ラグスドールに行こう
第六十一話 ラグスドールに行こう
まだ雨は振り続いている。俺とゲル、グリフォンのヴィルパークシャ、ゴーレムのカロスイと共にコットンのタープの下で雨宿りをしていた。カロスイは体が馴染んで来たのか、まともに歩けるように成ってきた。
「・・・ぶっちゃけ邪魔だな」
「ちょっと、エージったら」」
昨晩、ゲルといやらしいことをしようと思ったのだが、カロスイとヴィルパークシャがいると思うといやらしいことが出来なかった。凄く残念だった。
カロスイは食事中だ。頭を外して、首に直接捕まえて来た鳥や鼠、スライムなどを突っこんでいた。基本的に石のような、鉄のような物で出来ており、セリーリアの顔を持っているが口が動くわけではない。しかしエスルートの天使というか、分離体は食事が必要だ。
「確かにあの食い方はちょっとね・・・」
ゲルも少し嫌らしい。
「ヴィルパークシャ、グリフォン全員を呼んでくれないか?」
「クェェェ!」
ヴィルパークシャは大きく鳴くと遠くに三体の影が見えてきた。影はあっという間に大きくなり、三体のグリフォンが姿を現した。
「お呼びですが、ご主人」
「ああ、よく来たヴァイシュララナ」
話し事が出来るグリフォンはヴァイシュララナだけである。俺はヴァイシュララナの頭を撫でる。残りの二頭も頭を擦り付けてくる。
「ドゥリタラーシュトラもヴィルーダガも元気そうだな」
俺は残りの二頭の頭を撫でる。
「ご主人、まずはオーガの件ですがドレフドール村の回りの高ランクモンスターは方付けました。ゴブリンとコボルドが相当居ますが、手は出していません」
「うん、ありがとう。ここから辺境の村に掛けても頼むよ」
「畏まりました。用は以上でよろしいですか?」
「いや、このカロスイを連れて行ってくれないかな」
「ん? 何物ですか? 天使の感じがしますが、ゴーレムですよね」
「流石鋭いね。ゴーレムに太陽神エスルートの分離体を詰め込んだんだ。一応俺の従魔になっている。管理を頼むよ。慣れると飛べるはずだから」
「エ、エスルート神! 畏まりました」
「カロスイ、ヴァイシュララナと一緒に行動だ。飛ぶ練習もするんだよ」
頷くカロスイ。クソ、ゴーレムなのに可愛い。何しろモデルはセリーリアだしな。可愛いのは当たり前だ。
「ヴィルパークシャ、あなたが乗せなさい」
ヴァイシュララナが言うと、カロスイがヴィルパークシャの背に乗った。カロスイはちらりとヴァイシュララナを見た。飛びたいみたいだ。
「あ、では行きます」
「うん、魔物退治を頼むよ。でも怪我するなよ」
「ありがたきお言葉! では!」
グリフォン達は飛んで行った。
「アハハ。上手くいったね。飛んで行ったよ」
グリフォン達が居なくなると、雨が止んできた。
「わぁ、やっと止んだ! 明日には出発出来そうだね!」
俺とゲルは、この日は早めに就寝した。まぁなんだ。寝るのは夜中だったのだが・・・
翌日、キャンプを畳んで出発する事にした。道の泥濘も減っている事だろう。出発すると、道は所々水たまりがあったが、避けながら歩いて行く。
何事も無く歩いて行動し、二泊キャンプし、三日目にドレフドール村に入る事が出来た。ドレフドール村は小さな村で、辛うじて宿が一軒あった。めぼしい店は無い。本当に農村だった。
ドレフドールで野菜やフルーツを補給し、先へ急いだ。ドレフドール村から、ラグスドールの街まで三日かかった。
ラグスドールの街が見えてきた。辺境の街だ。ラグスドールから北は、辺境の村と呼ばれる村以外には人が住んでいない魔境となる。まぁ俺達は辺境の街を抜けたらゲルに龍になって飛んで貰おうと思っているので関係無いけどね。
ラグスドールの街は城壁で囲まれていた。門に守備兵が立っている。
「おい、止まれ。何処から来た」
若い騎士が声を掛けて来る。俺は懐から木簡を取り出し、騎士に見せる。コニーエディが書いてくれた通行証だ。
「騎士団長の紋! 確かに確認いたしました! お通り下さい!」
俺達は礼を言って街へ入る。
「大きいな」
「ガレンドールと変わらないんじゃない?」
ラグスドールの街は賑わっていた。街の真ん中に歩いて行くとバザーがあった。敷物の上で野菜や果物を積み上げ、販売されている。
「パン買わないとね。もう無いよ」
「え? ああ、そうか。硬いんだよなぁ」
「アハハ。仕方ないよ。干し肉も無いよ。色々仕入れないとね」
俺達はバザーで干し肉やパン、乾燥果物を仕入れていく。パンは硬い。干し肉は豚だった。良かった。鼠や魔物だったらどうしようかと思っていた。
「冒険者の人が多いね」
「魔物を狩るのかな? 魔物が多いのかな?」
地図で見る限り、ラグスドールからは広大な草原が広がっている。魔物を駆逐出来たら、人間の住む領域も広がるかも知れないな。
バザーは街の真ん中だ。バザーから北に行くと宿があった。宿も四件もあった。俺達は草原亭と書かれた宿に入った。
「いらっしゃい! お泊まりで?」
女将が出迎えてくれた。女将は二十代半ばであろうか。金髪のなかなかの美人だ。色気があるね。ゲルには負けるけどね。
「うん。三泊しようかな」
「じゃあ二人で銀貨三枚ね。二食付きよ。部屋は二階、一階は酒場になっているわ。部屋は一つでいい?」
「うん。僕の妻なんだ」
「へぇ! 凄いべっぴんさんだね! 私もね、十年前は草原亭の看板娘とか言われていたんだけどね、子供が出来てからチヤホヤされないのよ! 冗談はさておき、奥さんは綺麗だから気を付けるのよ。この街は荒っぽい奴が多いからね」
まぁゲルとまともに戦えるのは多分太陽神エスルートくらいだろうから、心配は要らないのだけどね。
「ありがとうございます。随分と冒険者が多いですよね?」
ゲルが探りを入れ始める。
「そうなのよ。この街がガレンドール大公国の国境だから、魔物が多いし人攫いも多いのよ」
ん? 気になるキーワードが。確か辺境の村があったはずだぞ。人攫いってなんだ?
「あれ? 辺境の村はガレンドールじゃないの?」
俺が不思議そうに訊ねる。
「あそこはね、ごろつきの集まりらしいの。この街の北にあるけど、行っちゃ駄目よ。野盗と人攫いの拠点らしいのよ。この街も、夜はうろついちゃ駄目よ。じゃあ部屋は一番奥ね。はい鍵」
俺達は二階に上がり、部屋に入る。俺はベッドに横になった。
「ねぇ、この宿に三泊するの? 何か用事あった?」
ゲルが不思議そうに訊ねてくる。
「少し情報を集めようよ。ドワーフの街と、エルフの街。ガッコさんとロキに聴いているけどさ。それにしても冒険者が多いよな。物騒だよ。情報源でもあるけどね」
「こんにちは! お湯をお持ちしました! 入って良いですか?」
ノックと共に女の子の子供の声が響く。いいよと答えると小さな女の子が入って来た。何歳だろう? 八歳くらいか? 金髪がフワフワで、目がくりくりしていて可愛い。チップをあげないとね。
「ゲル、さっき買った乾燥石榴あっただろ」
俺は目配せした。女の子にあげよう。
「あ、うん。ありがとうね。これ、後で食べてね。名前はなんていうのかな?」
「ありがとう! ノーラっていうの!」
ノーラは石榴を三つ貰い、ほくほく顔だ。ゲルはノーラの頭を撫でている。可愛いな。女将に似て美人になるだろう。ノーラはぺこりと頭を下げると出て行った。
「よし、エージ、体を拭いて上げるよ」
俺は暖かいお湯で体を拭いて貰った。目が合うとゲルははにかんだ。
いろいろ有り、更新が遅くなりました。




