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エリヤスエーミルの独り言

第五十一話 エリヤスエーミルの独り言


 私はエリヤスエーミル。ガレンドール公の嫡子です。ガレンドールは王国の南に位置する公国です。大公が納める国です。国なのか、いまいちはっきりしないことがあります。王国との関係です。ガレンドールは王国の約半分の国土です。人口は半分以下です。国力では王国にかなり劣ります。


 ガレンドールは漁港を有し、水揚げがありますがこの国の人は好んで魚を食べません。非常食量として乾燥魚を作ります。小麦、大麦は豊かに取れます。牧畜も盛んです。ガレンドールでは鶏、羊の肉を食べています。王国ではオークの肉を食べていますね。家庭教師であるエージさんがオークは人間であると言い、二度と食べたくありません。王国は魔物食が盛んです。


 王国とガレンドールは元々一つの国であったようです。太陽の神エスルートの加護を得た英雄王が国を立ち上げ、護りの祈りを捧げたそうです。時代が下がり、王国はガレンドールの行政を手放してしまいます。何故かというと良くわかりません。王国がガレンドールを切り捨てた事が判明すると、ガレンドールは荒れました。勝ち抜いてガレンドール統一を成し遂げたのが現在のガレンドール大公家です。今から百二十年前になりますね。


 私とマーヤの母は大公后になりますが、弟二人と妹は母が違います。今、エージさんの言葉を噛みしめています。国には寿命があり、二百年くらいだと。王が統帥権を手放すと寿命が迫ってくる。気になる出来事があります。ガレンドールが王国の結界で覆われてしまったらしいのです。家庭教師であるエージさんが言っていたのです。しかし、父上は苦虫を噛みしめた顔をしていました。魔法を使う人間であれば常識であるらしいのです。


 ガレンドール存亡の危機が訪れた事に間違い無いと、父上が言っていました。そう、ガレンドールには魔法使いがいないからです。


 私が何故、エージさんから家庭教師を受けているかと言うと、大公家お抱えの教師が弟の指南に回ってしまったためです。大公家で私に変わり弟を押す声が日に日に増しているのです。どうやら私は凡庸と思われているみたいです。エージさんの前の家庭教師は、ひたすら神話を暗記したり、神の名前を暗記させられて来ました。家庭教師がいなくなったのでコニーエディにお願いして家庭教師を捜して貰ったんです。それがエージさんでした。


 エージさんの授業は痛快です。まずは神々は魔法使いだから気にするなと言っています。最近では話は殆ど理解出来ませんでしたが、新たな兵器で王国に対抗すると言っていました。結果として大公家の力が落ちていくのですが、避けられないと言っていました。


 兵器を作るには民の教育レベルを上げる必要があり、結果として知識階級を増やし、権利を主張するようになる、と。

 エージさんは神話に出てくる予言者に似ていると思います。預言者に近いかも知れません。未来を見通す預言者ではなく、神から与えられた言葉を発する預言者ではないかと思えます。エージさんの目にははっきりと未来が見えていて、授業で包み隠さず話してくれます。ぶっちゃけ、神々の名前を暗記させられていた授業とは内容のレベルが違いました。授業が有る度、父上に報告をしていますが、先日の授業ではとうとう父上を始め有力大臣までもが話を聞きに訪れました。


 父上からはエージさんは何者なのか、と言われています。ガレンドール内に足取りが全く無く、エージさんを知る者が居ないんです。私はわからないと答えています。聞いてもいないし、話したくないようなので。同時に権力に全く興味が無いことも伝えています。成り上がりたい者が持つ危機感というか、へつらい等が全く無いからです。神の如き知恵を余すことなく伝えてくれます。


 エージさんの正体はなにか? エージさんは明らかに未来の予測が出来ています。私は神々の地から呼び寄せたという召還魂者ではないかと思っています。巻き込まれと言われる無能者の方です。


 王国では、定期的に召還魂により強力な魔法使いを呼び寄せていると聞いた事があります。同時に巻き込まれた魂も出来てしまうとか。エージさんの正体は召還魂巻き込まれ者でしょう。父上も気が付いているはずです。であるならば、王国は新たに強力な魔法使いを手に入れたことになります。王国には強力な魔法使いが、ガレンドールにはエージさんが使わされた事になります。どちらが怒ったのか、それはこれからの歴史が証明するのでしょう。


 エージさんの神の如き知識を手に入れたいと、妹のマーヤを娶らせようと本当に考えました。大公家に入っていただきたいのです。マーヤは私にべったりなのが問題なのですが、私がお願いすれば結婚してくれるでしょう。本人もまんざらでは無いと思っているようです。しかし、ある日の授業でメイドの一人が、左手に大きな宝石の指輪をしていました。薬指ですので結婚指輪でしょう。マーヤも左手を凝視していましたからね。結婚の線が無くなったと思っているのでしょう。


 順当に考えて、本妻は指輪を貰ったメイド、妾がグエルターク商会の娘さんでしょう。会話しなくても目だけでエージさんからの指示を受けていましたからね。しかし、あの大きなグエルターク商会の一人娘を妾に出すなど、跡取りはどうするのか、心配になってしまいます。エージさんの本妻と妾のメイド達、二人とも恐ろしい程の美貌です。はっきり言って羨ましい。あれほどの娘など滅多に居ないでしょう。マーヤも美人ですが、まだ幼いですし、どちらかと言うと美人の方向が違います。マーヤはちょっと男っぽい感じの美人ですね。


 グエルターク商会の一人娘を出して貰うわけには行きませんので、宝石を付けていたほうを出して貰おうと思っていたのですが、いやはや。本妻とは。誰か、あの二人を見たら手を伸ばす不届き者がいるかも知れません。折角協力して貰っているのに、不興を買うわけには行きません。皆に通達しておきましょう。


 さて、私と父はエージさんの授業の後、これからのガレンドールについて長いこと話をしています。まずはマーヤも含めて三人でエージさんの授業内容を振り返っています。国の寿命論には驚きました。確かに変化すべきであろうと、父上は言いました。次の二百年のために、今から変えようと。そうすればどのような形であれ、あと二百年はガレンドール大公家が存続するだろうと。父上は貴族院の設置を考えるそうです。そこで徹底的に政策を考えさせるそうです。父上は仕事が楽になると、思ったらしいですね。ガレンドールの人口の調査も行う考えのようです。


 もう一つはインテリジェンスの設置です。諜報をする機関みたいです。王国の内情を探ります。今、我々に出来そうなのはこの二つです。新兵器はエージさんにお願いするしかなさそうです。我々には無理ですね。資金提供を行うので研究をして貰いましょう。


 貴族院設置にともなう内政の大改革、諜報機関の設置による外交政策の強化、新兵器開発による軍の改革。貴族院は父上。諜報は私とマーヤ。軍と新兵器はコニーエディの担当にしようと、父上と話しています。父上と話しましたが、やる必要性はわかったけどやる内容がわからないということで意見が一致しました。


 私とマーヤがインテリジェンスの担当となりました。最初の目標は王国の村や街の把握と、人口の調査。収穫の調査。道路網の地図の作成でしょうか。人選はどうしたらいいのでしょうか? エージさんと相談してみましょう。貴族達から何人か、担当できる人間を引き抜きたいと思っています。


 新兵器ですが、エージさんが魔法文明を終わらせる、と明言していました。どのような物なのか、一度じっくり話を聞かなくてはなりません。


 考え事をしていたら、マーヤが来ました。グエルターク商会が新作の本を持ってきたそうです。マーヤが妹のためにエージさんに頼んでいた本ですね。見てみましたが、驚いたの一言です。ページの半分が絵になっています。見たことも無い形式です。絵が驚きです。誰も見たことが無い絵でした。絵を見ているだけで、主人公のマーヤが踊り出しそうです。私を恋い焦がれているのがかなり問題ですが・・・


 コニーエディのワイヴァーン退治の本といい、紅茶といい、ガレンドールがエージさんを中心に回り始めています。王国には強力な魔法使いが、ガレンドールには全く魔法が使えない召還魂者がやって来ました。ガレンドールにはお二人の魔法使いが居るそうです。Aランク冒険者相当だそうです。魔法が全く無くなるか、というと違うと思いますが、魔法が全てである、という時代はエージさん一人の出現で終わったように思えます。

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