一杯づつ渡してほしい。俺持ちでいいよ。少し話がしたいんだ」


 先ほどの分と、今回の分で、銀貨一枚を支払う。女将はエールを俺達に二杯、冒険者と思しき四人にエールを配ってくれた。


 「あそこの二人からだよ。話がしたいんだって」


 冒険者風の四人組だ。男女の戦士と、女魔法使い、男の僧侶風だ。戦士の装備は革の鎧である。二人とも普通の長剣だ。男は浅黒い肌に、黒の髪。なかなかのイケメンで、若い。二十代前半だろうか。女も黒髪だ。肌は男より白い。女は男より年下である。女魔法使いは金髪のなかなかの美人だ。男僧侶は中年で、口数も少なく黙ってエールを飲んでいる。


 「すまんな。にいちゃん若いのに気が利くね」


 男戦士がエールのジョッキを片手に礼を言ってきた。あ、時々自分が若いって忘れる時がある。アラフォーだったからね。若いと思う時は若い女性にムラムラする時だ。すぐ反応してしまう。困ったものだ。


 「うひゃー。なんちゅう美人をつれているの! 駄目よ、攫われちゃうよ!」


 女戦士が目を見開いている。あんたもまぁまぁ可愛いぞ。俺とゲルは彼らのいるテーブルの側に立っている。


 「ウフフ。ありがとう。私はゲル、夫のエージ。ね、人攫いってなにかな?」


 「俺はブロル、こっちの戦士は妹のロニアだ。魔法使いはテクラ、僧侶のエルランドだ。あんた達王国の人間じゃあないんだな? 王国はな、奴隷で成り立っているから、どうしても奴隷の入荷先が必要だろ。そういうことだよ」


 男戦士のブロルが話してくれた。


 「なるほどね・・・貴方たちは人攫い達を殲滅しに来たと、言うわけですね」


 ゲルが得意げに言い放つ。違うだろおい。


 「・・・ゲルさん、奴隷制は王国の産業の一つなんです。そういう事です。あなたはお美しいので余り首を突っこまない方がいい。王国にも近づかない方がいい」


 中年の僧侶、エルランドが苦々しく話してくれる。皆のエールが無くなって来た。俺は女将に銀貨を渡し、皆に二杯づつ頼んだ。


 「ありがとう。なんでも聴いて。久しぶりにエールを沢山飲めるわよ。私は魔法使い廃業なのよ。王国から出ちゃったからね。あーあ、でも仕方ないわよね」


 「どうしたんです?」


 「割の良い護衛の依頼があって、引き受けたんだけどね、人攫いの護衛だったのよ。Bランクの依頼なの。やっとBランクになって、護衛の仕事が受けれると思ったら、目の前でバンバン子供を攫って行くのよ。流石にね、良心が咎めて人攫いと対立してしまったのよ。依頼失敗だし、私たち王国に戻ったら奴隷落ちよ。失敗料払えないわ。折角ガレンドールでも魔法が使えるのに」


 「そうか・・・大変だな」


 「気にするな。旨いエールを三杯も飲めて幸せだぞ。しかし、ラグスドールって誰も人が住んでいないと思って居たけど、人が多いよな」


 男戦士のブロルがため息をする。


 「そうだね。王国ではガレンドール大公国は超絶田舎と思われているけど、食べ物は豊富だし、奴隷は居ないし、良いところだぞ。ところで、俺達は北に住むドワーフとエルフを訊ねるところなんだ。何か話を聞いていないか?」


 「ドワーフはともかく、エルフは止めておいたほうがいいです。彼奴等は高圧的で話しにならないのです。エルフは人間を見下していますから、とにかく話しにならない。交渉とか無駄でしょうね。エルフに何を頼むのですか? エルフの細工物を買うのでしたらまだしも、何かを頼む事は出来ませんよ」


 男僧侶のエルランドが真面目に答えてくれる。


 「え? そうなのか? うちにいるエルフは良い子だけど?」


 「前に一緒に組んだエルフは大変だったよ。パーティのリーダーは俺なのに、勝手にリーダーとして振る舞ってさ、命令してくるし。こっちの話は聞かないし。彼奴等何物だよ、クソ。まともだったのはあいつくらい?」


 男戦士のブロルが悪態をつく。


 「ロキちゃんは落ち零れた、って言っていたじゃない。だから素直なのかな。魔力は凄いのにね」

 ゲルが口を挟む。


 「ロキ? ロキがいるの? エルフって不思議よね。ロキにパーティに入ってって言ったのよ。でも一人が良いって、言ってね。ね、奴隷に落ちる前にロキに会いに行こうかな。ロキは確かに良い子だよ。あれでしょ? 二つ名が雑草刈りだが、なんか。そして、あの」


 「胸が無いんだろう? 確かにそいつはうちにいるロキだ」


 「駄目よ、エージそんな事言っちゃ」


 「ねぇ、さっきからうちにいるロキって言っているけど、どういう事?」


 女魔法使いが不思議そうに俺を見る。


 「ああ、ワイヴァーンアックス商会でロキを雇っているんだ。ロキには農作物を任せているんだけど、手下のエルフがいたらいいなって思ったんだ。駄目そうか」


 「おいおい、待てよ。ワイヴァーンアックスてドワーフのガッコフルーグさんの二つ名だろ」


 男戦士のブロルが立ち上がる。


 「俺と、ガッコさんと、魔法使いのフレヤさんで起こした商会なんだ。主にお茶と酒を造ろうとしている。これからは金物細工をやろうと思ってね。ドワーフを雇おうかとね」


 「えええ!」


 全員が立ち上がった。


 「ウソウソ! フレヤさんて爆炎の人形よね? 会いたい会いたい!」


 「ガッコフルーグさんと仲間なのか? どういう事だ?」


 女魔法使いのテクラと、男戦士のブロルに詰め寄られる。


 「おいおい、君たち落ち着きなよ。エージさんが困っているじゃないか」


 流石に僧侶は冷静だ。


 「なぁ、俺達を雇わないか? 冒険者は廃業だし、王国に戻ったら奴隷落ちだし、希望者だけになるけど」


 男戦士のブロルが俺を真剣な眼差しで見る。


 「兄さん、私もガッコフルーグさんやロキに会いたいし、良いわね」


 妹のロニヤも同意した。


 「エージ、雇ってあげなよ」


 「え? 何? うちに来るの?」


 俺は驚いて皆を見る。全員が頷いている。


 「じゃあ一人づつ面接します。希望者は全員?」


 全員が頷いた。仕方ない。全員面接しよう。

明日からキャンプに行くので、更新できないかもしれません。

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