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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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刻まれるモノ『降臨』

「ハハハ、なかなか見ごたえは有ったようだのぅ。だが……これでオーレア軍は完全に手詰まりになってしまったようじゃの」

「そのようですね」


 先ほどの戦闘の一幕。

 彼女達は距離を問わず、観戦を続けていたようだ。

 実際のところ、先ほどの戦いは周辺に観戦に出てきている神・魔殆どの眼に留まっている。


「オーレアのところの騎士は自分のスキルに溺れたようじゃの。森羅万象に繋がるスキル系統は極めてレアで協力だが、その反面、修練に恐ろしいまでの時間とセンスを擁する。あれだけ扱えることが僥倖であったのじゃが、相手が……いや、相性が悪かった、と言うべきかの?」

「まぁ、一発掠れば即死。その条件であれば、彼らは、かの騎士以上の難敵と相対したことがありますからね。アレ(プチベヒモス)と比べるとリーチこそ長いものの、速度が遅すぎます」

「アレと比べるのも酷というものじゃが。騎士が今までのスタイルを捨てて、片手剣や槍などを使っていればどうなったおったかの?」


 そんな比較にならない話しよりも、もしもの話として、先の結果は覆っていたのだろうか?

 そんな子供にも似た発想にため息をつきつつ、私、フェリアスはそのもしもを語る。


「そうですね、その場合は拮抗した戦いが出来たと思います。ただ、騎士の方は個性を伸ばすよりも、どこかの神の嗜好としての修練しかさせて貰えなかったのでしょうから」


 結局の所、そこに行き着いてしまう。

 確かに、あの騎士アドラは優秀で腕も立つ。

 だが、その優れた才能を全て主神が潰してしまったと言って善いだろう。


 本来、『重力制御』等のスキルがあれば、踏み込み時に自身に掛かる重力を消したり、加重をかけて拘束したり、動きを鈍くするなどのトリッキーな動きが出来るはずだ。

 だが、スキルを手に入れた時に主神からの介入があったのだろう。

 そのせいで、火力主義・一撃必殺など、主神加護の剛力を活かすための使い方しか出来なくなったと考えられる。


 そう。あそこの主神……ベルクとはそういう神なのだ。


「なるほどのぅ。じゃが……こうなってしまうと、時間の問題になるというわけじゃな?」


 その問いに頷きつつ、今後の展開を憂う。


「そうですね。こうなる事を、皆が、ネク様も予想していましたから。ただ……」

「ただ……速すぎる。そう言いたい訳じゃな?」


 私は頷くと恐らく、問題となろう、ミア達がいる避難民を見つめた。

 避難民は少し南よりに進みながらも避難先として予定している都市へと目指している。

 実は、数日前にネク様の迷宮に行った際に貧乙女から聞きだしていたのだが、ネク様の計画では、資金をもらった商隊(キャラバン)が既に到着し、避難用の食料や水、生活用品を購入している手筈になってる。

 

 だが、補給部隊が予想に反して南の都市へと進むルートを通っている。

 ミア達もそこは確認済みではあるのだが、今後起こりうる危険性を把握しきって居ない。


「ネク様が、口を出されるのが一番なんですけども」

「……出さんじゃろうなぁ。よりにもよって使途と巫女が同時に揃ってしまっておる。ここで仮の名でも知られた場合には」

「巫女が強制召喚……神降しの条件を満たしてしまいますからね。でもその場合は」

「どれ程までの(ニエ)となるか想像が出来んわい」


 オーレアの主神ベルクのように“来たがっている”神を召喚する(呼び寄せる)には(ニエ)は少なくて済む。むしろ、呼ぶのに必要なだけで後は好き勝手させればいいのだから。

 だが、ネク様のように、現世に背を向け、過度の干渉を嫌う神を、“引きこもっている”神を召喚する(表に出す)には強制召喚という形になる。これは十余年前の神獣と同様、いや、それ以上の惨事が発生することとなる。


「じゃが、いい加減、ネクも折り合いを着けないといけないじゃろ? だからこそ、此れほどまでの神魔が観戦と言う名目で、側にきているのじゃから」


 そう、この戦いを観戦している神魔の中で、古い者ほど、そして真の意味で位の高い者ほど。ソレが見たいのだ。

 再び、ネク様が立ち上がるのを。


「では……最前線に行ってみますか?」

「そうじゃの、もしもグダグダ言っているようだったら……渇を入れてやらんとな」


 そう言いながら私たちは、これからの最前線となるであろう。避難民の……ミアの元へと向かう。

 だが、私たちがたどり着く前に、少し眼を離したうちに。既に事態は動いていた。





******************************



「お兄様っ!」


 確か、彼女はオーレアの巫女の……。

 やはり彼女がアドラの妹だったか。

 彼女は槍に貫かれ、動くことが出来ないアドラへ向けて駆けていく。

 普段、走ったりはしないのだろう。数百メートルほどだが、来るまでにはもう暫く掛かりそうだ。


「カウス」

「解っている」


 俺は眼配らせし、カウスへと頼む。

 以心伝心。解っていると、カウスは【魔槍】を解除。

 すると、アドラを縛る物は無くなり、槍で固定されていた体は地面へと倒れ込んだ。


 無論、槍で体を貫いたのだ。無事で済むわけが無い。

 だが、兄妹の最後の別れになるだろう、その瞬間にアレは無粋すぎた。


 俺達は、後の事を放置し、一旦戻るべく、都市へと脚を運ぶ。

 だからだろう。彼らの事から眼を離してしまった。


 事態はその瞬間に起こったのだ。






******************************



 私は……いや、オレは騎士として敗れた。

 普段は騎士らしく、団長らしく、丁寧な言葉遣いをしていたが、やはり“オレ”が本当の自分の様だ。


 ただの冒険者として生きることが出来たらと、何度思ったことか。

 何度、国を捨てる事が出来たらと思ったことか。


 だが、国は捨てても、騎士を捨てても、身分を捨ててもも、神を捨てても、1つだけ捨てる事が出来ないモノがあった。



「お兄様っ!」


 嗚呼

 遠く遠く、大切な大切な……妹の声がする。

 たった一つのオレの宝。


 本人は知らずとも、あの呪われた血。

 いつ耳に入ることになり、真実を知ることになるのか。

 その事が不安で不安で。

   

 そして、いつ神の道具とされてしまうか。

 本来だったら、一緒に連れて、逃げて、生きたい。


 不意に、オレの体を虫ピンのように留めていた槍が消え、俺の体は地に倒れ込む。

 

 流石に血を失いすぎたか。

 無理も無い、魔術とはいえ、体を貫かれたのだ。

 彼らはオレにトドメを刺すことなく、一礼すると踵を返し、都市へと戻っていく。


 彼らには気を使わせたものだ。

 流石に回復魔術も無い状況で、この傷を治す術は無いだろう。

 だが、最後に妹と、マリと話す時間はできたようだ。

 それに、此れであの神託も外れてしまっただろう。

 

 神託には、巫女が消え、それに慟哭する血まみれのオレが映っていたそうだから。

 あの夢を最初に視たとき、マリは夜だというのに、泣きながらオレが昔あげたぬいぐるみ、ブレイズくんだったか。ソレを抱え、オレのベッドまでやってきたものだ。

 あの時、泣き止むまで抱いて寝たのだが。一緒に寝たのなんて何年ぶりだっただろうか?


 動かない体に鞭をうち、俺はマリを見る。

 あの時と同じ、ブレイズ君を抱きしめ、泣きながら此方へ走ってくる。


 ははは、変わらないな……。


 運動が苦手だから、時間が掛かっているけど、もう少し。

 あと少しでオレの手が届く。


 なんて言ってやれば善いか?


 まぁ、ひねりも無いけど


 大丈夫……

  





 俺はそう言おうと口を開き……






「何を寝ている、デク。キサマ、俺様の崇高な計画にドロを塗る気か?」


 目の前に居る最愛の妹……。

 その口から出たのは、オレが崇めるべき、オレが敬愛すべき、そして・・・


「悦べ! この俺様が力を貸してやろう! 嬉しいだろう? そうだろう! そうだろう!」


 妹の顔で醜悪に哂う。

 オレが最も嫌悪し、憎悪する神


「さあ! さあ! さあ! 今此処に!! 第一級神、“力”を司る偉大なる神っ!!」


 事態を察したのか、歩き去ろうとしていたレクス達が驚愕の顔でこちらうを見る。

 ああ、くそ、オレもこの最悪のクソったれの介入を避けたかった。

 出来ることなら、皆、逃げてくれ……。


「我が真名、豪力神:ベルオーレクの名において、我が巫女達よ! 捧げよ!! その命っ!」


 






 こうして、負けが決まったチェスの盤面をひっくり返すため、最悪の神が、人界に降臨した。  

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